「週刊ゴルフダイジェスト」や「みんなのゴルフダイジェスト」で、障害者ゴルフの取材記事を執筆したベテラン編集者が、日本だけでなく世界にアンテナを巡らせて、障害者ゴルフのさまざまな情報を紹介する本連載。今回は5月15~17日、イギリスのウォーバーンGCで、「G4Dオープン」が開催される。日本からは3選手が出場。大会概要、注目選手や見どころなどを欧州障害者ゴルフ協会(EDGA)、ベン・エヴァンス氏が寄稿してくれた。

日本からは、3人の“サムライ”が出場!

男子総合は非常にオープンな雰囲気で、多くの選手がチャレンジできる。日本からも真剣な挑戦者がやってくると考えるとワクワクする。日本人で世界ランク最高位の吉田隼人(世界ランク35位、スタンディング2、バイク事故で右足を切断した41歳)は、昨年は次につながる78、80、80の堅実なラウンドで21位に終わった。小山田雅人(スタンディング②、2歳の時に事故で右手を失った)は、23位タイ、秋山卓哉(スタンディング2、左膝上切断)は41位だった。3選手とも、英国の新しい“パークランド”コンディションのダッチェスコースを初めて経験した。彼らはこの経験から多くのことを学んだだろうから、これらの名前がリーダーボードの上位に食い込んでくることを期待していいのではないか? この “3人のサムライ”たちは皆、技術的に優れたプレーヤーであり、非常に強いキャラクターを持っている。要注目だ!

ハヤト、タクヤ、マサトの3人は、ここ1年ほどヨーロッパのG4Dイベントでの素晴らしい経験からコースコンディションの知識を得ているだろう。イギリス、スカンジナビア、ポルトガルでの大会では温かく迎えられ、国際的な選手たちの間で日本の素晴らしい印象を与えている。

画像: 昨年の日本障害者オープン覇者・吉田隼人。海外挑戦も続ける

昨年の日本障害者オープン覇者・吉田隼人。海外挑戦も続ける

ダフネ・ヴァン・ホーテンに勝つのは難しいかもしれないが、デビュー戦となるドイツのジェニファー・スレーガ(スタンディング3、世界ランク2位)と、3度目の挑戦となるアイルランドの安定感あるフィオナ・グレイ(スタンディング2、世界ランク3位)には注目したい。ジェニファーは生まれつきの軟骨無形成症で、フィオナは兵役中に背中、肩、ひざの手術を何度も経験している。2013年に多発性硬化症と診断されたアイミ・ブロックは、2022年のEGAヨーロッパチーム選手権で母国の銀メダル獲得に貢献し、経験豊富な選手だ。

イタリアのアレッサンドラ・ドナーティは神経症を患っており、女子スポーツクラスの「スタンディング1」のディフェンディングチャンピオンだ。彼女は、今年のウォーバーンに多くの女性選手を迎えることを喜び、2024年に感じたことをこう語っている。

「障害を持つ選手として、私は光栄に思っています。自分のゴルフに打ち込み、この運動を推進してきたこの数年間が報われたような気がします」

画像: ジェニファー・スレーガ。いつも明るくポジティブにプレー

ジェニファー・スレーガ。いつも明るくポジティブにプレー

スポーツクラスでの素晴らしい競争

スポーツクラスでは、他にも興味深い可能性がある。活気に満ちたオランダ人プレーヤー、ユルゲン・ブーンは男子「シッティング1」で常に注目を集めている。「シッティング2」では、多発性硬化症のオランダ人、昨年のチャンピオン、リチャード・クルーウェンが、イギリスのクリス・アヴェスやスペインのフェルナンド・ベガ・デ・セオアンといった素晴らしい選手たちと対戦する。

クリスは現役の警察官で、2017年にロンドンで起きたウェストミンスター橋テロ事件で腰から下が麻痺した。フェルナンドは2022年にスキー事故で背骨を骨折した。フェルナンドは言う。

「それ以来ずっとゴルフをプレーしていて、パラゴルファーと名乗ることで、僕は町の新しい少年になったんだ! ゴルフは私に再び競技に出場し、新たな自己ベストを発見するチャンスをもたらしてくれました」

