「週刊ゴルフダイジェスト」や「みんなのゴルフダイジェスト」で、障害者ゴルフの取材記事を執筆したベテラン編集者が、日本だけでなく世界にアンテナを巡らせて、障害者ゴルフのさまざまな情報を紹介する本連載。今回は5月15~17日、イギリスのウォーバーンGCで、「G4Dオープン」が開催される。日本からは3選手が出場。大会概要、注目選手や見どころなどを欧州障害者ゴルフ協会(EDGA)、ベン・エヴァンス氏が寄稿してくれた。2週にわたりご紹介する。

100メートル走の選手なら「オリンピック」、テニス選手なら「ウィンブルドン」、F1ドライバーなら「モナコ」か「モンツァ」か。そして障害のあるゴルファーにとってのそれが「G4Dオープン」かもしれない。この大会は、それらの比較対象として十分な格式がある。

画像: 総合&スポーツクラス別、ダークブルーの勝者の看板が迎えてくれる

総合&スポーツクラス別、ダークブルーの勝者の看板が迎えてくれる

ウォーバーンで開催されるG4Dオープンは、今年7月にロイヤルポートラッシュで第153回大会が開催される英国の歴史ある「全英オープン」に直接関連している。両大会ともR&Aによって運営されており、予選を勝ち抜いた一流プレーヤーを迎え入れ、可能な限り最高水準の大会設営を行っている。”宝石“のような選手たちのあらゆる面においてうらやましいほどの注意を払うという点で、両大会に共通した特徴がある。今年で3回目を迎える“若い”G4Dオープン(5月15~17日)は、R&AがDPワールドツアーと提携して運営し、EDGAがサポートしている。

20カ国から約80人のプレーヤーがロンドン北部に到着し、R&Aのトレードマークであるダークブルーで美しく飾られたバナー、スコアボード、看板を目にし、きっと満足することだろう。そして、2024年の9つの「スポーツクラス」の各優勝者を告げる魅力的な大きいポスターを発見することだろう。このポスターは、身体、神経、感覚、知的、すべての障害を持つプレーヤーに競争する力を提供する。彼ら自身がトロフィー獲得を目指しており、それゆえに困難を恐れずに夢を追求していくことができることを強調している。ここでは、18歳から79歳までのプレーヤーがティーアップし、インクルーシブな枠組みのなかで激しい競争が繰り広げられる。

第1回、2回のG4Dオープンも、ウォーバーンのダッチェスコースの起伏に富んだフェアウェイと難易度の高いグリーンを囲む高い木々のなかで、独特の雰囲気を醸し出していた。

「G4D」(golf for players with a disability~障害を持つプレーヤーのためのゴルフ)のための場所という観点では、このコースは最高峰のひとつであり、間違いなく頂上にある。この高い位置には、G4Dツアー(DPワールドツアーが運営し、ウェントワース/イングランド、アースコース/ドバイ、オーストラリアンGCなどで開催)、USアダプティブオープン(USGAが運営)、ヨーロッパ選手権(ヨーロッパゴルフ協会が運営)などの大会もある。

一方、今年の挑戦者の多くは、EDGAツアー(2025年に12大会)で常にハードな競技を楽しんできた。また、EDGAがサポートする数多くの各国の国内大会(29年続いている権威ある日本障害者オープンゴルフ選手権も含む)も同様である。

2024年王者の帰還

画像: 2024年大会男子総合優勝・キップ・ポパート&女子総合優勝・ダフネ・ヴァン・ホーテン

2024年大会男子総合優勝・キップ・ポパート&女子総合優勝・ダフネ・ヴァン・ホーテン

世界ランク1位、イングランドのキップ・ポパートは、ウォーバーン大会の男子総合のディフェンディングチャンピオンであり、彼のスポーツクラス(スタンディング2)の勝者でもある。一方、女子世界ランク1位、オランダのダフネ・ヴァン・ホーテンは、女子の王冠を守っており、彼女のスポーツクラスは「スタンディング3」である。

G4Dツアーで何度も優勝しているポパートは、脳性麻痺の障害を持つが、昨年は68、75、74でラウンドし、現在世界ランク3位でアイルランドのブレンダン・ローラーをわずか1打差で抑えている。エリス・ヴァン・クレーベルド症候群で生まれたこのアイルランド人プレーヤーは、スポーツクラスの「スタンディング3」で優勝した。

画像: 白熱の優勝争い。ブレンダン・ローラーをわずか1打差で撃破

白熱の優勝争い。ブレンダン・ローラーをわずか1打差で撃破

生まれつき脊柱側湾症のダフネ・ヴァン・ホーテンは、1年間の怪我で、ティーショットからグリーンまでをいつもベストなフォームでプレーできたわけではなかったが、経験豊富なコースマネジメントと優れたショートゲームのおかげで82、80、83のスコアをマークし、女子のトロフィーを手にした。女子総合2位となったイングランドのアイミ・ブロックも、左手をすべてのゲームで効果的に使いながら、「スタンディング2(女子)」でも優勝を飾った。

今年は女性選手が合計19名と増えているが、これはゲームの進歩にとって必要なことであり、昨年の他の女性部門の優勝者であるスウェーデンのエリカ・マルムバーグ(インテレクチュアル2)とイタリアのアレッサンドラ・ドナーティ(スタンディング1)は、今年も出場することを楽しみにしている。

画像: 笑顔が素敵なダフネ・ヴァン・ホーテンは経験も豊富

笑顔が素敵なダフネ・ヴァン・ホーテンは経験も豊富

今年の男子総合タイトルをかけて、ポパートとローラーに挑戦できる選手は、少なくとも12人ほどはいるだろう。カナダのクリス・ウィリス(スタンディング3、世界ランク7位、昨年総合3位)、2024年に4位タイで終えた世界ランク4位のオーストラリアのラクラン・ウッド(スタンディング3)、過去に兵役中の負傷で足の切断を余儀なくされ、2014年に36歳でゴルフを始めたのに2016年にはプロ転向するほどの実力を持つイングランドの世界ランク6位、マイク・ブラウン(スタンディング2)などが上位にくい込む候補者だ。

来週につづく……

著:ベン・エヴァンス(EDGA)
翻訳協力:日本障害者ゴルフ協会
写真提供:EDGA

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