
ラウンド中、ギャラリーの声にも耳を傾け、時折会話もしていた
松山英樹のマスターズ初日は、最終組の2つ前でブライソン・デシャンボーとシェーン・ローリーという、メジャー王者2人とのラウンド。そのラウンド中、印象深かったのがパトロンたちがデシャンボーに送る声援の特別感だ。
最初に気になったのは2番パー5でのこと。2打目で直接グリーンを狙ったデシャンボーだったが、ボールはグリーンをオーバーし、パトロンたちがチェアを用意して座っているエリアに入ってしまう。そこでプレーできるスペースを空けたのだが、ショットの直前にパトロンと何か会話するように見えた。何を話したかは定かではないが、近くのパトロンから笑い声が漏れたことから、パトロンの何気ない言葉にジョークで返したい違いない。その後、3打目のアプローチは、グリーン手前のラフにうまく落として、そのままコロコロとカップ方向へ転がっていく。もう少しで入りそうになると、デシャンボーは片足を上げて球を蹴るようなしぐさを見せ「もうちょっと転がれ!」と言っているようだった。それを見たパトロンは歓声ではなく、笑い声が漏れていた。結局、このホールでバーディを奪って見せた。

大きなジェスチャーでパトロンたちに笑いを起こさせる場面も
その後も、歩いている途中だったり、コースロープ付近に打ち込んでしまった時など、近くにパトロンがいれば、グータッチにも気軽に応える。他の選手のラウンドも何人か見たが、声援に応えることはあっても、ここまでパトロンたちと交流する選手は見当たらない。
PGAツアーでプレーしていた頃はそれほどファンサービスがいい選手というイメージはなかったが、今は見ていて気持ちがいいし、楽しいラウンドを見せてくれる。全米OP優勝時に「父親の死」と「YouTube」が自身とファンの関係を変えるきっかけになったと話していたが、もしかしたらファンと近いLIVゴルフでの経験もあるかもしれない。
ラウンド中、デシャンボーはうまくパトロンたちの心を掴み、その声援を力に変えているかのようだったが、LIVに行ったことで、人間的にもメンタル的にも、ひとまわり大きくなった気がした。

アメリカ人ということもあるかもしれないが、向かう先々で「ゴー! ブライソン!」とひときわ大きな歓声があがる。人気者だ
まだまだ初日が終わったばかり。松山にも十分優勝の可能性は残っている。2ラウンド目も松山はデシャンボーと回る。スコアの推移や松山だけではなく、せっかく松山と同組のおかげで日本でもデシャンボーのプレーが多く映るはず。ぜひそのプレーぶりに注目してほしい。
PHOTO/Yoshihiro Iwamoto