まず目についたのが19年の全米オープンチャンピオン、ゲーリー・ウッドランド。練習場の打席に入るやいなや初心者用のグリップ矯正器具を装着したウェッジで球を打ち始めたのだ。
「人間の感覚はいい加減だからグリップは毎日変わってしまう。だんだんオープンになってきたりその逆だったり。常に同じ状態で握れるよう練習の最初はこれを打っているよ」とウッドランド。

初心者用のグリップ矯正器具を装着したウェッジで練習するゲーリー・ウッドランド
メジャーチャンピオンがこれだけ基本に忠実なのに我々アマチュアときたら……。毎日正しいグリップで握るという基本中の基本がいかに大切か、改めてウッドランドから学ばせてもらった。
そういえば昨年脳腫瘍と診断されちょうど1年前に手術を受けたウッドランド。苦境を乗り越えた不屈の闘志の持ち主が近々もうひと花咲かせてくれることを祈りたい。
取材を続けていると靴を脱ぎ裸足で球を打っている選手を発見! 南米ベネズエラ唯一のPGAツアープレーヤー、ジョナサン・ベガスではないか。
なぜ裸足なの? 「僕はいつも裸足だよ。試合でも裸足でプレーしている」と真面目な顔でとぼけたジョークを飛ばしたベガスはツアー通算4勝の40歳。

ジョナサン・ベガスは靴を脱いでスウィングすることで、地面を掴む感覚とバランス感をチェック
もちろん裸足で打つのは練習場だけ。「足の指を広げて地面を掴む感覚もつかめるし、スウィング中のバランスをチェックするのにも効果があるんだ」
「特に長旅(今回はラスベガスから成田へ)のあとは体がなまっているから足の裏で地面を感じるのはいい刺激になる」
18年の全英オープンでは渡英直前にビザがないことに気づき申請したのが間違ったビザ。1からやり直しで手続きに時間がかかり会場のカーヌスティに到着したのはスタート直前。午後組だったから滑り込みセーフだったという逸話を持つ男。結構面白い。
練習場で最長4時間を費やして球を打ち続けていたのはツアー6勝のマックス・ホーマだ。“シルキースウィング”と呼ばれるスムーズなオンプレーンスウィングの持ち主がおこなっていたのがスティックを右脇に挟んで打つドリル。

マックス・ホーマは右脇にアライメントスティックを挟んで練習(撮影/田中宏幸)
「プレジデンツカップ(9月)以来あまりゴルフをしていないのでスウィングがルーズになっている。ダウンスウィングで中からクラブが下りてくるのが嫌で素振りでは右肩が突っ込むような動きを大袈裟にやって動きを相殺させようとしている」
右脇にスティックを挟んで振ってクラブがインサイドから入れば右前腕が下がってスティックの左端が左前腕に当たってしまう。そうならないように振り抜く練習を延々続けていた。
「完全なオンプレーンに見えましたけれど」というと「ありがとう。でも自分としてはちょっと不満」。トッププロの探究心、向上心はやはり凄い。