ゴルフは道具の占めるウェートが大きな球技。クラブの構造や特性を知ることは重要だ。なぜボールが曲がったのか? なぜ高く上がるのか? その答えを知ることは上達に直結する。クラブデザイナーの喜多和生氏が、ドライバーの特性について改めてレクチャー。最新ドライバーではもはや定番とも言えるネックの調整機能(通称カチャカチャ)の有効な使い方についても語った。

【解説/喜多和生(クラブデザイナー)】
クラブデザイナー。ミズノゴルフ時代、中島常幸、鈴木規夫、岡本綾子らトッププロのクラブを手掛け、1990年にクラブ工房「ジョイメニィー」設立。

喜多 ゴルフクラブは道具ですから、その構造や機能を知ることはとても重要です。ですが、多くの人は、アイアンの番手は気にしても、そのクラブのロフトは何度か、ライ角は何度か、答えられません。自分が使っているクラブを知らないわけです。

喜多 球が曲がる、球が上がらないといった悩みは、クラブが合っていない可能性のほうが高いのです。万人に合うクラブは存在しませんから、ゴルファーにはそれぞれ合うクラブがあります。前提となるのが、クラブのスペックや性能を理解すること。クラブを知れば、自ずと上達への道も開けてくるものです。

言われてみれば確かに、ドライバーはロフト表記がされているが、ほかのクラブは番手の数字のみで、14本のクラブのロフト角、ライ角をすべて把握しているゴルファーは少ないだろう。

画像: ロフト角だけでなく、ライ角について知ることで、より自分に合ったクラブをチョイスできる

ロフト角だけでなく、ライ角について知ることで、より自分に合ったクラブをチョイスできる

喜多 まずは自分が使っているクラブのライ角とロフト角を知ることです。ドライバーで言えば、最近のモデルはライ角がアップライト(角度が大きい)に設定されています。なぜアップライトなのか?

喜多 アップライトなクラブを普通に構えると、トウが少し浮くはずです。トウが浮くということは、フェースが左を向くわけです。つま先上がりと同じ状態ですね。本来スライサーに対しては、フックフェースが有効ですが、フェースがかぶって見えると構えづらいため、ライ角とロフト角でつかまりやすくしているのです。さらにロフト角を増えることで、もっと左へ向かせることもできます。

ドライバーのライ角の目安
【59~60度:アップライト】つかまりやすい
【58度:普通】標準的なつかまり
【57度:フラット】左に行きにくい

喜多 この特性を利用して、ゴルファーの悩みでもあるスライスを改善させるわけです。真っすぐ飛ぶクラブは作れませんが、右か左、どちらかに行きやすいクラブは作れるのです。

カチャカチャ機能の上手な使い方
「ライ角で球のつかまりを調整できる」

画像: 調整機能を使ってロフトを変えることで、つかまり具合も変わってくる

調整機能を使ってロフトを変えることで、つかまり具合も変わってくる

喜多 ネック調整機能の付いたドライバーは、9.5度から10.5度に変えるなどロフト角を調整することができます。ただしその際に変わるのはロフトだけはないことに注意しましょう。斜めに差さったシャフトで調整する以上、ロフトを増やすとクラブは左を向き、ロフトを立てればクラブは右を向きます。

喜多 つまり、ボールが高く上がってスライスするからとロフトを立たせると、クラブはより右を向くので、弾道は低くなってもスライスは強まることになります。

つかまりをよくするなら、ロフトは大きくする。

左へ行かせたくないなら、ロフトは小さくする。

「もともとの10.5度」より「9.5度を1度寝かせた10.5度」のほうがつかまりがいい

喜多 これがポイントです。また、同じモデルでも、調整機能がノーマルの状態で10.5度のドライバーと、1度寝かせて10.5度にしたドライバーとでは、後者のほうがつかまりがいいことになります。

喜多氏が説明したように、クラブの特性を知ったうえでクラブを調整することで、上達スピードは加速します。

週刊GDより

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