2023~2024年、PGAツアーでのタイトリスト ゴルフボールの使用率は何%であったかをご存じだろうか。実に70%(ダレル・サーベイ社調べ)である。圧倒的を超えて、独占的とも言えるこの信頼感はどこから生まれるのかー。その理由を生まれ故郷のフェアヘブンへと探しに出かけた。

ボールを疑うことから始まった「プロV1」への道

かつてジョン万次郎が初めて北米大陸に上陸し定住を始めたという捕鯨で栄えた街、ニューベッドフォード。そこから内陸に少し入ったダートマスに「カントリークラブ・オブ・ニューベッドフォード」がある。「プロV1」の革新を探る旅は、ここから始まるー。

筆者が「カントリークラブ・オブ・ニューベッドフォード」を訪れるのは三度目。しかし、プレーをしたことはない。いつも18番グリーンサイドに行き、パットが入った入らないで一喜一憂しているゴルファーを眺めながら、90年前の“始まりの時”にタイムスリップするのである。

1930年代の初め、ゴルフに情熱を傾ける地元の青年フィル・ヤングが、「カントリークラブ・オブ・ニューベッドフォード」のまさにこの18番グリーンで会心のパッティングを行った。当然、ヤングはカップインを確信していたが、ボールは不自然な転がりをしてカップから外れた。

「いやいや、今のはおかしい。これってこのボールがおかしいんじゃないかー。」彼がパットが外れたのは、自分ではなく、ゴルフボールのせいだと思ったことから、物語は始まるのである。

画像: 【タイトリスト プロV1】誕生から25年!ボール王者の知られざる開発秘話<Vol.1>

フィル・ヤング
アクシネットカンパニー創設者。元々精密ゴム製品を扱う会社を経営しており、その知見を生かせばもっと精密なゴルフボールが製造できると一念発起。大学時代の友人でゴムの専門家であるフレッド・ボマーを口説き落として1932年に起業。

ヤングはたまたま一緒にラウンドしていた放射線科の医師に、疑惑のゴルフボールのX線透過を依頼する。当時、高級とされていた有名ブランドのゴルフボールの中身はいかなるものだっただろうか。

その有り様は、ヤングが初めて世に問うたオリジナルゴルフボール「タイトリスト」の広告に掲載されている。中心にあるはずのコアはゆがみ、同一のパッケージに入っていたボールさえもコアの大きさや形が違っていた。「ボールがこんな状態では、ゴルファーがいくら熱心に上達に取り組んでも意味がない」。ヤングはその強い憤りから1932年に現在のアクシネットカンパニーの前身となる会社を立ち上げ、1935年に第1号ゴルフボール「タイトリスト」を完成させる。

画像: 第1号ボール「タイトリスト」発売時の広告。下段には従来のボールのX線写真、上段にタイトリストボールのX線写真を載せている。もちろん、最初からすべてを均一に作れていたわけではない。生産したてのボールをX線で透過し、偏芯していないものを選別し出荷していたのだ

第1号ボール「タイトリスト」発売時の広告。下段には従来のボールのX線写真、上段にタイトリストボールのX線写真を載せている。もちろん、最初からすべてを均一に作れていたわけではない。生産したてのボールをX線で透過し、偏芯していないものを選別し出荷していたのだ

彼は「FOR YOUR PROTECTION!(あなた自身を守るために、精密に作られたゴルフボールを選びましょう!)」と訴え、性能の違いのわかるプロやトップアマに積極的なプロモーションを仕掛けていった。

画像: 「タイトリスト」は、1935年に発売されたアクシネットカンパニー第1号ボールのモデル名だった。ヤングはこのゴルフボールをプロや上級者に積極的にプロモーション。そのフィードバックを得ることで精密さとともにボールのトータルパフォーマンスをアップさせていった

「タイトリスト」は、1935年に発売されたアクシネットカンパニー第1号ボールのモデル名だった。ヤングはこのゴルフボールをプロや上級者に積極的にプロモーション。そのフィードバックを得ることで精密さとともにボールのトータルパフォーマンスをアップさせていった

それからちょうど90年が経った2025年。ヤングがゴルフボールに疑問を抱いた18番グリーンは、当時とほぼ変わらぬ佇まいで目の前にある。「プロV1」の時代になった今も、多くのゴルファーが短いパットを外しては眉間に皺を寄せている。

ゴルフはそんなに簡単なものではない。しかし、今、ここでパットが外れた原因をボールのせいにしている人はいないだろう。いや、90年前だってヤング以外のゴルファーは、外したのは自分のせいだと思っていたはずだ。このボールがおかしいのではないか?そう思いながらじっとボールを見つめているヤングの姿をグリーンサイドに座って想像するのが私は好きである。

プレーヤーニーズは今も変わらない。ゴルフボールの「最高性能」とは?

