1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材し、現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員として活動する吉川丈雄がラウンド中に話題になる「ゴルフの知識」を綴るコラム。第3回目はホール設計の基本のひとつ「ケープ」について。

ウォーターハザードが“岬”のようにホールに張り出す

ターゲットが構えた方向になるのはそれほど違和感はないが、斜めに打つのは違和感があるというゴルファーは多いだろう。

例えばパー3のホールで、正面にグリーンがあり、ピンが確認できる。距離と風を計算してクラブの番手を選びショットする。この場合には違和感がないことになるが、ティーイングエリアからグリーンの間に池、もしくはクリークが流れていて斜めに打たなければならない場合、構えにくく打ちにくいのではないだろうか。

千葉県の中山カントリークラブには、池が斜めに走っているホールがある。5番(197ヤード・パー3)だ。構えるとなにか違和感があり、ミスをしそうな感覚に襲われる。特に左グリーンの場合、引っかけてしまうと間違いなく池に入れてしまうことになる。神奈川県の程ヶ谷カントリー倶楽部の17番(188ヤード/パー3)も、構えるとグリーンは池越えで斜めに打つことになり、距離感が掴みにくく違和感もあって何となくムズムズしてきてしまう。

三重県の名張カントリークラブの13番(405ヤード/パー4)の池越えホールはスケール感があり、飛ばし屋は距離を稼げるためかなり斜め(左方向)に打つことになるが、左には池が続いていてフック系のショットをするとボールは池の中に吸い込まれていく。ここで挙げた例は、いずれも左に打ってしまうと池に入ることになり、ホール設計もその点を意識しているのだと思う。

画像: 三重県にある名張CCの13番H。ただの池越えでなく、コースを斜めに横切らせているので“ケープ”となる(撮影/吉川丈雄)

三重県にある名張CCの13番H。ただの池越えでなく、コースを斜めに横切らせているので“ケープ”となる(撮影/吉川丈雄)

最も、飛距離に自信がないゴルファーの場合、真っすぐ打てば大きなミスはないが、それではかなりの距離が残ってしまう。心理的に多少でも距離を稼ぎたいと思うと危険を承知でやや左を狙うことになる。ここにコース設計者の理念とゴルファーの技量、思惑が交差することになる。

このようにウォーターハザードを斜めに横切らせるホールを“ケープ”という。

では最初にケープホールをデザインしたのは誰だろうか、と調べると「アメリカコース設計の父」とされているチャールズ・ブレア・マクドナルドだった。

マクドナルドは、16歳でスコットランドのセントアンドリュース大学に留学。トム・モリスにゴルフを習い、たちまち上達しトップクラスのアマチュア選手となった。帰国後の1894年秋、自身のシカゴGCにセントアンドリュースGC、ニューポートCC、ザ・カントリーC、シネコックヒルズGCの5コースをまとめて全米ゴルフ協会(USGA)を設立し、競技などのルールの統一を図った。

画像: ミッドオーシャンクラブの5番ホール。このホールが“ケープ”の始まりといわれている

ミッドオーシャンクラブの5番ホール。このホールが“ケープ”の始まりといわれている

金融機関で働きながら、多くのゴルフ場を設計したが、なかでもバミューダにあるミッドオーシャンクラブでは、ウォーターハザードを斜めに横切らせるホールを造り、このホールが“ケープ”の最初とされている。

文・写真/吉川丈雄(特別編集委員)
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースやゴルフの歴史のスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動中

第1回「ウィッカーバスケット」

第2回「ブラインドホール」

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