
17番3打目のアプローチ。明愛は「あのシチュエーションからみなさん打って見てください」と冗談めかして話した。それだけ難しかったと推測
勝負を分けた71ホール目
会心のプレーをしても届かなかった。この日11個もスコアを伸ばしてもまだ上がいた。これがアメリカツアーなのか……。明愛は「やり切りました」とは言いつつも「細かいミスはもちろんありましけど、今考えるともったいないミスもありましたね。17番とか……」と振り返った。
勝負の分かれ目はやはり終盤に訪れた。エンジェル・インと1打差で迎えた17番。17番は385Yのパー4。ここはクリークがあり、中には刻む選手もいるが明愛は迷わずドライバーを握り、フェアウェイにしっかり置いた。勝負の2打目。今日のピン位置は「手前7ヤード・右3ヤード」という、一番下の段の右端の“激ピン”だった。セオリーは「左サイドを使い、傾斜に当てて戻ってくればいい」という具合か。1打ビハインドの勝負どころ、明愛は攻めた。

2打目は9Iで狙うも「ドローしませんでした」という打球はグリーン右に外れた
「ピンまで137Yだったので、9Iで135Yくらいのところにキャリーさせようと思って打ちました。ちょっと計算よりも飛んじゃったし、右に出てドローがかかりきらなかったですね」
ボールは無常にもグリーン右に着弾し、誰が見ても難しいとわかるアプローチが残ってしまった。エッジからピンまでは下り傾斜、さらにはピンまでの距離はほぼない状況。選択肢としては「ウェッジで傾斜に当ててグリーンをキャッチしコロコロと転がっていく」か「いっそのこと上げる」か「パターで転がし上げる」か。しかし、どれも寄りそうにない、まさに絶体絶命という状況で明愛の選択は「パター」だった。
「いやぁ、あそこから寄るイメージはまったく出なかったですね。もう、どうやってやったらいいかわからなかったです……」
本人は口数少なかったが、おそらく、昨日もパターを使ってアプローチをしていたという“経験”が最後の選択を後押ししたように感じる。イメージがまったく出ないなかでも、昨日のイメージがあったことは間違いない。結果、グリーンエッジまでは上ったものの、長いパーパットが残り、この日最初で最後のボギーとしてしまった。

パーパットが入らずボギー。この日最初で最後のボギーだった
今大会、明愛はしきりに「マネジメントが上手くいっています。絶対に外してはいけないところには外さないでプレーできている」と話していた。この17番(トータルで71ホール目)に限って言えば、あの位置はいわば「絶対に外してはいけない」ところだったように思う。
「そうですね。そうなんですよね……狙っちゃいましたね。でも、あそこで狙わなきゃバーディは来ないと思いましたし、あそこは仕方ないです!」と明愛は話した。
終始ハキハキと受け答えをしていたが、その節々で充実感とともに悔しさが滲んでいた。それでも最後、彼女はやっぱり「楽しかった」と口にして会場を後にした。
撮影/姉崎正