米ツアーで火が付き、今話題の“トルクフリー”のパター。いったい、どんなものなのか。ギアオタクでフィッターの小倉勇人に改めて聞いてみた。
画像: L.A.B.GOLFの「OZ.1」はアダム・スコット監修の”トルクフリー”パターだ

L.A.B.GOLFの「OZ.1」はアダム・スコット監修の”トルクフリー”パターだ

従来のパターとは、かなり使い勝手が違う!?

クラブフィッター小倉です。今回は、パターのお話です。近年、米ツアーでは、“トルクフリー”のパターを使用する選手が増えています。トルクフリーのパターとは、簡単に表現すると、「フェースが開閉しようとする力」がほとんど発生しないパターです。

通常のパターは、テークバックではフェースが「開く」方向に、ダウンスイングではフェースが「閉じる」方向に動こうとする力が発生します。この力は、シャフト軸線とヘッドの重心位置の関係によって変わってきます。一般的なパターは、ヘッドを宙に浮かせた状態でシャフトを支えると、ヘッドが一定の位置で停止します。

これはヘッドを支えているシャフト軸線に対して、ヘッドの重心が重力によって引っ張られ、垂直に揃おうとする力が発生するからです。この重心位置によって停止する位置の違いが、いわゆる”トウハング”の違いで、フェースが傾く角度が大きいほどストローク中に発生するフェースが開閉しようとする力が大きくなるのです。

トルクフリーのパターは、ヘッドの重心位置に合わせてシャフトを装着しているので、シャフト軸線とヘッドの重心位置にズレがありません。ヘッドを浮かせてシャフトを支えると、傾こうとする力が発生しないため、フェースをどこに向けてもその場で留まらせることができます。つまりトルクフリーのパターは、ストローク中にヘッドが開閉しようとする力がほぼ発生しないため、フェースの向きが変わりにくい、少々ストロークテンポがズレても狙ったところに打ち出しやすいパターであるということが言えます。

しかしこのトルクフリーという構造には問題点もあります。トルクフリーということは、それだけシャフト軸の回転に対して、抵抗がないということでもあるため、左右の打点のブレには弱くなってしまうのです。またヘッドの重心、つまりヘッドの真ん中にシャフトを装着する必要があるため、オンセット、つまり出っ歯のパターになってしまうのです。

トルクフリーのパターを市販しているメーカーはいくつかありますが、こういったネガティブな部分を軽減するために様々な工夫を施して市販しています。左右の打点のブレに強くするため、ヘッドを大型、軽量化し、ウェイトを外周に配置することでヘッドの慣性モーメントを高めていたり、出っ歯の違和感を極力減らすため、シャフトを左から斜めに装着し、自然とハンドファーストで構えやすくしたりと様々です。

長々と解説しましたが、結果がすべてといっても過言ではないツアープロが複数名使用しているパターなのですから、有効であることは間違いありません。ただ我々が普段使用しているパターとは、かなり使い勝手が違いますので、万人が結果を出せるかというとちょっと疑問が残りますね。特性を理解して、慣れればものすごい武器になる可能性がある、といった感じです。

ちなみに私も1本資料用としてトルクフリーのモデルを購入しました。トルクフリーの長尺モデルです。長さと重さを生かし、上から吊る振り子スタイルでゆったりと振るストロークとトルクフリーの特性が最もマッチするかなと考えてのことです。まだ一度しかコースで試していませんが、結果は上々でした。通常の長さのモデルや中尺モデルも試してみたくなっているところです。

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