試打・解説/小林大介プロ
地元である横須賀の湘南衣笠ゴルフで多くのアマチュアにレッスンを行う。クラブ選びの際のポイントは「1にやさしさ、2に打ちやすさ」。
試打/斉藤 司さん(72)
ゴルフ歴45年、年間ラウンド数40回、平均スコア90。最近飛距離が落ちてきたこともあり、グリーン周りでスコアメイクをする。普段、アプローチはピッチ&ランを多用。数年使ったウェッジの溝の減り具合が気になっており、良いモデルがあれば替えたいと思っている。
オーソドックスであることの良さ
GD FRZウェッジを試打してもらう前に、「そもそもフォーティーンのウェッジってどうしてこんなに評価が高いのか」教えてください。
小林 最大の特長はクセのなさだと思います。フォーティーンは、ご自身がトップアマでもあった竹林(隆光)さんが作られたブランド。私もMT-28など、昔のモデルから知っていますが、とにかく構えやすいんですよね。
GD 具体的には?
小林 ウェッジって、他の番手と違ってフェースを開いても使いますよね。その具合も状況によってさまざまです。で、フォーティーンのウェッジはどんな開き方をしても構えた時に打ち出すボールのイメージが付きやすいんです。
GD このFRZウェッジもそうなのでしょうか?
小林 そうですね。まずスクエアに構えた時の見た目。出っ歯でもグースでもなくストレート。普段海外ブランドのモデルを使っている人はややグースに見えるかもしれませんが、オーソドックスです。サイズ感も大きすぎず、かといって小さくもないので、シャープさがあるのですが「ちょっと難しいかも」という印象は受けません。
GD 「特徴がなく普通」ってことですか?
小林 そうとも言えます。ただプレーヤーの感覚をダイレクトに出したいウェッジというクラブにおいて「特徴がなく普通」というのはとっても重要なことです。ネックの形状にしてもフェースの造形にしても、構えた際に違和感を持たせないそのバランスが、フォーティーンの優れている点と言っていいでしょう。
ソールの種類は3種類+1
GD あらためてこのFRZウェッジですが、ロフト角が同じ58度でもソールの形状が異なる3つのモデルがラインナップされています(46度、48度、50度、52度、54度は単一形状。56度、60度は2種類のソール形状をラインナップ)。
小林 他メーカーのウェッジでも3種類のソール形状をそろえたモデルはありますよね。
GD FRZウェッジは現状、S(スタンダードソール)、H(ヒルソール)、T(ツインソール)3種類ですが、来年にはそこにもう1つW(ワイドソール)が加わり4種類になります。
小林 それはすごい。プロやトップアマの方は自分のプレースタイルに応じてクラフトマンにソールを削ってもらうことはありますが、一般のアマチュアにはなかなかハードルが高い。4種類の選択があれば自分のイメージに合う1本を選ぶことができるでしょう。
顔の印象は変わらず開いたときに差が出る
GD ではここからはアマチュアの斎藤さんと一緒に打ってもらいましょう。最初は「S」から。こちらはバウンス角が9度です。
小林 第一印象は「何でもできそうな顔」ですね。実際にフェースを開いてみてもしっくりきます。今どんなモデルを使っていても、このウェッジに変えて違和感を持つ人はおそらくいないんじゃないかな。それくらい見た目のバランスがいいです。
斉藤 開いてもリーディングエッジが浮く感じがないですね。これなら開いた時でも怖くない。
GD 打ってみた印象はどうでしょうか。
小林 試打クラブなのでほぼ新品ということを差し置いても、かなりスピンが入ってくれますね。打ち込まずニュートラルに振ってもこれだけスピンを効かせられれば、アプローチが楽しくなるでしょう。
斉藤 確かに。これ買ったら、練習場でもウェッジの出番が増えちゃうかも。
GD 次は「H」です。こちらはもっともバウンス角が大きく11度あります。
小林 「H」はバウンスを明確にイメージできます。ちょっと手前からダフり気味に入っても前に飛んでくれますね。ソールをすべらせて打つ人とかインパクトが安定しなくてちょっと不安という人には「H」を推したいですね。あとはフェースを開いたときダルマ落としみたいにヘッドがボールの下をすっぽ抜けちゃう人にもいいでしょう。
斉藤 ハンドファーストでロフトを立てるイメージを持たなくても、ボールが前に行く感じがします。これなら距離のロスもなさそうだ。
GD バウンス角が大きいということは、フェースを開いた際にリーディングエッジが浮くような感じになりそうですが、その点はどうでしょう。
小林 芝が薄い状況だったら変わるかもしれませんが、たいていのライでは問題ないはずです。このあたりの塩梅がさすがフォーティーンという感じなんですよね。
GD 3つ目は「T」です。これが8度と最もローバウンスなモデルです。
小林 ツインソールの名前通り、ソール中央を頂点にして前後に面が作られていますね。特にヒール側がしっかり削られている。そのため開いた際のすわりの良さはこれが一番。ピタッと接地する感じがあります。基本、フェースを開いて使うという人はこれを試してみてほしいですね。
斉藤 プロの言うようにフェースを開いたときにグラグラした感じが全くない。なんかロブショットとか打ちやすそうです。
GD プロが好みそうな感じなのでしょうか。
小林 フェースの開き具合に加えて、スピン量はヘッドの入れ方で調整するといった毎回球筋を自分のイメージ通りコントロールしたい人が好みそうですね。フェースを結構開いて柔らかく振ってみたんですが、それでも結構スピンが入ります。これは競技レベルでやっている人でも合うんじゃないでしょうか。
GD 最後は未発売の「W」です。
小林 これはソール全体が丸~くラウンドしていますね。ソール幅も広いので、砂を多く飛ばす必要のあるバンカーショットで重宝しそうです。
GD ソール部分が丸いとどんな効果があるのでしょうか?
