苦しい時ほど積極策をとる
ーー「苦しいホールと苦手なホールは違うで。苦しいホールを積極的に攻めてこそ活路も開けるんや」
“苦手なホール”を簡潔にいうと、パー4でドライバーを2度使っても乗らんホールや。まあ日本にはそうないけど、風、雨などでそうなることはあります。乗らん可能性が0%なら苦手ホール。けど2打目がドライバーで乗る可能性が1割でもあれば、それは“苦しいホール”やと自分の中で規定してるんです。そして苦しいけどもそれなら何とかなる、いや何とかせなと考えているんです。
苦しいホールの例でいえば、太平洋御殿場コースの9番ホールやろな。距離は400ヤードを超し、第2打が打ち上げになっていて、バンカーもせりだし花道が狭い。こういう状況で、3番ウッド、時にはドライバーで打ったことさえある長さです。3番ウッドやとグリーンで止まりにくく、2オンは難しくなります。
しかしそれは届きさえば何とかなる、ということでもあるんです。事実、乗ったこともあるし、グリーン横から寄せてパーを拾ったこともありますんや。
ボクのような飛ばんもんは、ドライバーでグリーンを狙うより、バンカーの前に打っておいて、寄せワンを狙うという堅実策がベターのように思われますが、ボクはそう考えてません。乗る可能性があるなら狙う。苦しければ苦しいほど、積極的な攻略を考えるということです。苦しい時耐えて無理をせず、ケガしないようにというのも一つの方法ですわ。しかしそれだけでは、活路は開けません。それに、ドライバーを2度使ったとしても、ボクにはそんな無理なゴルフというわけでありません。ひとつ間違えばOBというケースとはまったく違うんです。飛ばんもんが勝つためには、苦しい時ほど積極策をとる。これはボクの哲学やいってもよいと思ってます。
安全策ばかりでは進歩の妨げ
ーー「基本的に安全策は必要ない。挑戦、失敗、克服の過程をくりかえしながら技術を高めていく」
ボクが第一線でバリバリやってる頃、ハワイからやってきたデビッド・イシイいう選手がいました。プレーがやたらと遅い、というのもめちゃくちゃ慎重なんです。石橋叩いても渡らんようなプレーぶりでした。普通なら狙っていくところを、絶対的に安全な確率を踏まえたゴルフをする。見ているギャラリーもやきもきしたのと違いますかね。
ともかく安全策ばかりで日本でも何勝もしていきましたが、ボクにいわせれば積極策でいってれば何倍も勝ってる、そう思います。だって技術は十分持っているんですから。人の勝負哲学をなんやこうやいう権限はボクにはないが、ボクやったら挑戦してだめやったら、2位でもいいやないかという場面が何回もありました。
こんなこというのも、ボクは挑戦して失敗、それを克服してスキルアップをしていくというのが、ゴルフの楽しみというか、やりがいだと思うからなんです。スポーツなんだから冒険を楽しむ気持ちが大切と思います
特にアマチュアはそう思います。だから、ボクは谷越え、池越え、OBに向かって打つような場面では「拾ってきたようなボールは使わんと、新品ボールにしなさい」とアドバイスするんです。
アマには基本的には安全策は必要ないと思っています。進歩の妨げになるとさえ思っています。先程もいいましたが、挑戦、失敗、克服、この過程を踏んでこそゴルフの本当の“愉しみ”があるのですから。
文/古川正則(ゴルフダイジェスト特別編集委員)