
前澤杯を手にするツアー初優勝の小西たかのり(撮影/姉崎正)
今平周吾との激戦を制した

今平周吾との激戦を制した小西(撮影/姉崎正)
まさかの幕切れだった。通算17アンダーで首位に並んで迎えた最終18番。小西は先に手前1メートルのパーパットを沈めた。続いて今平が右から同じくらいの距離をカップの右に外してボギー。この瞬間にここまで無名だった33歳の初優勝が決まった。
優勝スピーチではまだ緊張感が残っているようだった。
「このような注目を浴びている大会の初代チャンピオンになることができて本当にうれしいです。この1勝を励みに今シーズン努力してまいりますので、応援のほどよろしくお願いします」
勝負を決めた18番のセカンドショットは小西、今平ともピンまで残り148ヤードからだった。2人は短い話し合いの末、小西が先に打った。ボールはピン左奥4メートルにナイスオン。対する今平はグリーン左奥に外した。今平が難しいアプローチを1メートルに寄せた後、入れば優勝の4メートルのバーディパットは外したが、結果としてウィニングパットになった返しの1メートルをあっさりと沈めた。
「(18番の最後のパットは)あまり期待しないで打ったのと、プレーオフは覚悟していたので、さらっと打てたかなという感じです」
ミラクルパットで優勝への流れを引き寄せた。13番で今平に1打のリードを許したまま迎えた17番パー3。奥から15メートルの下りスライスを読み切った。このバーディパットが決まった直後は大勢のギャラリーから大きな声援と拍手が沸き上がった。これで今平に並び、最終18番の劇的な幕切れへとつなげだ「(今日は)朝から順調にいっていたんですけど、やっぱりそんなに甘くはないなと思っているときに17番で奇跡的なバーディが取れて……。入っちゃったという感じでした。運がよかったなって思います」
一度やめたゴルフを石川遼の優勝を見て再開

今年から名前の「貴紀」を「たかのり」に変更した小西(撮影/姉崎正)
小西は1992年1月16日、東京都葛飾区出身。幼少から始めたゴルフからは一時遠ざかった時期があったが、同学年の石川遼の活躍に刺激を受けて再びクラブを握り、2012年に20歳でプロテストに合格した。その後は苦戦が続いたものの2022年に初シードを獲得。今年から名前の「貴紀」を「たかのり」に変更し、飛躍を誓っていた矢先の初優勝となった。
「石川選手の優勝を見て、またゴルフをやりたいなと思ったのがきっかけでした。(プロ転向後は)確かに結果が出なくて苦しかった時期がありました。でも、周りの選手やコーチの支えもあって続けることができました。やめようと思った時期もありましたが、まだ自分は本気のゴルフができていないという思いがあったので、ここまで続けられたと思います」
新規大会の初代優勝者となり、今後のビジョンも大きく広がる。
「優勝はやっぱりうれしいです。どんな形であれ勝つというのはすごく特別なことだと改めて感じています。(今後)ベスト10入りやランキング上位に入ることで将来的には海外の試合も視野に入れられると思うので、上を目指して挑戦したいと思います。このままいい流れをキープして次の試合にもいい形で臨みたいです」
ちょっとばかり長かった初優勝までにかけた時間は今後への糧。さあ、33歳の飛躍に期待しよう。