O編 前回の話では、ナイスショットをしても、ミスショットをしても、体に対する軌道は、ほとんど変わらないってことだったよね。インサイドアウト軌道の人がアウトサイドインになったり、アウトサイドイン軌道の人がインサイドアウトになったりすることはないと。
坂詰 それどころか、意識的に変えようとしても、軌道ってほとんど変わらないんです。それは、プロもアマチュアも一緒なんですよ。もちろん、素振りで無理やり軌道を変えようとすれば別ですよ。でも、球を打とうとした瞬間、いつもどおりの軌道に戻っちゃう。そのくらい軌道というのは変わりにくいものなんです。
O編 それに対して、インパクトのフェース向きは、プロでも常に一定ではないって言ってたよね。
坂詰 そうですね。トラックマンを使って計測すると、ツアープロでも、インパクトのフェース向きには結構バラつきが出ますね。
O編 それって、球が曲がる原因は、軌道ではなく、インパクトのフェースの向きにあるってことだよね?
坂詰 そういうことです。よく、球が曲がると「クラブが外から下りた」とか、「インから入った」なんて言うじゃないですか。でも、軌道なんてほとんど変わらない。球が曲がるのは、フェースの向きがよくなかっただけなんですよ。
O編 昔は、左に打ち出されたらアウトサイドイン軌道、右に打ち出されたらインサイドアウト軌道だって言われてたよね。
坂詰 ええ。でも、計測器の進化によって、それは間違いだとわかったわけです。球の打ち出しは、ミドルアイアンならフェース向きの影響が75%、軌道が25%。ドライバーならフェース向きの影響が85%、軌道が15% の割合で決まります。ですから、球が右に打ち出されたらインパクトでフェースが開いた。左に打ち出されたらフェースが閉じた、と考えてほしいんですよ。
O編 ゴルファーが勘違いしてることって、ほかにもありそうだね。
坂詰 あります。たとえば、みんな、インパクトではフェースをスクエアにするのが正解だと思ってるじゃないですか? でも、インサイドアウトでドローを打つなら、インパクトでフェースは開いて当たるべきだし、アウトサイドインでフェードを打つなら、フェースは閉じて当たるべきなんですよ。
O編 あぁ、ドローの人がスクエアにインパクトしたら、真っすぐ出て左に曲がるし、フェードの人がスクエアにインパクトしたら、真っすぐ出て右に曲がる。どちらもコントロールしにくい球になるってことだね。
坂詰 そういうことです。ドローのプロであれば、軌道は+3度以内のインサイドアウトで、フェースは1~2度開いて当たるのが目安。フェードのプロであれば、軌道は-3度以内のアウトサイドインで、フェースは1~2度閉じて当たるのが目安だと思います。ただ、この数字は、あくまでそういうデータがあるというだけで、このとおりに打とうとする必要はありませんよ。
O編 どういう意味?
坂詰 この連載を読んでるみなさんは、プロがいい球を打ったら、こういう数字になるってことを知っておくだけでいいと思うんです。さっきも言ったように、フェースの向きはプロでも一定にできないし、数字どおりに打とうとしたら、感性が失われて気持ちよく打てなくなっちゃいますからね。
O編 データに縛られちゃいけないんだね。
坂詰 データは大事。でも、データがすべてではないですからね。座学として知っておくべきは、フェースの向きが弾道に大きな影響を与えるってことです。
O編 具体的には?
坂詰 たとえば、軌道が3度インサイドアウトの人の場合、フェースが1~2度開いて当たれば、右に打ち出されて左に戻るドローになる。それが、インパクトでフェースがスクエアになれば、真っすぐ出て左に曲がる球、もっとかぶれば左に出て左に曲がる球になります。逆に、フェースが3度開いて当たったら右にプッシュアウト。4度以上開いて当たったら、右に出て右に曲がるプッシュスライスになるんです。
O編 アウトサイドインの人は、その逆だね。
坂詰 そういうことです。ここで大切なのは、ミスに対して過剰反応しないことです。球が曲がると、「なんでだろう?」「どこが悪かったんだろう?」って考え込む人が多いんですが、それってフェースの向きが悪かっただけなんです。だから、「ああ、フェースがちょっとかぶったな」「開いたんだな」と思って、あとはいつもどおり気持ちよく打つことを心がける。そうすれば、ひとつのミスから流れを悪くすることもなくなるんじゃないでしょうか。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年7月9日号「ひょっこり わきゅう。第71回」より