
小斉平優和
26歳。小学校から全国優勝を経験し高校卒業後プロ入り。シード権を失った時期もあるが、2025年はシード選手としてレギュラーツアーに参戦予定。

金子駆大
22歳。小学時代から全国で名をとどろかせる存在で高校卒業後プロ入り。2024年に初シード選手としてレギュラーツアーに参戦、トップ10入り6回。2025年のシード権も獲得した。
聞き手/ゴルフダイジェスト・ヤマダ
ジュニア担当として全国の選手と親御さんに取材を続ける。自身も8歳から競技ゴルフをしてきた元ジュニアゴルファーで1児の父。
令和の今でも存在する親から子への鉄拳制裁
――ジュニア界のトップ選手たちを取材し、多くの子どもと親御さんに会ってきた。高校生までの選手の数は300人以上にのぼる。
取材時、質問にニコニコ答える子がいる一方、親の顔色をうかがいながらオドオド話す子、目に活力がなく話す子など「本当にゴルフやりたいの?」と思ってしまうような選手も少なくなかった。
そして取材を重ねていくなかで、ある「闇」が浮かび上がってきた。それは、いまだに親から子への鉄拳制裁がはびこっているという現実だった。
現在ツアーで戦う小斉平優和と金子駆大。2人とはジュニア時代に取材を通じて出会った。年齢こそ4歳違いだがジュニア時代からしのぎを削り合い、同世代がうらやむような成績を残してきた仲良しコンビでシード選手として活躍している。
だが、その裏には壮絶なジュニア時代の経験があった。「ゴルフに出合ったことは、彼らにとって本当は不幸なことだったのではないか?」とも思われるような日々。
ゴルフと過ごした青春時代についてあえて実名で語ってくれた。
小学1年生ですでに……
ヤマダ: 小斉平プロは高1、金子プロは中3のときに取材させていただきました。
小斉平: 確かそうでした。9年も経ったんですね。
金子: あの頃が懐かしいですね。
ヤマダ: いまやふたりともプロになり、シード選手としても活躍するほど立派になられスゴイですね。
小斉平: ボクはプロになってから、なかなか成績が出なくてかなり苦労しましたけど。
ヤマダ: いまもおふたりのような全国レベルで活躍するジュニアたちを取材しているのですが、当時から気になっていたことがあって、意を決して今回おふたりに連絡いたしました。話しにくい内容かもしれませんが、単刀直入に言うと親からの鉄拳制裁についてです。
金子: ぜんぜん大丈夫ですよ。何でも聞いてください。
小斉平: はい、大丈夫っすよ。
――非常にセンシティブな内容にもかかわらず快く語ってくれることになった2人のプロ。普段は優しい目をしているが、その話題になると鋭い眼光となり、当時を思い出すように語り始めてくれた。
ヤマダ: あらためてですが、ゴルフを始めたのはいつですか。
金子: 自分は小学校入る前ですね。やってて楽しかったなっていうのは最初だけでしたね。実はもう小1で父親から手を上げられてましたから。
小斉平: 物心ついたときにはゴルフしてました。ボクも結構やられたからゴルフが楽しかった記憶すらないかもしれない。
ヤマダ: そんな小さなころから……。どういう理由で手を上げられたんですか。
小斉平: 多分、最初は教えられたことが上手くできてないとか、ちゃんと打ててないとかだと思います。
金子: ミスしたりスコアが悪かったりとかですよね。実は小学校のとき蹴られて腕を2回も……。
小斉平: マジで!? ゴルフできなくなるやん。
金子: それでも包帯しながらパター練習やらされてたけどね(笑)。
ヤマダ: そんなことをされて最初は痛いというよりビックリしたんじゃないですか。
小斉平: 普通じゃないと思われるかもしれないですけど、ボクは本当に覚えていないんです。
金子: たぶん、毎日のようにやられていたからだと思います。殴られていた記憶はあるけど、「何で」っていうのはまったく覚えていません。だから「これがいけなかったんだ」という理由もまったく覚えてない。だって、食事中に箸が飛んできたり、手が出てくることもありましたからね。そこまでくるとゴルフの話もなく。当時も今もよくわかりません……。
小斉平: やられてるときは「早く終わってくれ」という感じだから、たとえば、原因となったミスショットについて「こうすればよかったかな」みたいに考えることはないです。ミスが起きたとき振り返ることが上達には不可欠だと思っています。でもその機会すら奪われてたので本当に無意味。というか(手を上げることは)逆効果でしかないと思います。これは、自分が大人になって技術が上がってきて気づきました。
金子: どんなことが原因だろうが鉄拳制裁をする親はありえないです。
――今回、意を決して衝撃的な告白をしてくれた2人とも小学生のときから結果を残し、プロになっても活躍しているのは紛れもない事実だ。しかし、鉄拳制裁があったから上手くなったわけではないと2人は言う。まして、殴られたからプロになれたわけではないというのが共通の見解だ。
結果的に彼らはプロになれたが、プロになれて本当に良かったのか?
もしプロになれなかったらどうなっていたのか?
そして一番大切なことである、ゴルフを始めたときに感じていた「ゴルフが好きな気持ち」はいまでも残っているのか?
次回は2人が経験してきたことにくわえ、彼らが見てきた周囲のジュニアゴルファーについて真っすぐな目で真摯に語ってくれた。
※この記事は、週刊ゴルフダイジェストで連載中の「ありがとうの闇」を再構成したものです。
※2025年1月20日17時42分、タイトルを一部加筆修正しました。