1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材し、現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員として活動する吉川丈雄がラウンド中に話題になる「ゴルフの知識」を綴るコラム。第2回目はブラインド・ホールの起源について。

現在は信号機が主流?

画像: 現在は信号機が主流?

現在は信号機が主流?

スコットランドなどのリンクス、もしくは内陸部にあるパークランドのコースでプレーをしていると、次のホールに向かうグリーン脇に鐘が設置されていることに気づく。日本では馴染みがないだけに最初は「何だろう」となる。

大抵の場合「グリーンが終わったら鐘を鳴らすこと」と書かれていることから「あぁ、なるほどね」と理解することになる。

1860年第1回全英オープンが開催されたスコットランドのプレストウィックGCは、海岸線に沿ったリンクスで当然ながら砂地で大小の起伏があり多くのホールが大海原のようにうねり、口を開けたバンカーは深い。名高い3番ホール(533ヤード/パー5)のカージナルバンカーは巨大で、もし入れてしまったら脱出するだけでも大変だ。

画像: プレストウィックGC。写真は10番H(パー4)。このホールのニックネームは「ARRAN」

プレストウィックGC。写真は10番H(パー4)。このホールのニックネームは「ARRAN」

プレストウィックGCの名物ホールに通称“ヒマラヤ”と呼ばれる5番ホール(231ヤード/パー3)がある。名が示す通り、ヒマラヤのように高くそびえるホールで、丘の頂上にグリーンはあるが全く確認することができない。つまり、次の組がティーイングエリアに来ても、グリーンにゴルファーがいるのか、いないのかは分からない。そこで、ホールアウトして、次のティーイングエリアに移動するときグリーン脇にある鐘を鳴らしてグリーンが空いたことを後続の組に知らせることになる。

17番ホール(394ヤード/パー4)は2打目地点から丘越えになり、このホールは“アルプス”と名付けられている。このホールにも鐘が設置されていた。

世界的に著名なスコットランドのリゾート、グレンイーグルスホテルには、全英オープンに5回優勝(1901、05、06、08、10年)したジェームス・ブレイド設計のキング、クイーンそしてジャック・ニクラスが設計したコースと9ホールのパー3コースがある。

多くの試合の舞台となったキングコースにも鐘が設置されたホールがあった。

辺りを見渡しプレーヤーがいないことを確認して鳴らしてみたが、どちらかといえば荒涼としたリンクスのような景観の中で鐘の音が響き渡るのは風情があり郷愁を覚えてしまう。

後続組に「空きました」と鐘を鳴らすのはなにもグリーンだけではない。カナダのウィスラーに行く途中にあったコースに飛び込みプレーをしたが、打ち上げのホールの途中、フェアウェイ右側に鐘が設置されていた。このホールは打ち上げのため後続組からは前の組が見えず、プレーヤーは2打目を打ち終わると鐘を鳴らして後続組に知らせるものだった。

鐘を鳴らして後続組に知らせるというのは極めて現実的で効果的な方法だと思うが、少なくとも自分は日本国内のコースでは鐘を見た記憶がない。でも、きっとどこかのコースにあるような気がする。

文・写真/吉川丈雄(特別編集委員)
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースやゴルフの歴史のスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動中

第1回目「ウィッカーバスケット」

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