申ジエ選手は、3日目に鬼気迫る集中力で7バーディ2ボギーの67で首位の藤田さいき選手に2打差で最終日を迎えていました。グリーン周りの深いラフを避けセーフティなエリアに乗せたピンまでの長いパットをことごとく決める集中力の高さと持続力には目を見張るものがありました。最終日、体調不良で満身創痍の藤田選手がスコアを崩しながらも必死のプレーで食い下がりプレーオフに突入しましたが、18番パー5のラフから打った3打目をグリーン右奥に外し、そのアプローチがショートし力尽きました。
申ジエ選手は正規の18ホールは「安全にプレーし過ぎた」とノーバーディ1ボギーでしたが、プレーオフではフェアウェイからの2打目を4UTのドローで打ちグリーン手前の池の横、残り75ヤード地点に狙い定めたショットが勝負を決めた54度のベタピンショットにつながりました。

ツアー29勝目をメジャー初戦「ワールドレディスサロンパスカップ」で飾った申ジエ(写真/姉崎正)
それでは申ジエ選手のドライバーショットを見てみましょう。両肩を下げた浅い前傾姿勢からヘッドから始動し、早い段階でクラブが空を指す手首の使い方が特徴的です。クラブヘッドの運動量を大きく使いながら右わきをしっかりと締め、腕はコンパクトに使います。

両肩を下げて浅い前傾姿勢から手首を使ってヘッドの運動量を大きく使う
そうすることで再現性が高く手の感覚を優位にするスウィングだと言えます。ニュートラルな軌道を持つことで、状況によってドロー、フェードを打ち分けていますし、アゲンストのときには「スピン量を落とします」と、入射角とダイナミックロフト(インパクト時のロフト)をコントロールする技術の高さでスピン量までコントロールしているといいます。そういった技術の高さが昨年の「AIG女子オープン」で2位という成績を残していることも納得できます。
切り返し以降はアドレス時よりも少しひざの角度が深くなる動きから下半身を使って回転力を高め、テークバックで作った手首の角度をリリースして振り抜いていきます。

切り返しでアドレス時より沈み込み下半身を使って回転力を高め手首をしっかりとリリースする
フォローで両腕がしっかりと伸びフェースもターンしているのは手首をしっかりとリリースすればこそ。このリリースの動きが足りないと左ひじが引けてフェースが開いて当たる動きにつながります。フェースのローテーションが足りずに打ち出しが右に出てしまうゴルファーは参考になりますが、安定したローテーションのタイミングには手の感覚が大切になります。
ツアーメンバー以外での2勝は加算されないため、今大会の勝利で通算29勝目となり永久シードまで残り1勝となりました。これまでの勝利で獲得した副賞のお菓子や農産物などは宮崎県の養護施設などへの寄付を続けているといいます。KLPGAの賞金女王、世界ランク1位など歴代のレジェンドと肩を並べ37歳になった申ジエ選手の目下の目標は、日本ツアーの賞金女王になることと話していたので現在ではポイントランク女王になること。残り28試合で今季の最有力候補になることは間違いないでしょう。