グリーン周りでのアプローチのチャックリほど、ゴルファーの心を深くえぐるミスはない。再び同じような状況に出くわせば、「またやるんじゃないか」という不安がよぎり、案の定ダフリトップ。上手く打てたとしても距離感なんて考える余裕はなく、寄せワンのパーは遠くになりにけり……そんな人も多いのではないだろうか。

オデッセイから新登場の『CHIPPER(チッパー)』。ソールが広くユーティリティのような形状。ロフトは37度と8番、9番アイアン並み、長さ34.5インチ、ライ角66度とパターに近い
そこで救世主的クラブ・チッパーを入れるか考える。ただ使い道はグリーン周りと限定的で、さらに「私、アプローチが苦手です」と公言してしまうようで二の足を踏む。しかし新たにオデッセイから出る『CHIPPER(チッパー)』は、そんな思いを払拭するほどの性能の高さを証明した。
【TESTスタート】1球目からチップイン未遂。安心感、安定感が半端じゃない

テスター/佐々木勇プロ。2012年PGA入会の42歳。ツアーを目指しながらレッスン活動に勤しむ。ステディなプレーはプロ仲間からも一目置かれる。ニュー南総GC所属
――エッジまで5ヤード、ピンまでは15ヤード。ここで新しいオデッセイの『チッパー』、同ロフト(37度)の「8番アイアン」、「52度のウェッジ」の3本でテストしていただきます。その前に『チッパー』の印象はどうですか?
佐々木 見た目は完全にパターの延長線上のクラブですね。長さも短く(34.5インチ)、ライ角もアップライト(66度)なのでボールに近く立てて安心感があります。重さも結構ありますね。手元も重いのでストロークが安定しそうです。
――ソールはかなりワイドです。
佐々木 いかにも“ダフらず滑ります”という感じ。でもワイドなだけじゃなくて、途中に段差があってさらにダフりにくく、加えて据わりが良い。リーディングエッジ側も面取りされて刃が刺さらないような工夫がされていたりと、細かな配慮があります。かなり真剣に緻密に設計された“本気のチッパー”ですね。

リーディングエッジ側が面取りされていて、より一層地面に刺さりにくい
――では3球ずつテストしましょう。早速、チッパーからお願いします。
うわっ! いきなりカップをなめましたよ。
佐々木 初めて打ったクラブですよ! 私も驚きです。フェースインサートが白いのでロフトが強調されますが、比較的低く飛び出す印象です。もっとパターっぽく打ってみましょうか。

パットのように両腕でできる三角形を崩さないように打つといいです(佐々木プロ)

パットのように両腕でできる三角形を崩さないように打つといいです(佐々木プロ)
――これも寄りました。距離ピッタリ。
佐々木 あー、パターっぽく打ったほうがボールが柔らかく飛んでいくので、フィーリングが出ますね。オデッセイ独自のインサートも打感が良くて、それも距離感の良さにつながります。そして何より“ダフらない”という安心感はかなり強力。ウェッジならもっとシビアに入れていかないといけないので、緊張した場面ではストレスになりますから。おー、3球とも1メートル以内に寄りました。

『チッパー』のアドレスビュー。ヘッド後方の三本線がアライメントを助ける

フェースはやや“ハイトウ”形状でアイアンらしさを醸す。フェースはオデッセイらしいホワイトのインサートで打感もソフト

グリップは『チッパー』専用。下側までくびれのないテーパーレスで余計な手首の動きを抑える
――では次、52度のウェッジでお願いします。
佐々木 この状況だとよく使うクラブです。あ、ちょっとスピンが入っちゃいましたね(笑)。短かった。ウェッジはこういうことがたまに起こります。チッパーではこの心配はいりませんね。
――52度で3球打っていただきました。こう言っては失礼ですが、方向性もちょっとばらけました。
佐々木 間違いない(笑)。その点でもチッパーの優位性は明らかですね。打ち比べるとよくわかります。では8番アイアン行きます。
――あ、だいぶ球が強いですね。

8番アイアンでのアプローチ。ロフトは『チッパー』と同じだが、初速が速くオーバーする傾向に
佐々木 チッパーと同じロフトですけど、ボール初速が出ますね。この状況だと手前にワンクッション入れないと距離が合わない。もう少しピンまで距離がないと……。
――結果、3球ともややオーバーしました。
佐々木 チッパーに比べてクラブが長いので、距離が出ますよね。方向性はチッパーに負けず劣らずいいんですが。この状況、チッパーの完全勝利です。

『チッパー』で打った3球はすべて1メートル以内に寄った!
――先ほど、パターのように打つといいという話がありましたが、打ち方のポイントはありますか?
佐々木 本当にパットの感覚でいいと思います。ヘッドがスタンスの真ん中、ボール位置はやや左。ライ角通りに構えることでボールに近く立てますし、クラブが重いので自然と振り子式にリズムよくストロークできます。仮にボールの手前から入っても、幅広ソールが滑るので、ややアッパーにストロークしても問題ありません。
いい意味でアバウトに打てるのでストレスがないですし、距離感に集中できるところも寄る確率を高めます。

ヘッドはスタンスの中央。シャフトは垂直

ライ角通りに構えるとボールに近く立てて安定感が出る
――ラフではどうでしょう。
佐々木 強烈に深いラフだと厳しいかもしれないですが、通常の長さぐらいならウェッジより気を遣わずに簡単に脱出できました。ただし、強烈な砲台グリーンへのアプローチなどは、ある程度打ち出しの高さが必要なので、その見極めは必要になるでしょう。
チッパーを使うことでアプローチの技術も上がる!?
――テストではかなりの好結果でした。佐々木プロもバッグに入れますか?
佐々木 う~ん、そうですね。確かにいいんです。でも何かを抜いて入れるとなると、チッパーは使用する場面がやや限定的なので……。ただアマチュアの方は、真剣にバッグインを考える価値があると思います。間違いなくスコアをセーブできる場面が増えます。
――私も打ちましたが、確かにアプローチが簡単に感じます。でも心配なのは、チッパーの楽さに慣れてしまうとウェッジに戻れなくなっちゃうんじゃないかと……。
佐々木 いや、それはないですよ。アマチュアの方を見ていると、アプローチでもショットのように構えもバックスウィングも大きく、インパクトで緩めてダフる、というパターンが多い。普段のアプローチでもパットのように近く構えてほしいぐらい。そういう意味でもチッパーは、距離に適した構えや振り幅を自然と覚えさせてくれますから、逆にアプローチが上達すると思います。

上手く当たるかどうかの不安なく、楽にボールを運べる『チッパー』
――そう聞くと使ってみたいなと思います。
佐々木 かつては、女性やシニアしか使わなかった7番や9番ウッドも、今ではPGAツアーのトップランカーが使うようになっています。このチッパーだってそうならないとは限らないし、14本の中に入るだけの優位性は十二分にあります。このオデッセイの新作はかなり良くできていますから、アプローチに悩んでいる人はもちろん、もっと寄せたいと思っている人も、試してみるとその使い勝手の良さを実感できるはずです。
ウェッジで寄せる、確かにロマンがあるが、反面大きくミスする可能性もはらんでいる。それよりやさしい『チッパー』でピタピタ寄せるほうが、もしかしたらカッコいいのかも。ミスを回避するためばかりではなく、他のクラブと同様に“スコアを縮める”クラブという積極的な観点でバッグインを検討してみてはいかがだろうか。

「オッケーがもらえたら、サッとクラブで拾えるのもいいですね!」(佐々木プロ)
PHOTO/Takanori Miki
THANKS/ニュー南総ゴルフ倶楽部