▶【ゴルフ川柳アツアツ最前線①】ゴルフ川柳で来場者満足度が爆上がりのコースがあった!
ゴルフ川柳達人ファイル①
「還暦を過ぎてできた新しい趣味です」
ゴルフ川柳殿堂入り大江大さん(パンキー太朗)(67)宮城県
第4回のコンクールに初登場し「転勤族 どうりでアドレス 定まらず」が最優秀賞を受賞し、林家正蔵師匠が「恐るべき新人現る」と驚いたのが「パンキー太朗」こと大江大さん。同第5回「このライン 既読のはずが 記憶なし」で、連続最優秀賞を受賞し「殿堂入り」したが、実はゴルフ川柳を作るようになったのは2021年。「始めて1年半ほどで目標を達成し、戸惑ってしまいました」と言う。その“早熟ぶり”から、林家正蔵師匠と週刊ゴルフダイジェスト編集部担当者の間では「ゴルフ川柳界の藤井聡太」という共通認識がある。
仙台市で医師として働く大江さん。上司に勧められ、1987年の春、気仙沼CCでゴルフデビュー。ゴルフ川柳デビューはそれから34年後だ。
「テレビ番組の『プレバト!』は見ていましたが、俳句は作ったことがありません。作るなど考えたこともありませんでしたが……」、知恵を絞って応募し、即快挙。ゴルフ川柳は「お金がかからない、しかも運が良ければ賞品が貰える。還暦を過ぎて新しい趣味ができるとは思いませんでした」。
ペンネームでの掲載なので、周囲にそれを知られることはなかったが「なんとか自慢したくて」医師会の会報に載せるようになってから周囲に認知されるようになり、メンバーコースの東蔵王GCでは週刊ゴルフダイジェストに掲載されると付箋で目立たせてくれる人がいるという。さらには同級生の脳外科医「グーゼンゼック」さんも応募、誌面に掲載された。

大江さんのゴルフライフ。犬を連れていける那須のコースには愛犬「ラン」と一緒に
ゴルフ川柳の制作にあたり「新語流行語、時事ネタ、ダジャレには敏感になりました。女子プロの名前にも気をつけていますが、男子プロは難しいです。映画『ゴジラ–1.0』のポスターを見て『ゴジラ、ワンアンダーだ』と思ったときには、だいぶ毒されていると思いました(笑)」。
毎年投稿を続けており「出し終わると頭の中が空っぽになり、しばらく全く川柳が浮かばなくなります。『来年はダメかもしれない』と妻に言うと『毎年そう言っている』と返されます」。創作の醍醐味は「ゴルフを知っている人から見ればゴルフ川柳でしかない句が、ゴルフを知らない人から見れば全く違う意味になる句ができたときは『やった』と思いますね」。
殿堂入り後、審査委員長の林家正蔵師匠に会うという夢ができたそうだが、こちらは今年の3月に実現。そしてもうひとつ「尊敬するゴルフ川柳名人の大野(究)さんを訪ねて鹿児島に行き、一緒にゴルフをしたい」という夢もあるという。
ちなみに、ユニークなペンネームの由来は息子さん。「やっと片言で話せるようになったとき
『パンキー』と繰り返してはケタケタ笑っていて。彼の名前が『慶太朗』なので、以来、ペンネームが必要なときは『パンキー太朗』です」
★パンキー太朗 ゴルフ川柳名作コレクション
◆転勤族 どうりでアドレス 定まらず
◆このライン 既読のはずが 記憶なし
◆飲み会も 届かぬパットも オンライン
◆ナイスプレー 彩香彩華に あやかりたい
◆ナイショット さぼってゴルフは ないしょっと
◆バウンスバック 意味はわかった 縁はなし
ゴルフ川柳達人ファイル②
「ラウンドバッグにはハガキを入れています」
新沼伸一さん(65)岩手県
妻の付き合いで始めたゴルフ歴は35年。そのうち雑誌の企画で、ゴルフ短歌を作るようになり、その後、小誌にゴルフ川柳のコーナーがあるのを見つけチャレンジするようになったという新沼さん。
短歌と川柳の違いは「短歌は31文字と長く、難しいと思われるかもしれませんが、そのぶん書きたいことを入れられる。川柳は17文字で短いところが難しさでもあります」。
年間のラウンド数は150回程度で、そのすべてがゴルフ川柳のネタの源だ。「ゴルフって、紙と鉛筆を持ってする珍しいスポーツですよね。だからメモをとるのに便利です(笑)」。ラウンド中に面白かったこと、気づいたことをスコアカードの隅にササッとメモするそう。
しかし、35年もゴルフをしていると、毎回そんなに新鮮なこと、面白いことが起きるだろうか?
「それが、毎回起きるんです。60年以上生きてきて、毎日ご飯を食べていますが、毎回おいしいなあと思う。そんな感じです」
ラウンドはゴルフ川柳のネタ集めタイムだが、ゴルフ場への行き帰り3時間は頭の中での組み立て&推敲タイム。五・七・五をベースに、メモしたフレーズをあれやこれやと組み合わせてはバラし、バラしては組み合わせる。
「できた川柳は、いつもは自宅でハガキに書き出すんですが、ときどきゴルフ場ででき上がることもあるので、プレー中に持ち歩くラウンドバッグにハガキを常備しています」
ハガキに記した川柳は、投函するギリギリまで推敲。編集部に届いたハガキに、ときどき“お直し”の跡が入っているが、それも思案を重ねた証し。もともと理系で「文学とは何の縁もない人生ですが、井上ひさしさんは大好きで、著作は全部読んでいます。あのユーモアとか洒脱な感じ……いいですよね」。

昨年の日本女子オープンでボランティア
上に列挙したとおり、新沼さんの作風も実にユーモラスで洒脱な雰囲気がある。創作の折に特に気を使うのは「助詞の使い方です。『は』と『が』で大違いになるケースもあります」。助詞を大事にしているのには昔の記憶があるという。
「『巨泉のクイズダービー』という番組があって、その中で一文字を変えることで一文の意味を変える、みたいな内容があったんです。『今日も元気だ。たばこがうまい』という文を一文字変えるんです。で『が』を『か』に変えると『今日も元気だ。たばこか(買)うまい』と、まったく逆の意味になる。面白いですよねえ。これが今もすごく頭に残っているんです」
ちなみに自作のなかでのお気に入りは……。ゴルフ川柳コンクールでも入賞した「悪いとき どう打つのかが わからない」「いいときは どう打ったかが わからない」。連作というスタイルが斬新で、選考会で林家正蔵師匠も絶賛した名作。これは、小誌でもおなじみの高松志門プロのレッスンを受けていた際にふと思いついたそう。
「先生がいつも『ナイスショットに理由はない』とおっしゃっていて、ハッと思いメモを取りました」
毎日が“気づき”の新沼さんのゴルフライフ。今後の新作も楽しみだ。
★新沼伸一 ゴルフ川柳名作コレクション
◆悪いとき どう打つのかが わからない、いいときは どう打ったかが わからない
◆ありがとう 今朝見たばかりの YouTube、悔やまれる 今朝見たばかりに YouTube
◆パー券を 売ってスコアが 作れたら
◆このパット 入るといいな デコピンで
◆さっきホラ OK出したと 目がせがむ
PHOTO/Akira Kato
※週刊ゴルフダイジェスト4月29日号「ゴルフ川柳」より一部抜粋