欧州障害者ゴルフ協会(EDGA)、ベン・エヴァンス氏からの寄稿、第2回です。彼らはゴルフコースが障害者にも活力を与えてくれる“楽園”になりえると言います。ぜひ、世界の障害者ゴルファーの声も聞いてください。
画像: ベン・エヴァンス氏(左)。EDGAは世界中のゴルフコーチとその国内連盟を教育・支援する役割も担う

ベン・エヴァンス氏(左)。EDGAは世界中のゴルフコーチとその国内連盟を教育・支援する役割も担う

肉体的・精神的支えとなるゴルフ

活力を与えてくれる楽園について話そう。障害のある人たちは、チームスポーツやコンタクトスポーツなど、プレーヤーが衝突したりボールが動いたりするスポーツを諦めなければならなかった可能性がある――つまり、主流のスポーツの多くはできないということなのだ。ゴルフの場合、ボールは静止している。だから、どんなプレーヤーでも、障害を最大限に制限し使わないようにしてボールを打つことができる。

国際的なG4Dトーナメント(障害者ゴルフの世界大会)に参加するゴルファーは4000人近く登録されており、障害の種類を問わずその数は増加している。たとえば、車椅子に座ってプレーする「座位(シッティング)」にクラス分けされる約80人の選手が世界ランキングに名を連ねている。

「ゴルフは障害者に優しいスポーツ、ボールは静止しています」と、最近イギリスで開催されたRSMヨーロッパネットプレーオフで優勝したフランスのG4Dプレーヤー、アレクシア・ジロールは説明する。アレクシアには、バランスと脚の動きに障害がでる神経疾患があるが、ゴルフならボールの上で体を落ち着かせ、良いスウィングをすることができるのだ。アレクシアは30歳のときに背骨に腫瘍が見つかり、一度は半身不随になったが、徐々に強さと自信を取り戻してきた。

画像: フランスのアレクシア・ジロール(神経疾患)。ゴルフへの情熱が、病気から立ち直るきっかけにもなったという

フランスのアレクシア・ジロール(神経疾患)。ゴルフへの情熱が、病気から立ち直るきっかけにもなったという

「ゴルフへの情熱が、立ち直る原動力となった。私はゴルフが大好きです。スポーツはできないと思っている人たちが、ゴルフはできることを発見する姿を見るのは、魔法のようです」

画像: イギリスで開催されたRSMヨーロッパネットプレーオフで優勝したアレクシア(右)。多くの大会は多くの交流も生む

イギリスで開催されたRSMヨーロッパネットプレーオフで優勝したアレクシア(右)。多くの大会は多くの交流も生む

オランダ出身のリチャード・クルーウェン(52歳)は、25年前に多発性硬化症と診断された。病気と共存していく方法に、新しいスポーツをすることがあったが、彼はゴルフを選んだ。彼はゴルフによって活力を得て、ゴルフに人生を救われたと言うだろう。電動車椅子に座ったままゴルフを学びプレーすることは、コースの内外でリチャードの肉体的、精神的な助けとなった。今では以前よりはるかに健康で、彼の非常に前向きな性格は周囲の人々にも影響を与えている。

リチャードはウォバーンで開催された2024年G4Dオープンに出場し、「シッティング2」のクラスでチャンピオンに輝いた。

「ご存知のように、このゲームは病みつきになりますよ。そして、あなたの心の在り方が良くなるに違いない。賞金やスコアではなく、心構えです。ゴルフを私は、人生の休息として取り入れた。ただただリラックスして、1つ1つのことをこなしていくんです」

画像: オランダのリチャード・クルーウェン(多発性硬化症)。「ゴルフは賞金やスコアではなく心の在り方を良くしてくれる」

オランダのリチャード・クルーウェン(多発性硬化症)。「ゴルフは賞金やスコアではなく心の在り方を良くしてくれる」

ゴルフを始めるのに必要なことは…

G4Dの世界的権威であり、EDGAの指導・教育責任者であるマーク・テイラーは言う。彼の仕事の大部分は、世界中のゴルフコーチとその国内連盟を教育・支援することであり、それによって彼らは、初めてゴルフに触れる人から一般のプレーヤーまで、障害を持つすべての人がゲームを学び、潜在能力を発揮できるように支援するための専門知識と経験を得ることができるのだと。

「新しいプレーヤーがどのようなレベルであれ、彼らがプレーすることを熱望しているのであれば、このゲームに門戸を開き、コーチに彼らを支援するツールを与え、同時に自身のコーチング・ポートフォリオを大幅に向上させることができるのです。また忘れてはならないのは、世界中のほとんどのゴルフクラブには高齢のゴルファーがおり、彼らは重大な障害(脊椎、整形外科、神経学、感覚)を発症しているということ。ですから、この教育は、多くの真剣なコーチにとっても、彼らが技術を練習する場所(コースや練習場)にとっても、今後大きな利益となるのです」

画像: 「ゴルフは病みつきになる」というリチャード。昨年のG4Dの「シッティング2」クラスで見事優勝を飾った

「ゴルフは病みつきになる」というリチャード。昨年のG4Dの「シッティング2」クラスで見事優勝を飾った

時代は変わりつつある。世界の多くの地域で、ゴルフは徐々に主流になりつつある。これは、地球上の16%と推定される障害を持つ人々にとって朗報である。公衆衛生の面でも、社会の面でも、さらにはビジネスの面でも、ゴルファー、コースや練習場、コーチ、国の運営組織、そしてゴルフ業界、すべてにとって朗報となりうる。皆がゴルフを始めるために必要なことは、インクルージョン、機会、アクセスを求める気持ちだけだ。

小山田雅人は、ゴルフの機会を得るために戦い、スクラッチプレーヤーになるために懸命に努力した。今、彼はマーク・テイラーのようにコーチとして、他の人たちを助けたいと思っている。

「今は、他の人にゴルフを教えるとき、最初はこのゲームには難しいと思っていた生徒を助けることができ、彼らと一緒に汗を流し、上達していくのを見ることが好きなんです。上達したとき彼らの笑顔が見られるのは素晴らしいことで、それはコーチとしての大きなやりがいです」

著:ベン・エヴァンス(EDGA)
翻訳協力:石塚義将(JDGA)
写真提供:EDGA

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