トリーパインズGCに吹く風に翻弄され最終日はイーブンパーなら大きく順位が上がるほどの我慢比べ。そんななか冷静沈着なプレーで7番から18番までパーをセーブし続け通算8アンダーで1打差の勝利をものにしたイングリッシュが久々にトロフィーを掲げた。

PGAツアー「ファーマーズインシュランスオープン」を制したハリス・イングリッシュ(写真/Getty Images)
「勝つのは難しいです。落ち着いているように見えたかもしれませんが内心は感情が暴れまくっていました。でも難しいからこそ優勝したときの喜びが大きい」とまだ幼いひとり娘のエミリアちゃんを抱きながら受けた感無量の勝利者インタビューでは「優勝した人が息子や娘を抱きながらインタビューされるシーンが羨ましかった」と念願が叶い柔和な笑顔を見せた。
メジャー以外でもっとも厳しい条件と言われた今回本領を発揮したが、実は彼ここトリーパインズGCでは過去にも惜しいところで優勝を逃している。
15年には72ホール目でバーディを決め4人によるプレーオフに進出したが結果はジェイソン・デイに敗れ2位タイに終わった。
21年にここで全米オープンが開催されたときにも最終ラウンドで68をマークしクラブハウスリーダーになったがジョン・ラームのサンデーバック9の猛攻で戴冠を逃している。
15年の最終ラウンドはドライバーが不調でそれが敗因だと思い込んでいた。ところが今週も最終日にはティショットが乱れフェアウェイをキープしたのは4ホールだけ。
「あの大会(15年)で負けたとき、コースを降りて“もっといいドライブを打っていれば勝てたのに”と思ったものです。でも今日(最終日)はフェアウェイを外してもそれほど悪いショットだとは思いませんでした。
14年間プロ生活をしてきて学んだのは“完璧なゴルフをする必要はない“ということです」
イングリッシュによると長年の経験からコースによって「どこでミスするかはわかっている」。ミスした場所からどういうショットを打ったのか、どういうアプローチをしたのか、という記憶を胸に刻み込んで「自分が打った良いショットやパットを思い出しながらプレーしているのです」。
さらにこんなことも。
「見た目がきれいである必要はありません。きれいなゴルフではなく、とにかく仕事をこなすことが大事です」
22年初旬に受けた股関節の手術のあと優勝争いに加われなかったがケガを乗り越えようやく掴んだツアー5勝目。カッコつけなくても最高のショットじゃなくてもいい、といえるところがカッコいい。