ニトリレディス(8月22~25日・桂GC)で13歳の須藤弥勒が女子ツアーに初出場する。元祖天才少女として11歳でツアーに初出場し、12歳で予選通過最年少記録を作った金田久美子に、初出場当時の女子ツアーを聞いた。
画像: 14歳でジュニアの大会(GDジャパンカップ)に優勝した20年前の金田久美子

14歳でジュニアの大会(GDジャパンカップ)に優勝した20年前の金田久美子

20年前の女子ツアーは「怖かった」という金田久美子

画像: 2001年に11歳で女子ツアーに初出場し、23年もの間、ツアーで活躍し続けている金田

2001年に11歳で女子ツアーに初出場し、23年もの間、ツアーで活躍し続けている金田

「怖かったです」

須藤弥勒が13歳で女子ツアーに初出場するニュースが出たあと、金田久美子に当時の思い出について聞いてみると、活躍した大会や悔しかった試合の思い出ではなく、まずこの答えが返ってきた。

金田が初出場したのは2001年7月のゴルフ5レディス。まだ小学6年生(11歳347日※)のときだった。

今の女子ツアーとは大きく異なり、プロたちの年齢は30歳台が大半。40歳台の選手もいる環境。その大会のトップ10の平均年齢は約32歳(最少年齢23歳)で、先週、川﨑春花が優勝したCAT Ladies2024の同じトップ10の平均年齢が約25歳なので、比較してもその差は大きい。

今のように20歳前後の選手たちが多くいたとしても、小学生や中学生から見たら、みんな大人なのに、母親よりも年齢が上のプロばかりと戦う世界は「怖い」と思うのも当然のことだった。

「今のツアーとは全然雰囲気も違いましたから……」と、空気の違いの差も大きかったという。

当時は「パワーハラスメント」や「モラルハラスメント」などという言葉は一般的ではなく、上下関係が厳しい時代。今では死語になりつつある”体育会系”の空気が少なからず残っていた。

今は、先輩と後輩の境がなくなった女子ゴルフ界

20年前のツアーは今のように年齢の離れた先輩と後輩との交流も少なかったことも今と昔の空気の差を感じる要因だった。

若手が多く活躍する今の女子ツアーには、今ではベテランプロのひとりとなった金田が、当時感じた「怖い雰囲気」は感じられない。

たとえば、先日35歳の誕生日を迎えた金田より9歳下の脇元華が「くみこ誕生日おめでとう」とSNS上で年齢差を感じさせない友だちのようなやり取りを行っている。

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31歳の青木瀬令奈は若手プロたちと「ななな会」を結成。24歳の菅沼菜々や20歳の櫻井心那との関係もよく知られている。

金田より3つ年上の上田桃子は、コーチが同じで「チーム辻村」の24歳吉田優利やアマチュアで22歳の六車日那乃らと先輩・後輩を超えた関係を築いている。

須藤弥勒も本大会の練習日には大ベテランで33歳上の不動裕理や34歳の木戸愛とラウンド。

画像: ニトリレディスでツアーデビューする須藤弥勒(写真/ニトリ提供)

ニトリレディスでツアーデビューする須藤弥勒(写真/ニトリ提供)

「不動選手は同じ飛距離ですが、中身の質が違って、精度や寄せ方がすごい勉強になりました」と先輩プロからゴルフを学び、「どうやったら緊張しませんか?」「どういう選手が怖いですか?」という質問には「怖いと思った時点で負けてるんだよ」とアドバイスをもらうことができた。

ゴルフを競い合う同じ舞台にあって、体育会系とか先輩後輩とか関係ない雰囲気が今の女子ツアーにはある。

また、金田にとっての怖さとはツアーの雰囲気だけだはなかった。

「試合が怖かったのは雰囲気もありましたけど、飛距離の問題も大きくありました。やっぱりその当時は今より飛ばなかったですし、パー4でパーオンできないホールもいくつかありました。そんな経験もあり、飛距離を伸ばしたいと練習したり、アプローチの技術を磨いたりと勉強もできました。弥勒ちゃんの飛距離がどれくらいかわかりませんが、ツアーの飛距離も伸びているし、たいへんだと思いますけど頑張ってほしいですね」

先輩プロの教えも財産になった

画像: 22年の「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」で涙の2勝目を飾った33歳当時の金田。大先輩の樋口に感謝を語った

22年の「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」で涙の2勝目を飾った33歳当時の金田。大先輩の樋口に感謝を語った

「飛距離の怖さ」は金田がツアーで戦う上でレベルアップのきっかけでもあった。「怖さ」はマイナスなことばかりではなく、金田の糧になり、多くはプラスに働いている。

大先輩の樋口久子が冠大会の「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」で涙の2勝目を飾った33歳当時の金田はこんなことを話している。

「アマチュアのときからプロの試合に出させてもらって、樋口さんに怒られることが結構ありました。温かいお叱りの言葉を何度もいただいて……。でも最近は怒られなくなって、ちょっと成長したのかなと思ったりもしました。そういうときに樋口さんの大会で勝てて、樋口さんの娘さんとも仲良くさせてもらっていてごはんも一緒に行ったりとか。あれだけ怒られてきた自分が樋口さんの大会で勝てて、すごく変な気持ち! うれしかったです」

ツアーが怖かったことも、先輩プロに叱ってもらったことも、金田が2009年にプロデビューし、35歳になった今でもツアーで活躍できる"財産"のひとつ。先輩プロたちから多くを学んだことに金田は感謝している。

ツアーは仲が良いだけでは成長できないのも金田が一番感じていることだ。

小学生や中学生でツアーに出場し、プロになれなかった選手やプロになれたとしても長くツアーで活躍できなかった選手のほうが多い厳しい女子プロゴルフの世界。

今週ツアーデビューする須藤弥勒は、金田が初出場した時代とは違うツアー環境でどう戦うか。今後プロを目指し、10年後、20年後、どんなプロゴルファーへと成長しているか、楽しみだ。

金田久美子と須藤弥勒では初出場の年齢規定が違う

2016年までは"年齢にかかわらず"学校長の承諾があれば出場できたため、金田は11歳347日でツアーに出場できたが、2017年の規定改正により、須藤は満13歳以上の規定を満たしたことで、ニトリレディスからツアーに出場できるようになった。

●2016年までの規定
第7条(臨時登録者)
③【臨時登録アマチュア】
アマチュア資格を有する者は、主催者推薦によるLPGAツアー競技への出場のため、臨時登録アマチュアの登録をすることができる。
主催者は、義務教育中の選手を主催者推薦する場合は、事前に当該選手が通学している学校の長から書面による承諾を受けなければならないものとする。

●2017年よりJLPGAトーナメント規約で、臨時登録アマチュアの条件を「満13歳以上、原則JGA/USGA HDCP Index10.0以下の者」へ変更

※2024年8月22日9時25分一部修正しました

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