丁寧なヒアリングによって潜在的なニーズもあぶり出す
「友人にコースで打たせてもらったZX5 MkⅡアイアン(前作)のいい感触が記憶に残っていて、最新のZXi5狙いで受けに来ました」というのは、今回フィッティングを体験した内田南さん。アイアンの買い替えを機に、本格的にスコア70台を目指すという熱いゴルファーだ。

内田南さん 54歳
ゴルフ歴30年(ここ15年本格化)。ドライバーの飛距離は220~230Y、HC13。70台ゴルファーを目指す
その想いの実現に向けてサポートしてくれるのが、石坂翔子さん。確かなフィッティング技術に加え、LPGAのティーチングの資格も持つダンロップの看板フィッター(クラブドクター)だ。

ダンロップのクラブドクターでありながら、LPGAティーチングプロA級の資格を持つ石坂さん。主に土曜日、日曜日に「ダンロップクラブハウス新宿店」でフィッティングを担当する
まずはヒアリングから。スコアや持ち球といった現状やミスの傾向、またどんなをゴルフを目指していきたいかなど、じっくり対話しながら互いに理解を深めていく。
アイアンのフィッティングに来たはずの内田さんだったが、ヒアリングの中で「ドライバーも“もうひと伸び”欲しい」ニーズが高いことが判明。
「では、せっかくなのでドライバーから始めましょう」という石坂さんの勧めにより、ZXiシリーズドライバーのフィティングがスタート。そしてアイアンへと移行していく……。

アイアンはお目当ての「ZXi5」、ドライバーは「予想外!」(内田さん)のZXi LSがフィットした
先に結論から言うと、ドライバーは「ZXi LS」、アイアンは「ZXi5」がベストマッチとなった。内田さんのニコニコの表情をみればその満足度が伝わってくる。ではそれぞれどんなフィッティングだったのか、レポートしよう。
【ドライバー編】
打ってみなくちゃわからない! まさか松山英樹が選んだ「ZXi LS」にベンタスがベストとはッ
テスターのスウィングの特徴を知るために、ダンロップでは「IFCフィッティング」というシステムを採用している。クセのない計測用の専用シャフトを使い、グリップエンドにはセンサーを装着。主に手元やコッキングの動きから、推奨するシャフトの特徴が導き出される。

ダンロップの「IFCフィッティング」。IFCとは「インターナショナル・フレックス・コード」のことで、シャフト全体を4カ所に分割し、各部の相対的な硬さを0~9の数値で表したもの。ゼクシオをはじめ、ダンロップのカーボンシャフトには4桁のコードが記されていて、そのシャフトの特徴を表している
石坂さん曰く、「内田さんは、トップでフェースが開き気味で、インパクトにかけてフェースのローテーションを大きく使うタイプ」とのこと。IFC的には、シャフトの手元が軟めで、順に硬め、軟らかめ、先寄りが硬めという「N字~フラットタイプ」が合うという診断に。

トップで左手首が甲側に折れてフェースがやや開く

IFCフィッティングによる診断結果。フィットするであろうシャフトの銘柄も提案してくれる
ヘッドスピード(40~41m/s)も加味し、「まずはZXi(スタンダード)の10.5度のヘッドに、診断結果のシャフトの特性に近いディアマナ ZXi50(純正)を挿して打ってみましょう」と石坂さん。フレックスはSRだ。
「今回の純正シャフトはしっかりめなので、少し軟らかいかなと思われるかもしれませんがSRフレックスで行きましょう」(石坂さん)
【ZXi 10.5度 × ディアマナ ZXi50・SR】(カッコ内はマイクラブ)
・ヘッド速度:40.4m/s(40.9m/s)
・ボール初速:59.8m/s(58.9m/s)
・ミート率:1.48(1.44)
・打ち出し角:16.8度(13.6度)
・スピン量:3236rpm(3158rpm)
・トータル飛距離:228Y(225Y)
※データは複数球打ったうちのベストボール(以下同)

