最終日は12時の気温18度、風速6メートルと発表されましたが、最大瞬間風速14.1m/sと一日中強い風が吹き肌寒いコンディションとなりました。3日目までの伸ばし合いの展開から我慢の展開に変わる中で、首位から出た岩井明愛選手は3番から3連続ボギーで失速します。サンデーバックナインでは一時4人が12アンダーで並び、1打差に3人と誰が抜け出すのか混戦状態は続きます。
最終組から4組前でスコアを4つ伸ばして来た岩井千怜選手は、16番で痛恨のボギーで11アンダーへ一歩後退、前半の3連続ボギーから戻して来た岩井明愛選手は13番のバーディで首位タイに帰り咲きます。ところが14番で最終組のイ・ミニョンがバーディを奪い13アンダーへと抜け出します。
岩井千怜は17番パー3で左奥に打ち込み連続ボギーで後退。畑岡選手は15番パー5で2.5メートルのバーディパットを決め13アンダーでイ・ミニョンと並びます。最終組の岩井明愛は15番の3打目をアゲンストの風も利用してバックスピンでピン横に寄せると、イ・ミニョンもピン下に寄せますが明愛選手は外し、イ・ミニョンはバーディで14アンダー。
16番では、イ・ミニョンがピンに近いグリーン左ラフに外しロブショットを試みるも届かずに再びラフに。そこからもう一度ロブショットにトライするとジャストタッチでチップインパー。同組の岩井明愛選手は2打目にピンに寄せたパットを決め13アンダー。1組前の畑岡13アンダー、最終組のイ・ミニョンが14アンダー、岩井明愛選手13アンダーで残り2ホールへと向かいます。
17番パー3は190ヤードの難易度の高いホール、畑岡選手は右から4ヤードに切られたピンの左6〜7メートルに乗せパー、岩井明愛選手はピン奥のカラーからバーディならず。イ・ミニョン選手はピン右のアゴの高いバンカーにつかまるもパーで切り抜け、後続に1打差で最終ホールへと向かいます。
打ち上げで403ヤードと距離のある最終18番ホールでは、イ・ミニョン選手がティーショットを打とうとすると強い風に帽子が飛ばされるアクシデント。仕切り直したショットはフェアウェイを捉えます。先を行く畑岡選手はバーディパットをわずかにショートし、13アンダーでフィニッシュ。
出だしのチップインバーディで波に乗るかと思われましたが、3番のダブルボギーからバウンスバックし5バーディ1ダブルボギーの69でプレーし、初日の22位タイのスタートから1打差の2位タイで終える畑岡選手らしい強さを見せてくれました。
イ・ミニョン選手は2オンするも10メートル以上のバーディパットを2.5メートルオーバー。明愛選手はピンの左横のカラーからチップインを狙うもパーで終えます。仕切り直したウィニングパットを決めたイ・ミニョン選手が19年の「ゴルフ5レディス」以来の通算6勝目を飾りました。
コンビを組み、数々の優勝をサポートしたベテランの宮崎晃一キャディに今日のポイントを聞くと「やっぱり16番のスーパーパーセーブじゃないですか。優勝する選手にしか起こらない奇跡のようなスーパーショットでした」と振り返りました。
イ・ミニョン選手本人は、16番の2打目108ヤードをPWで左に外した場面では「気持ちでは、優勝は終わった」と思ったといい、2度目のロブショットでチップインした瞬間は「本当に入った?」と信じられなかったと振り返ります。打ち方は「バンカーショットのように打ちました」と教えてくれました。
首位で終えた3日目の囲み会見で「飛距離が落ちて来ていて、ゴルフ辞めたほうがいいかなと思って、1カ月前から大嫌いな筋トレを始めた」と話していました。そのことを優勝会見で質問すると「大嫌いな筋トレも続けてよかった、週に3、4回を目標にこれからも続けて行きます」と現状を打開するために嫌いなことに向き合うことの大切さを感じました。
中継の優勝インタビューでは「今日は今日で終わり明日からはまた練習。リセットしたいです」と優勝の余韻に浸るのは今日だけで終わらせ、明日からまた次の優勝へ向けて挑戦しようとする姿が印象的でした。
今季30代最初の優勝者となったイ・ミニョン選手。これからも会見で見せてくれた笑顔を試合中でも見せてくれることを願います。
写真/姉崎正