「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はウェッジの重心についての考察をお届けする。
画像: センター寄り、ヒール寄り、ウェッジの重心位置を考えた(写真はフォーティーンFRZ)

センター寄り、ヒール寄り、ウェッジの重心位置を考えた(写真はフォーティーンFRZ)

一番寄るウェッジの重心位置は?

みんゴル取材班(以下、み):フォーティーン「FRZ」はフェース面上の重心をわざとヒールに寄せているそうです。一方でクリーブランド「RTX6」やミズノ「S23」のように実打点に近いセンター寄りに重心を設定しているモデルもあります。どちらも一長一短あると思うのですがアマチュアが寄せやすいのはどちらでしょう。

宮城:インパクトの効率から考えるのであれば、クラブの重心は実打点に近づけた方がいいでしょう。センター重心のウェッジは同じロフトでもヒール重心のウェッジと比べるとすごく飛びます。

み:芯を外したときの距離のバラつきが少ないこともセンター重心のウリのようです。つまり、ピンに寄りやすいのはセンター重心のウェッジと考えていいですか。

宮城:フルショットかそれに近い距離を打つならそうかもしれませんが、コントロールショットで短い距離になるほど難しさが出てくるでしょうね。

み:何が難しいのですか?

宮城:アプローチで一番怖いのは飛びすぎです。30ヤードのつもりで35ヤード飛んでしまったら次はゆるんでしまいます。それが人間の反応です。そもそもゴルフは芯で打つ競技ではありません。

み:え? 自分も含めて芯に当てたくても当たらずに苦労しているアマチュアが大多数だと思いますが。

宮城:ただ遠くへ飛ばすだけなら芯に当てるべきでしょう。でもゴルフはドライバーでもアイアンでもターゲットをねらうスポーツです。そのためには芯を外すことで初速、打ち出し角、スピンをコントロールしながら打つ必要があります。とくにアプローチで止めるときはいかに芯を外して初速を落とすかが勝負です。10月に行われた「ZOZOチャンピオンシップ」でリッキー・ファウラーが使っていたロブウェッジを見ましたが、ものすごくトウ寄りに打痕が集まっていましたよ。

み:それにはどういう意味がありますか?

宮城:ファウラーのロブウェッジの重心がどこにあるのかは知りませんが、真ん中で打つと飛んでしまうのでトウで打つようになったのだと思います。たとえヒール重心であってもボールの勢いを殺して止めるにはトウで打つのがいちばんです。

み:重心の高さについてはどうでしょう。低重心で球の上がりやすさをウリにしているウェッジもありますが。

宮城:ウェッジで打つときフェースのどこに当てようとしますか?

み:スコアラインの2、3本目くらいですね。一番スピンが増えると聞いているので。

宮城:その通りです。それは、ウェッジの重心よりも下に当たることでバックスピン方向のギア効果が働くからです。でもそこに重心があったらスピンもかからないし、初速も出るしで飛び過ぎてしまいます。

み:そうすると一番寄るウェッジは……。

宮城:ヒール重心かつ高重心設計のウェッジです。でも、最近はそういう設計のウェッジがだんだん減ってきているので、アプローチの技術を駆使したい人は中古でも何でもいまのうちに探して買っておいたほうがいいかもしれません。

This article is a sponsored article by
''.