スタンダードモデルの「ZXi」とディアマナZXi50のSRシャフトの組み合わせ。マイクラブに比べて、ミート率が大きく向上。初速性能の高さがうかがえる
初速性能は高く、内田さんもヘッドもシャフトも違和感はまったくないと言うが、スピン量が4000回転/分に迫るショットもあり、石坂さんは「選び方で、まだまだ効率を上げられます」と言う。

多様なヘッド、ロフト、シャフトの中から候補を絞り込んでいく。フィッターの腕の見せ所だ
ZXiシリーズには、スタンダードの「ZXi」のほかに、寛容性に優れる「ZXi MAX」、低スピン系の「ZXi LS」、小ぶりで操作性の高い「ZXi TR」と計4モデルある。
「一気にスピン量を抑えたいので、ここはヘッドもシャフトも替えてみましょう」ということで、ロースピンモデルの「ZXi LS」の10.5度、さらに操作性のいい小ぶりな「ZXi TR」の10.5度もテスト。シャフトはいずれもよりしっかり感のあるベンタス ZXi6(純正)のSRだ。
【ZXi LS 10.5度 × ベンタス ZXi6・SR】
・ヘッド速度:41.1m/s
・ボール初速:60.9m/s
・ミート率:1.48
・打ち出し角:15.2度
・スピン量:2571rpm
・飛距離:243Y
【ZXi TR 10.5度 × ベンタス ZXi6・SR】
・ヘッド速度:40.9m/s
・ボール初速:61.0m/s
・ミート率:1.50
・打ち出し角:15.9度
・スピン量:2828rpm
・飛距離:240Y
ここでスピン量が一気に低減。特にZXi LSは、2500~2800回転ほどの安定した弾道になり、飛距離も大きくアップ。一方、ZXi TRは、それまでの2モデルを上回る初速性能を見せた。
自分に合うのは、スタンダード、もしくはMAXをイメージしていた内田さんにとって、LS、TRのほうがマッチするという結果には少々驚いたよう。「LSもTRも振り抜ける感覚がいい」とどちらも好感触だが、「内田さんのポイントとなる“スピン量”の面では、LSのほうがより抑えられるので、そちらをぜひお勧めしたいです」と石坂さん。

ZXi LSドライバー。フェース側とヘッド後方にウェイトを配置、重心が前後に移動することで、スピン量の調整が可能
「結果もいいですし、ここまで推されたらもう買いです!」(内田さん)。本来の目的だったアイアンより先に、ドライバーの購入が決まってしまった。
【アイアン編】
お目当ての「ZXi5」に何のシャフトを挿すか、そこが悩みどころ

内田さんの大本命、人気の「ZXi5」アイアンは、軟鉄鍛造ボディの複合モデル。7番のロフトは31度
「打つ前からすみません。アイアンはZXi5とほぼ決めてきました」という内田さん。人気のモデルだけに、フィッティングの現場でも指名買いの人が少なくないという。
「ZXi5狙い、もちろんOKです。では早速打ってみましょう」(石坂さん)。まずは自身がマイクラブで使っているNS950GH neoに近い、NS950GH neo DSTを装着した7番を試打。
【ZXi5(#7) × NS950GH neo・S】(カッコ内はマイクラブ)
・ヘッド速度:33.9m/s(33.2m/s)
・ボール初速:45.8m/s(44.4m/s)
・打ち出し角:24.9度(22.9度)
・スピン量:5380rpm(4403rpm)
・キャリー飛距離:136Y(133Y)
・トータル飛距離:139Y(135Y)
「思ったより見た目がシャープで、すごく構えやすい。打感も軟らかくて。以前友人から借りて打ったものよりソフトに感じます」(内田さん)。マイクラブに比べて、キャリーも3ヤードほど伸びている。ただ、時折右に曲がる球が出るところが気になる点だ。
「少し先が走る感じのシャフトなので、タイミングによって球筋に影響が出るようですね。ヘッドの見た目や打感は気に入ってもらえたようなので、違うシャフトを試してみましょう」と石坂さん。
内田さんのスウィングを見て、切り返しでタイミングを取りやすいシャフトのほうがいいという見立てで、石坂さんが選んだシャフトは「ダイナミックゴールド95(S200)」。
【ZXi5(#7) × DG95・S200】
・ヘッド速度:33.7m/s
・ボール初速:45.7m/s
・打ち出し角:25.1度
・スピン量:4858rpm
・キャリー飛距離:139Y
・トータル飛距離:142Y
ダイナミックゴールドは、基本的に手元調子で切り返しでしなり感を得られるシャフト。この組み合わせでは、ボール初速が上がり、アイアンで大事な弾道の高さ(打ち出し角)もアップ。芯に当たる確率も高く、マイクラブに比べてキャリーが6ヤードほど伸びた。
「確かに切り返しでムチっとした感じがあって、振りやすいです。シャフトだけでこんなに変わるのが驚きです」と内田さん。
どうやらZXi5とDG95で決まりのようだが、「もう気持ちは固まっていますけど、試しにZXi7も打たせてもらえますか?」と内田さんのリクエスト。

