陳さんのゴルフ人生

陳清波さんのゴルフ人生
ゴルフは研究と練習が大切なんですよ

陳さんから得たゴルファーの上達のためのヒントを紹介。
あるとき陳さんがこんなことを話していた。
「プロゴルファーはね、毎日4時間も5時間も練習していないとコースに出たときにどうやって攻めるかというアイディアが出てこないんだ。グリーンを見てピン位置を見て、残り距離、風の向きと強さ、ボールのライを見ながら使用番手を決め、ショットの内容を決め、ということを瞬時にやらなくちゃいけないのに、これが練習していないと瞬時じゃなくなるの。だから賞金もらえないよね」
「ボールを打つときの私の腰の使い方とか、手の返しとかね、若いときとほとんど変わっていないものね。これまで何百万個って数のボールを打ってきたんだもの、体が勝手に動くんだねえ」
陳さんは練習が好きだった。楽しみながらボールを打っていた。その結果が陳さんを伝説の人に。
以下、あくまでも、わずかの数でしかないが、陳さんから得たゴルファーの上達のためのヒントを集めてみた。
「インパクトじゃないんだ。フォロースルーだよ。インパクトは考えてもわかんないんだもの」

「インパクトばかり考えたらかえってダメなの。決め手はフォロースルーだよ」
上手い人がよく見せる、ボールをクラブフェースの上に乗せて運ぶようなコントロールショットはどうすればできるのか、との問いに答えたのがこれ。「ボールを一生懸命フェースに乗せようとして、インパクトばかり考えたらかえってダメなの。決め手はフォロースルーだよ。ヘッドを正しく振り抜くことによって結果的にボールがフェースに乗って運ばれるんだねえ。
じゃあ正しい振り抜きはどういうものかというと、振り抜いたときに左手の甲を上に向けたり下に向けたりしないで、自分の背中側を向くように収めることよ。
こういう振り抜きをすればボールを乗せる意識がなくても勝手に乗って、ボールがフェースにくっついて放り出される感じが出てくるわけね」
「ゴルフは技術を覚えて初めて考える力が出るの。技術も経験もないのに考えることはできないよ。頭が白紙なんだから」

だから上達したかったらたくさん練習して、たくさん失敗したことも糧にして経験を積んで、頭に色を付けていくことが大事よ、と陳さんは語っている。そのうえで次のようなことも。
「心技体といって、心が最初にきてますがね、最初にくるのは技なんだ、技術なんだよ。腕に自信があれば精神面も充実するし、集中力も出てくるんだね。技術の裏付けのない人に、心を鍛えろ、と言っても無理。とにかく技術を習得することよ」
「ゴルフは実際、簡単なんだ。こうだああだってないね」
なかなかゴルフが上手くならないと嘆いているゴルファーに対して、スクエアグリップにすればいいだけなんだよ、と陳さんは自説を展開する。

「ゴルフは技術を覚えて初めて考える力が出るの」
「私の生徒さんにはフックグリップはいないの。全部スクエアグリップに直させるから。するとスライスボールが出始めてね。だからボールを打つときに手をターンさせて、クラブヘッドを返しながら振ってもらうわけ。するとすぐスライスがなくなるんだ。
それで引っかけボールが出たら、ヘッドの返しが早くなっているからフットワークを使いなさいと教えるの。すると返しと合ってきてボールがドローし始めるんだね。だから簡単なんだ、ゴルフ
は。スウィングで調整するのは難しいよ。グリップを直すのが一番早いんだよ」
「プロじゃない人にはハンディキャップがあるんですから、プロみたいな頭でゴルフしちゃいけないんだ」

「無理にパーオンを狙わないで、ボギーオンでいいじゃない」
HC18のゴルファーがパー72のゴルフ場でネットスコアでパーを目標にプレーすると、各ホールともバーディを目指していることになる。しかしハンディ18を足したグロススコアを目標にプレーすれば、各ホールともボギーでオーケーだ。
「それでなんで不満なんだか。みなさんはネットでプレーするからいけないの。グロスでプレーすればやさしいじゃない。無理にパーオンを狙わないで、ボギーオンでいいじゃない。グリーン手前のバンカーに打ち込んで1回で出せそうにないと思ったら、バンカーの手前に打っておいてから次に乗せればいいのよ。オンすればパーだって取れるじゃない」
「ティーショットを打ったあとは全部リカバリーショットの連続でスコアをつくっていくんだよ」

「しっかり考えながらボールを打つことが大事よ」
ティーショットは場所が選べるしティーアップできるから最良の状態でボールを打つことができる。しかしその後のショットはライが千変万化する。だから慎重に。
「考えてみりゃ人生だってリカバリーの連続だよ。乱暴な生活してたら大叩きというか大病するしね。しっかり考えながらボールを打つことが大事よ」
陳さんはときどき人をドキリとさせることを言う。
「プロはワンショットいいのがあったらバーディが取れるの。みなさんならパーが取れますよ」

「ダウンブロー」「スクエアグリップ」「フットワーク」……。みんな陳さんから学んだ
「みなさんの場合、ティーショットがフェアウェイのいい所に飛んだからパーが取れるという保証はないでしょ。じゃあバンカーに入れたからボギーを叩くかといったら、そうでもないしね。
ゴルフというのはデリケートなものなの。だからショットショットで一喜一憂しちゃいけないし、ひとつミスショットを打ったからといって悲しんだり、めそめそすることはないんだ。諦めちゃいけないよ。バンカーショットが上手くいって、ピンそばにつくことだってあるんだよ。入れればパーじゃない。ひとついいショットが出ればそういうことよ」
文/塚田賢
写真/姉﨑正、小林司、本誌写真部
イラスト/松本孝志
協力/河口湖CC、久我山ゴルフ
※月刊ゴルフダイジェスト4月号「陳さんとまわろう! The LAST」より
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みんなのゴルフダイジェストでは、先月永眠された陳清波プロの本気メッセージの一部をご紹介した。後編では85歳になった陳プロの連続写真など、ゴルファーとして聞いておきたい金言が盛りだくさん。続きは月刊ゴルフダイジェスト4月号、Myゴルフダイジェストにて掲載中!