昨年ツアーで準優勝2回、トップ10に4回入ってポイントを積み重ねWMフェニックスオープンで予選突破すればツアーカードを獲得するところまで行った。
しかしその大会では第2ラウンドの最終ホールでバーディなら予選をクリアし、20ポイントに達していたのだが、1打足りず「まだ自分のときじゃない。これからそういうタイミングがくるはず」とクールに語っていた。
そして3週間後のコグニザントクラシックで楽々予選突破。最終的には18位の成績で晴れてPGAツアーのメンバーになった。
「これでひと区切りついた。19ポイントのとき何度も質問されたのでようやく(20ポイントに)到達して肩の荷が下りた」とホッとした表情を浮かべた。
会場のPGAナショナルは昔から慣れ親しんだコース。ゴルフの手ほどきをしてくれた父・デビッドさん、元キャビンアテンダントの母・ロンダさんに見守られながら予選を突破した瞬間には「さまざまな感情が込み上げてきた」。

ルーク・クラントン。PGAツアー「コグニザントクラシック」でツアーカード獲得に至った(写真/Getty Images)
造園業とガラス処理の2つの仕事を掛け持ちしていた父とCAの母。決して貧しいわけではなかったが裕福ではなかった。母は笑いながら「ゴルフ界の貧乏人でした」と話す。
3歳でクラブを握ったものの当初は中古のジュニア用クラブを寄せ集めて使い、マイアミカントリークラブ(パブリックコース)で日が暮れスタッフから「もう帰ってくれ」といわれるまで練習に打ち込んだ。
高校時代のヘッドコーチ、ブラント・モーザー氏は「常にルークはチームを背負っていた」というが彼が感心したのはゴルフのスコアではない。
ある試合でチームメイトと朝食をとっていたときのこと。トイレに行ったはずのクラントンが帰ってこないので様子を見に行くと「ホームレスの男性が支払いせず逃げようとして警察を呼ばれたのを見て、ルークは自分の財布をとりに行っていたんだ。誰も見ていないところでもそういうこと(善行)ができる子だよ」(モーザーコーチ)
母はいう。「私たちは彼に礼儀を教えてけれど息子は生まれつき善良な心を持っているのです。彼は我が家の宝です」
大学の大会ではチームでもっとも小柄な少年をパートナーに指名した。150センチの少年は途中の坂をキャディバッグを担いで上がることができなかった。するとクラントン2人分のバッグを担いで最後までプレーした。
ツアーであわや優勝の実力を持ちながら驕らず、エラぶらず地に足をつけ感謝を忘れないクラントン。応援したくなる選手のひとりだ。