1982年にドイツ人として初めてマスターズに出場したベルンハルト・ランガー。40年前の1985年にマスターズで初優勝を飾り、93年に2勝目。82年以来出場しなかったのは83年と昨年の2度のみ。今年41回目の出場を最後に、マスターズを引退した。
初日は初優勝を果たした85年大会最終日と同じ上下赤のコーディネート、2日目は2度目の優勝時に着用した緑のパンツを選んだ。長くマスターズを見てきたパトロンたちの目には、若かりし頃のランガーの勇姿が蘇ってきたに違いない。
予選通過がかかった2日目の最終ホール。パーオンは逃したものの、グリーンへと向かうランガーをスタンディングオーベーションでパトロンが迎え、ランガーも手を上げて応える。グリーン左からのアプローチは寄せられず、予選通過がかかったパーパット。ウィル・ザラトリスがランガーに声をかける。恐らくパトロンを意識して「最後に打ちますか?」と聞いたのだろう。しかしランガーは首を振り、通常の競技者としてやり切ることを選択。パーパットはカップの右側を惜しくも通り過ぎ、予選通過とはならなかった。

キャディを務めた息子とともに最後のマスターズを戦ったランガー。「素晴らしいボーナスだったね」(ランガー)
ランガーはキャディを務めた息子をねぎらった後、2日間ともにプレーし、11オーバーとふるわなかったアマチュアのノア・ケントの肩を優しく叩きながら言葉をかける。「君にはまだ時間がある。また挑戦すればいい。頑張るんだ」。そう言っているように見えた。そして再びスタンディングオーベーション。多くの「サンキュー」という言葉とともに見送られ、ランガーがコースを去った。
「引退を決めている試合で、たった1打足らず決勝を逃すのもランガーらしい。やはりレジェンド。かっこいいい終わり方だと思った」(五十嵐)
PHOTO/Blue Sky Photos
イラスト/古沢優
※漫画家・古沢優がゴルフダイジェスト特派記者として今年、マスターズ会場で取材中