ゴルフ場を離れ、タイトリストゴルフボール開発の聖地でもあるフェアヘブンに移動。現在のプレーヤーニーズについて詳しい、プロダクトマネジメントディレクターのフレデリック・ワッデル氏に話を聞いた。

「ゴルファーニーズは15年前、25年前、50年前と大きく違っているのか? と良く聞かれますが、答えはノーだと思います。ゴルファーはティーショットで飛距離を求めている一方で、アイアンではボールをコントロールしたい。そして、グリーンに近づくにつれて、できるだけカップの側に止められるように、スピンやさらなるコントロール性、ソフトな打感を求めています。ゴルフボールがすべてのショットに関わる唯一の用具であり、すべてを満たす必要があることはいつの時代も変わらないのです」

「ここで重要なのは“最適化する”ということ。ゴルフクラブが変化し、ゴルファーのスウィング特性が変わる中で、ベストなプレーをサポートするのはプロV1だけというわけではありません。プロV1、プロV1x、 プロV1xレフトダッシュ、AVXも含めた選択肢の中から、ゴルファー自身が理想的なバランスをもったボールを選ぶことが大事なのです」(ワッデル氏)

画像: ゴルフボールプロダクト マネジメントディレクターのフレデリック・ワッデル氏。「私はスピンが多くて、打ち出しが高すぎる傾向があります。プロV1にすると弾道がやや低く最適になりイメージしたウィンドウを通ってくれるのです」

ゴルフボールプロダクト マネジメントディレクターのフレデリック・ワッデル氏。「私はスピンが多くて、打ち出しが高すぎる傾向があります。プロV1にすると弾道がやや低く最適になりイメージしたウィンドウを通ってくれるのです」

プロV1に絶大な信頼を寄せるトッププレーヤーの多くは「自分のイメージしたウィンドウを通過してくれる」という表現をよく使うが、これこそが理想的なゴルフボールを選択できているかの大事なチェックポイントになる。

「ウィンドウは、フィードバックメカニズムと言い換えてもいい。プレーヤーにとっては思い通りに打てたか? ということを最初に示してくれるチェックポイントなのです。打ったボールが思い描いた通りに飛んでいるのかをいち早く確認したいという気持ちは、今も昔も変わりません。そして多くのプレーヤーはボールがウィンドウから外れることを好まない。とくに思ったよりも高く、あるいは低く打ち出されてしまうボールは信頼されません」(ワッデル氏)

タイトリストゴルフボールの創設者、フィル・ヤングは“不均一なゴルフボールではいくら努力しても報われない”と嘆いたが、それは今のプレーヤーでも同様。イメージ通りの弾道とは“こう打てばこう飛ぶ”を具現化してくれるということ。逆に言えば、こうミスすれば、弾道がこう変わるにことについても、一貫して反映されることが、ゴルフボールに求められる最高性能ということだ。このあたりはミスを補ってくれる性能進化が求められているゴルフクラブとは大きく異なる点であり、プロV1がなぜ70%もの独占的使用率を獲得できるかの答えにもなるだろう。

ツアープロが証言「ウィンドウってめちゃくちゃ大事です!」

画像: ウィル・ザラトリス(プロV1使用)

ウィル・ザラトリス(プロV1使用)

「ローフェードが好きなのでターゲットの少し左にウィンドウを思い描いて、そこを通すイメージで打っています。もちろん、ウィンドウを通せばいい球筋になることはわかっています。クラブフェースからボールが離れてターゲットで止まるまでの全体の弾道をイメージすることがまず大事で、ウィンドウはそのどこかに設定されるものだと思います。プロV1はその弾道イメージを一貫して描いてくれるから使っているのです」(ウィル・ザラトリス)

画像: ニック・テーラー(プロV1x使用)

ニック・テーラー(プロV1x使用)

「“ウィンドウ(弾道上の仮想ターゲット)”と同様に大切なのが“スピンウィンドウ(飛び姿)”です。ボールの一貫したスピン性能(スピン量や回転軸の傾き)は良いショットの時だけでなく、ミスした時の曲がりを予測するためにも必要な要素。私のイメージする“スピンウィンドウ”は非常に狭く、風に対して打つ場合は低く、ピンに寄せる必要がある特定のショットではより高く設定しています」(ニック・テーラー)

画像: ゲーリー・ウッドランド(プロV1使用)

ゲーリー・ウッドランド(プロV1使用)

「ボールがどんな軌跡を描いて飛んでいくか、私にとっては軌道がもっとも重要です。だから弾道をイメージするうえでウィンドウの役割は大きい。インパクトまでは頭を残し、フォローでは頭を回して目でボールを追いかけます。そこで最初に見る光景の中にウィンドウを設定。出球の軌道が正しければナイスショットが約束されます」(ゲーリー・ウッドランド)

画像: トム・キム(プロV1x使用)

トム・キム(プロV1x使用)

「プロV1xを使い続けるのはイメージ通りのウィンドウにボールが通過してくれるからです。プロV1xなら毎ショット、私はウィンドウをイメージするだけでいいのです。他のボールではこうはいかないでしょう。そして弾道の一貫性がとても高い。それがツアーNo.1である理由だと思います」(トム・キム)

画像: マシュー・フィッツパトリック(プロV1x使用)

マシュー・フィッツパトリック(プロV1x使用)

「すべてのショットにおいて、ボールがイメージしたウィンドウ内に収まっていくことがとても重要です。プロV1xはそれを実現するパフォーマンスを備えているゴルフボールです。タイトリストのゴルフボールはその誤差範囲が他のボールよりも遥かに小さいと感じています。それこそが使用率No.1の理由だと思います」(マシュー・フィッツパトリック)

TEXT/Yoshiaki Takanashi(Position ZERO)
PHOTO/Hiroyuki Tanaka、Getty Images
SPECIAL THANKS/Acushnet Company

※月刊ゴルフダイジェスト2025年3月号より

※第2弾は2月19日(水)公開予定

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