画像: 各クラスでもタイトル争い。リチャード・クルーウェンとメッテ・ハヴナース

各クラスでもタイトル争い。リチャード・クルーウェンとメッテ・ハヴナース

スコットランドの視覚障害者、バリー・マクラスキー(ビジュアル2)とノルウェーの視覚障害者、メッテ・ハヴナース(ビジュアル1)も、ウォーバーンでの経験を大切にしている。両者とも、プレーをサポートする経験豊富な「ガイド」と「キャディ」を必要としている。バリーは父親のジョージに頼り、メッテには献身的な夫のビルガーがいる。

「ロープの外」で成長するG4D

G4Dオープンは、EDGAが「プレーヤーパスウェイ」と呼ぶ、トップレベルの到達点を示す大会である一方、あらゆる障害を持つ人々が、初出場する“サンプラー”からレギュラープレーヤー、そして障害者ゴルフ世界ランク上位のトップ選手まで、どのレベルでもゴルフを楽しむことができる。ウォーバーンでは、国際的なゴルフ組織の代表者を対象とした一連のワークショップでこのテーマが包括的に取り上げられ、世界中のG4Dの状況や参加者へのサービス(世界人口の16%が障害者)を改善するための前向きな展望が示される。

ベッドフォード公爵によってウォーバーンに歓迎された参加者は、R&A、DPワールドツアー、EDGAがG4Dに利益をもたらすための研究、教育、技術に関する最近のプロジェクト活動について学びます。 このプロジェクトには、EDGAの「8段階パスウェイ」の最近の承認も含まれている。このパスウェイでは、コミュニティスポーツや健康グループ、ゴルフクラブ、カントリークラブから全国連盟に至るまで、ゴルフ組織がエンドユーザーの基準を高めるための8段階の明確な計画を利用することができ、各段階にいる人々に有益となる。

画像: 競技カテゴリーは、障害の種類というよりは障害レベルで9つ「シッティング1/2」「スタンディング1/2/3」「ビジュアル1/2」「インテレクチュアル1/2」に分けられており、アイコンを作り、わかりやすく”見せる“ようにしている(写真左)コースには2019年の全英女子オープンで優勝した渋野日向子の写真も!今年のトロフィは誰の手に!!(写真右)

競技カテゴリーは、障害の種類というよりは障害レベルで9つ「シッティング1/2」「スタンディング1/2/3」「ビジュアル1/2」「インテレクチュアル1/2」に分けられており、アイコンを作り、わかりやすく”見せる“ようにしている(写真左)コースには2019年の全英女子オープンで優勝した渋野日向子の写真も!今年のトロフィは誰の手に!!(写真右)

EDGA会長のトニー・ベネット博士は、次のように述べている。

「8段階パスウェイの重要なメッセージは、どのような組織であれ、その発展のどの段階であれ、通過するであろう“旅”があるということです。各段階を直線的にたどる必要はありませんが、将来の顧客のためにG4Dを抜本的に改善するためには、どの段階も不可欠であることを私たちは知っています。障害に対する理解を深めて育った新しい世代のゴルファーは、より大きなインクルーシブを期待しています。“8段階”は、組織が、フォロワーではなく、イノベーター、リーダーになるために実施できるツールやリソースで、それらの活動をサポートします」

この週、ウォーバーンでは、イベント主催者は学校やチャリティグループを歓迎するなど、一連のコミュニティゴルフイベントを紹介し、学校、病院、リハビリセンターなど、従来とは異なるゴルフ環境を含むコミュニティにゴルフを持ち込むことで何が達成できるかを紹介する。

画像: 選手たちに取材をするベン・エヴァンス氏。穏やかに見えて情熱を秘める。G4Dオープンの詳細はhttps://www.randa.org/championships/the-g4d-open

選手たちに取材をするベン・エヴァンス氏。穏やかに見えて情熱を秘める。G4Dオープンの詳細はhttps://www.randa.org/championships/the-g4d-open

プロやボランティアのコーチの教育、関節炎を持つプレーヤーがより快適にクラブを握りスウィングできるようにするための最近の研究(Koalaaとの共同研究)、車椅子のプレーヤーのカスタムフィッティングをサポートするためのPINGとの共同研究、障害を持つゴルファーのパフォーマンスデータをまとめ彼らの潜在能力を引き出すサポートをするためのスリクソンとの共同研究などである。

著:ベン・エヴァンス(EDGA)
翻訳:本誌編集部写
真提供:EDGA、本誌編集部

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