小林 突っかからないのでフォローでヘッドが抜けやすいと思います。何の心配もなくポーンと打って行ける感じがします。インパクトでヘッドが突っかかるイメージが出てしまう人や、フェースを開かずにオートマチックに打っていきたい人に向いているでしょう。
斉藤 どれがいいのか迷ってしまいます。購入前は実際に打ってみるといいかもしれませんね。
小林 フェースを開いたときや実際に球を打つと大きな違いがあります。練習場のマットの上でも実感できたので、購入の前には室内でもいいのでぜひ試打をしてみてほしいと思います。
もっとも違いが出たのはバンカーショット
GD それぞれどんな人に合うのかを解説してもらいました。ライの状況によってどうかわるのでしょうか。まずはターゲットまで50ヤードと少し距離のある状況です。
小林 「S」を基準に打っていきます。「S」は振った通りの距離が出るという感じですね。バウンスの効き方はそこまで主張してくる感じはありません。風やライによってちょっと高く、または抑え気味に打ちたいというときにフェースの開き具合を変えても、違和感なく構えられるのがいいですね。
斉藤 私は「T」が打ちやすかったです。どちらかと言うといつもショートするミスが多いのですが、ボールがしっかり前に飛んで行ってくれる感じがしました。しっかりめに振ってもバウンスが邪魔になるようなことはありませんでした。
小林 一番バウンスが効くと感じたのは「W」ですね。他と比べて少し出球が低めでした。「H」はそれと対局という感じで、ボールの下にしっかりリーディングエッジを入れていける。ソール幅が広くないので抜けは抜群です。
GD 次にバンカーです。あえて差分をわかりやすくするため、身長よりも高い所に来てもらいました。
斉藤 このアゴはなかなかお目にかからない高さですね…。普段のラウンドなら真横に出すような状況ですが、私は「W」が最も高さと距離が出ました。この状況からカップに寄せられるなんて自分でもびっくりです。
小林 「W」のソール幅を広くした恩恵は相当なものですね。ボーンという感じでボールが飛んでいきます。「H」はドンッという感じなので、バンカーショットでしっかりバウンスを意識したい人。「T」はスパンというイメージなので、スピンコントロールしていきたい人向けでしょう。
斉藤 イメージは異なるかもしれませんが、どれもかなりスピンが効きますね。
小林 そうですね。バックスピン量が多いという印象は練習場からコースに出ても変わりませんね。ちなみに、バンカーショットで少し距離を出したいときに打ちやすかったのは「S」でした。
GD 最後にこれからの時期、多くなる薄芝で打ち比べてみてもらいました。
小林 ボールと地面の間にすき間がないので、打ちやすかったのは「T」でした。やはりローバウンスが有利ですね。ただ「S」でもしっかり球の高さを出すことができます。
斉藤 私も「S」は良かったです。細かいコントロールは難しいですが「W」でも簡単にボールを拾ってくれました。
小林 このほかにも様々な状況で打ってみましたが、「H」はわりと右足寄りにおいて低い球を打ったり、フェースの開き具合で高さを変えたい人にも向いています。その他の3本は、バウンスがしっかり効き、スピン量もかなり多い。アプローチに苦手意識がある人は、FRZウエッジを入れるだけでグリーン周りがかなり楽になるんじゃないでしょうか。
斉藤 私はバンカーからあの高さが出るだけでも“買い”だなと思いました!
小林 「W」が出るのも楽しみですね。
撮影/増田保雄(人物)、野村知也(物)
TEXT/SHOTANOW
THAKS/葉山国際カンツリー倶楽部