今回さらに軟らかい鉄を用いて作られた軟鉄一体鍛造モデルの「ZXi7」。7番のロフトは32度
【ZXi7 #7 × DG95・S200】
・ヘッド速度:33.9m/s
・ボール初速:45.6m/s
・打ち出し角:24.2度
・スピン量:5986rpm
・キャリー飛距離:135Y
・トータル飛距離:137Y
ZXi5が反発系のフェースに軟鉄鍛造ボディの複合モデルなのに対し、ZXi7は一枚物の軟鉄鍛造モデル。気になる打感の違いはどうなのだろう。
「シャフトを合わせてもらったので同じように振りやすいですし、正直モデル名を言われずに渡されたら、私レベルでは打感の違いはほとんど分かりません(笑)。逆に言うと、それだけZXi5の打感がいいんだと思います」(内田)
データを比べると、飛距離の面でZXi5が優れている。アイアンでも少しは飛ばしたいということもあり、予定通りZXi5アイアンにDG95のシャフトという組み合わせで決定した。

「使用する機会の多いアイアン。シャフト選びは特に慎重に」(石坂さん)
「アイアンは使う機会が多いクラブですから、特にフィーリングがしっくりくるか、ここを強く意識してフィッティングを受けてほしいです。今回、内田さんはすぐに決まりましたが、シャフトは選びは慎重にしてください」と石坂さん。

内田さんのNEWアイアンとなった「ZXi5」。特徴的な「TOUR V.T.SOLE」は、芝との接触を最小限に抑える効果がある
【購入後の経過観察】
「ZXi5」アイアン、完璧! 「ZXi LS」ドライバーはロフトを立ててさらにフィット
フィッティングを経て、待望のクラブが手元に届いた内田さん。NEWクラブたちの調子はどうだろうか。

「アイアンは、打つたびに見た目と打感の素晴らしさを感じています。フィーリングが合っていることの大切さ、実感です。ドライバーに関しては、当初少し軽く感じて、LSでも球が高いように思いました。ただロフトスリーブで調整してフィットしてきた感じです。なにより、しっかりフィッティングしているので、クラブが自分に合っているという信頼がある。これが大事ですね」
「フィッティングは、自分の実力ではまだ早い」、あるいは「その日の調子でスウィングが変わるから、意味あるのかな」と思う人もいるかもしれない。しかし、石坂さんのように丁寧に親身になってサポートしてくれるフィッターは多く、また今回のダンロップのように、スウィングの特徴をデータ化するシステムを持っていれば、仮に上手く当たらない日であっても、自分にマッチするクラブ、スペックを導き出すことは可能だ。
まだフィッティングの門を叩いたことのない人も、一度体験することでゴルフ人生が大きく変わるきっかけにもなるかもしれない。

今回フィッティングを行った「ダンロップクラブハウス新宿店」。直営店のほか、全国のゴルフショップにある「DUNLOP FITTING STORE」(224店舗)でもIFCフィッティングが受けられる
※ちなみに内田さん、ZXiシリーズに惚れ込み、その後ZXiのフェアウェイウッド、ハイブリッド2本をゲット、そしてウェッジも最新のクリーブランド RTZを3本追加購入。パター以外の13本がすべてダンロップになり、70台ゴルファーに向けて燃えに燃えているようです。
PHOTO/Hiroaki Arihara