パーオンしないホールでパーかそれ以上のスコアを獲得する率を示すリカバリー率で7位の青木瀬令奈選手。ちなみに2023年は3位とアプローチとパットには誰もが一目置く存在です。その青木選手が開催期間中はチッピング可能な練習グリーンでアプローチのレッスンを受けるというので同席させていただきました。
コーチ役は日本で唯一の「タイトリストボーケイウェッジコーチ」の永井直樹コーチ。永井コーチは、ウェッジ専門コーチとしてシーズンに数回タイトリストのツアー担当として会場入りしているので、ボーケイユーザーに限らず打ち方やウェッジの選び方など様々な相談に乗ってくれる心強い存在です。実は桑木志帆選手も初優勝した「資生堂レディス」の練習日にラフからのアプローチを教わって優勝につながったので、その知見は折り紙付きです。
その永井コーチとのセッションの中で青木選手は、20〜30ヤードの距離の砲台グリーンでピンが手前にあるときのアプローチについて質問を投げかけました。永井コーチはスピン量を確保する要素は、「スピンロフト(インパクト時のロフト角から入射角を引いた数値)、打点、ヘッドスピード、摩擦」の4つだといい、飛ばさずにスピン量を増やしたいアプローチでは、ある程度のヘッドスピード、入射角とインパクト時のロフトの差が大きいこと、そして打点が大切だといいます。
アプローチのうまい青木選手のウェッジを見た永井コーチは、打点がセンターよりも少しトウ寄りについていること、ソールのバウンスの削れ方に偏りがない点を彼女の良さとして挙げました。なぜトウ寄りが良いのかというと、スピンをかけたい場合は、センターだと反発が強すぎで球が強く出過ぎるため少しトウ寄りだとミート率(スマッシュファクター)が下がり出球がソフトになるからと言います。
打ち方については、左足を引いたオープンスタンスに構えてインサイドに上げダウンでややカットに振る青木選手に、「スタンスをスクエアにしアウトに上げて真っ直ぐに振るよう」にアドバイスすると、それまでボールの下をくぐって飛ばないミスが出ていたショットが見違えるように25ヤード先の段の上に落ちしっかりとバックスピンで止まるようになりました。
青木選手も「これなら下を抜けずにしっかり前に飛ばせてスピンも利かせられる」とアプローチの引き出しを1つ増やせたことを喜んでいました。ここから練習を重ねて実戦でも試しながら自分の技術へと昇華させていくことでしょう。
今回は、もちろん青木選手のスキルの高さもあってすぐに結果に結びついたセッションとなりましたが、様々な状況に対応しなけらばならないアプローチの技術は、感覚ももちろん大切ですが理屈を理解することの重要性を改めて感じました。スコアメークに直結するウェッジ専門の永井コーチとして、これからジュニア向けのキャンプや選手のサポートで忙しくなることでしょう。プレーヤーにとっては味方につけておきたいコーチの一人ですね。
写真/中村修