
速いテンポで振るジョン・ラームと徐々にスウィングスピードを上げていくタイプのザンダー・シャウフェレ
O編 この連載も、今回を含めあと3回で終了です。そこで、わきゅうから読者のみなさんに最後のアドバイスをもらいたいんだよね。
坂詰 では、今回はラウンドするときの話をしましょうか。知っておきたいのは、ゴルフは目から入る情報に左右される競技だということです。たとえば、ティーインググラウンドに立ったとき、右のOBが見えたり、左の池が目に入ったりした瞬間に、いつもどおりのスウィングができなくなる。これは、レベルによって差はありますが、プロでもアマでも同じなんです。
O編 誰でも苦手な景色やプレッシャーのかかる状況はあるよね。
坂詰 それが目に入ると、怖いとかミスしたくないという感情が生まれます。すると、それに体が反応して、いつもどおりのスウィングができなくなるわけです。じゃあ、それにどう対処したらいいかっていうと、ありきたりかもしれないけれど、普段通りのリズムやテンポを心掛けて打つしかないんですよ。
O編 プレッシャーや不安を感じたら、いいリズム、テンポを意識してスウィングするってことかな?
坂詰 もっと言えば、実戦で球を打つときには、常にいいリズムやテンポに集中し、余計なことは考えないってことです。
O編 余計なことって?
坂詰 ラウンド中でも、スウィングのことや、体の動きを考えながら打っている人ってものすごく多いと思うんです。でも、考えることが多ければ多いほどミスが出やすくなります。まして、コースに出たら、目から入る情報も邪魔をしてくるわけですからね。
O編 スウィングや体の動きを直しているときなんかは、どうしてもそれを意識しちゃうよね。

リズムとテンポの考え方のひとつ。「ジョン・ラームのように速いテンポで振れば、リズムやテンポは変わりにくいし、切り返しで自然に時間差、つまり、上半身と下半身の捻転差やタメが作りやすいという考え方です」(坂詰プロ)
坂詰 それはプロでも同じです。でも、そういうものは、ラウンド中であれば、待ち時間とか、インターバルの間にチェックしておくんです。で、実際に球を打つときには、普段どおりのいいリズム、テンポでスウィングすることだけを考えることが大切だと思います。
O編 自分にとってのいいリズム、テンポっていうのがわからない人も多いと思うんだけど?
坂詰 大事なのは始動ですよね。そこが決まってくると、リズムやテンポは安定しますから。
O編 具体的には?
坂詰 大きく分けて2つの考え方があると思うんです。1つは、自分が気持ちよくスウィングできる範囲で速く上げて、速く振る。ニック・プライスやジョン・ラームのように速いテンポで振れば、リズムやテンポは変わりにくいし、切り返しで自然に時間差、つまり、上半身と下半身の捻転差やタメが作りやすいという考え方です。
O編 もう1つは?

ゆっくり始動して、徐々に加速させて打つ感じのザンダー・シャウフェレ
坂詰 ザンダー・シャウフェレやコリン・モリカワのように、ゆっくり始動して、徐々に加速させて打つ感じです。クラブの重さを感じながらスウィングすることで、力みが抑えられ、リズムも安定するという考え方ですね。
O編 どちらがおすすめなの?
坂詰 読者のみなさんにおすすめするなら、ゆっくりでしょうね。ゆっくり上げるためには、クラブを強く握らず、体の回旋で上げていく必要があります。そういう始動ができれば、それだけで、リズムやテンポが安定しやすいですから。
O編 速く上げるには、筋力も必要だろうしね。
坂詰 そうですね。あと、速く上げると、どうしても手先でクラブを上げやすくなるんですよ。
O編 手で上げるとリズムやテンポって安定しないもんね。そう考えると、打ち急いだり、力んだりする人は、ゆっくりのリズムを心掛けたほうがいいかもしれないね。
坂詰 そうですね。もちろん、強く握らずに速く上げられる人、速く上げて速く振ったほうがリズム、テンポが安定する人は、わざわざゆっくり上げる必要はないと思います。あとは、そのリズムやテンポ、始動を意識して球を打つ、という練習を普段からやっておくといいですよね。そういう訓練を続けていけば、本番のミスは確実に減っていくと思いますよ。
PHOTO/Blue SkyPhotos
THANKS/GMG八王子ゴルフ場
※週刊ゴルフダイジェスト2025年1月28日号「ひょっこりわきゅう。」より