
14歳の中島早千香さんの始球式でスタート。「緊張しました!」
裏方の原動力「継続は力、当たり前の言葉が大事です」(松田治子代表理事)
大会を主催する日本障害者ゴルフ協会(DGA)はNPO法人であり、本大会は基本的にボランティア活動で成り立っている。
「そもそもゴルフは運動学的にいうと、上肢の可動域を広げられる、体幹の捻転運動。アンジュレーションの多いコースを歩くことも含め、リハビリや健康のためにいいんです」と語るのは元国立身体障害者リハビリテーションセンター運動療法士長の水田賢二氏。この観点なくして、障害者ゴルフは語れないだろう。しかし協会・大会の発展とともに、競技志向の選手が増えてきたのも事実だ。
「『ゴルフをパラリンピックに』を掲げ、競技としてルールにのっとって行うこと、本人や家族ができるだけ楽しくゴルフをやること。両立は難しいけれどそういう環境作りをDGAが中心となってやっていきたいですよね」と語るのはご自身が障害を持つ子の親でもある真辺和美氏。
競技委員も務める石塚義将氏は競技者の観点からこう語る。「ここ数年の海外の障害者ゴルフの流れで、日本でも国際基準を取り入れる必要がある。そういう変化には対応したい。道のりは長いけど、障害者のプロがゴルフを職業として選べる時代がくるといいです」。
組織や大会が成長する過程には問題や課題が発生する。それぞれの想いが交じり合い、真摯な選択をするからこそ道は続く。
松田治子氏は「今大会は募集後2日間で定員に達した。来年からは予選会も行い(関東、中部、関西)、きちんとしたオープン競技にしたいと考えています。もちろん“参加することに意義がある”という方を振り落とすことではない。いずれにせよ私たちが止めると障害者ゴルフが途絶えてしまう。とにかく地道に続けることです」。
ボランティアとしての想い

右から:林聰(進行管理・税理士)/小竹瑠奈(競技委員・プロゴルファー)/真辺和美(理事)/水田賢二(副代表理事)/松田治子(代表理事)/浜田雅道(事務局次長)/石塚義将(事務局長・プロゴルファー)/川崎静(看護師)/小口一城(広報)/内山由利子(事務局・通訳)
林聰さん 前代表の税理士。15年程前にボランティアに誘われて。自然体でやっていますが、健常者だけではわからない世界が見えてきます。
小竹瑠奈さん 今回初参加。感銘を受けました。教える立場としても勉強になる。今後R&Aのレベル2を取得しレフリーとしても参加したいです。
真辺和美さん 第1回開催コースの支配人で、選手の一生懸命さや明るさに感動し今がある。選手や管理の方の声は自分の耳で聞くようにしている。
水田賢二さん 立ち上げから関わっています。国際大会を目指す選手が増えたが地域での掘り起しは万全ではない。派閥や利権を生まない組織に!
松田治子さん 亡くなった前代表の意志を受け、月例ラウンドも大会も絶対に続ける、クラス分けも障害別にしっかり行うという想いでやってきた。
浜田雅道さん 20年前、前職の営業でうかがったら人手が足りないと。ボランティアは人生のキーワードになると思い参加し、今まで続けています。
石塚義将さん 18歳から12年間の関わり。競技委員長として私的な感情を入れず、選手とは一定の距離で冷静に様々なことを見るようにしています。
川崎静さん コロナ時、検温などで人手が必要で参加するように。障害以外の内部疾患にも注意喚起します。皆さん選手なので自主性は大事に。
小口一城さん 4年前、機関誌のデザインから。楽しくやりがいがあり、普段は知り合えない人と出会える。自分なりの意見は伝えるようにします
内山由利子さん 10年前の世界大会で通訳をお願いされて。その時だけかと思ったら、なぜか毎回引きずられて。沼に入ってしまいました(笑)
「ゴルフは障害者も含めてのコミュニティとなるスポーツです」
麻生健(大会会長・麻生塾理事長)
麻生グループは、22年、23年に150周年記念事業として男子ツアー「ASO飯塚チャレンジド」を開催した。
「この時のプロアマにDGAメンバーに参加してもらい非常に喜んでもらえました。我々のグループは飯塚市とともに車椅子テニス大会を40年行うなど障害者スポーツへのサポートに取り組んでいます。私も大好きなゴルフでも“場”を提供したいという中で、今回ご指名いただき大会の開催となりました。障害者が公の場に出ること、仲間を見つけること、負けん気を養うことなどのきっかけになれば。ゴルフは年齢や性別はもちろん健常者と障害者が一緒にできるコミュニティとなるスポーツだと思います。支え合うことは社会にとって必要ですし、何より障害者ゴルファーの明るい姿勢を見ると感謝の心が生まれるはずです」

麻生塾理事長の麻生さん

中山侑哉(クラス分け・理学療法士)
「私情が入らぬよう、あくまで公平に障害を見てクラス分けします。ゴルフは障害があっても遜色なくできる。前向きな人しかいないのもいいですね」

右・河合祐治(選手担当)「競技者として限界を感じ自分で協会を探した。身を捧げれば社会貢献やパラリンピックという発展的なシナリオがある。精神的にも満たされます」
左・緋田幸朗(渉外担当)
PHOTO/Yasuo Masuda
*文中敬称略*文中一部敬称略。肩書は大会開催パンフレットによる
※週刊ゴルフダイジェスト12月10日号「それぞれの障害者オープン」より一部抜粋
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みんなのゴルフダイジェストでは、大会運営に携わるボランティアの方々の障害者ゴルフに対する取り組みや想いを紹介した。続く後半では、コース管理課や障害者ゴルファーたちの声をお届けする。続きは週刊ゴルフダイジェスト12月10日号、Myゴルフダイジェストにて掲載中。