片山晋呉が契約したシャフトメーカーって?
片山晋呉プロが今年3月のシニアツアー開幕戦で優勝した際にドライバーのシャフトが注目されています。
みなさんもご存知の通り、片山晋呉プロは優勝31回を誇る日本のトッププロです。プロゴルファーの中でもスウィング理論やクラブに対して非常に研究熱心なことでも知られています。シニアになった現在でも常に自身のゴルフのブラッシュアップに余念がなく、特にシャフトに関しては常に新しいシャフトをテストしていることが度々話題になったりしています。
その片山晋呉プロが優勝した際に使用したシャフトメーカーとブランドパートナー契約を結んだことが話題になっています。その契約先は「TRPX」。

スウィング理論やクラブへの造詣が深い片山(写真/2025年前澤杯MAEZAWA CUP 撮影/姉崎正)
「TRPX」は設立から10年以上になるカスタム系シャフトメーカーで製品は主にゴルフ工房等で販売されています。片山プロのほかに、シニアの田村尚之プロや日下部光隆プロなどが使用しています。
プロゴルファーは様々なメーカーと契約を結ぶことはありますがシャフトに関しては、使用はしても特定のシャフトメーカーと契約することは一般的にはありません。理由としては、その時のスウィングやコンディションによって様々なシャフトメーカーの中からベストなシャフトをチョイスしたいと考えているからです。
よって片山晋呉プロが特定のシャフトメーカーとブランドパートナー契約を結んだというニュースには驚いた一方で、その理由は何か? という興味がわきました。
今回検証するシャフトは「TRPX」の実際に片山プロが使用している「Fabulous Ni-Ti 40 Flash」です。

TRPXの「Fabulous Ni-Ti 40 Flash」
先ず目を引くのがシャフトデザイン。シャフト本体はダークグレー、そこにゴールドで彩った文字と個性的なシャフトです。
「Fabulous Ni-Ti 40 Flash」ラインナップ
「Fabulous Ni-Ti 40 Flash」のラインナップはR、SR、S、SX、Xの5フレックス、重量は全て48グラムです。シャフト振動数は以下の通りです。
フレックス | 振動数 |
R | 240CPM |
SR | 250CPM |
S | 260CPM |
SX | 270CPM |
X | 280CPM |
「Fabulous Ni-Ti 40 Flash」試打検証
ラインナップの中心にあるSフレックスから試してみましょう。40グラム台のSフレックスのシャフト振動数が260CPMというと数値は一般的なSフレックスとしては少し硬いイメージ。ところが、実際に打ってみると違いました。
実際にシャフトそのものの設計は硬めだと思いますが、不思議とそう感じません。手元側に粘り感を感じられますので切り返しがしやすく、スムーズに動きインパクトエリアまでストレスなくオートマチックに加速していきます。

振動数は多いがそこまで硬さを感じないシャフト
軽くて硬いシャフトながらしなり戻りが速く気持ちの良いフィーリングです。数多くのシャフトを打ってきましたが、このシャフトに似た製品はないと思います。「Fabulous Ni-Ti 40 Flash」の持つ独自のフィーリングを感じます。
シャフト先端部分はしっかりとした硬さがあり、インパクト時に当たり負けることなくボールを跳ね返すパワーがあります。レンジボールでもボールスピードは非常に速く、飛距離性能が高いのを感じられます。弾道は中弾道のフェードボールです。
フェードボールといってもボールが右に逃げていくようなフェードではなく、しっかりとボールがつかまって落ち際で右に切れるボールです。バックスピン量は極端に少ないようには感じませんが、ボールが吹け上がるようなこともありません。左へのミスを消して行けるプロや上級者が好む弾道がオートマチックに打てます。
「Fabulous Ni-Ti 40 Flash」のネーミングの中にも記されている「Ni-Ti」はニッケルチタン合金で代表的な形状記憶合金です。形状記憶合金は変形を受けても元の形状に戻る特性を持っています。メーカーのカタログにもNi-Ti超弾性線使用とあります。
そのNi-Ti超弾性線は0.1ミリの太さで、1.2ミリピッチでフルレングスに使用しているとのことです。当たり負けなくボールを跳ね返すパワーと独自のシャフトフィーリングはこの素材によるところが非常に大きいと思います。Sフレックスは「Fabulous Ni-Ti 40 Flash」の基準フレックスだと思います。
フレックス R
ヘッドスピードの速くないゴルファーにもシャフトが持つパワーを体感できるフレックスです。Rフレックスとしては切り返しのレスポンスが良く、しなり戻りもなめらかでスムーズにインパクトを迎えます。打ち出し角度はやや高めですが、ボールの吹け上がりもありません。ヘッドスピードが速くない方でも飛距離アップの要素が詰まっているフレックスです。
フレックス SR
Sフレックスに比べて手元側の剛性感はやや落としてあるので扱いやすさを感じられます。スムーズな切り返しからのしなり戻りも速くオートマチックにインパクトを迎え、しっかりとボールを弾き飛ばすことができます。インパクトは厚く、打点ブレも感じられず、Sフレックスよりもやや高めの弾道はしっかりとボールのつかまったパワーフェードボールです。一般的なパワーやヘッドスピードのゴルファーにオススメのフレックスです。
フレックス S
先に述べた通り「Fabulous Ni-Ti 40 Flash」の持つシャフト性能を体感出きる基準のフレックスで、シンプルにスウィングするだけでしなり戻りの速さとシャフトの持つパワーを感じられるでしょう。一切当たり負けのないインパクトは力強いパワーフェードボールを生み出し、飛距離アップを実感できると思います。このフレックスを基準に試して欲しいと思います。
フレックス SX
Sフレックスよりもやや硬めの手元側の剛性ですが、切り返し時に力む必要はありません。ヘッドスピードがやや速めのスウィンガータイプの方ならシャフトが自然にタメを作ってくれるので、スウィングするだけでシャフトがオートマチックにインパクトエリアまでヘッドを加速してくれます。シャフト先端部分の高い剛性で強烈なインパクトを実現できます。飛距離の出るパワーフェードボールが打てると思います。
フレックス X
シャフト振動数は280CPMと硬めの数値ですが、切り返しさえできれば一切捻れることなく素早いしなり戻りでインパクトまで一気に加速してくれます。シャフトの持つパワーで上がったヘッドスピードを当たり負けなくそのままボールにエネルギーとして伝えてくれます。シャフトが軽いのでパワーというより単純にスウィングスピードが速い方に良いでしょう。SXで物足りなさを感じる方は試して欲しいと思います。
オススメのヘッドマッチング
今回メーカーからお借りしたシャフトはテーラーメイド用のスリーブが装着されていましたので、所有している複数のテーラーメイドのヘッドに装着してテストしてみました。その中でも特に慣性モーメントの大きい「Qi35」コアモデルとのマッチングが非常に良い印象でした。

吉田がオススメするマッチングは標準の「Qi35」
復元力のあるTINI超弾性線を採用していることで当たり負けを一切感じることなく非常に力強いボールが簡単に打てるシャフトですので、アマチュアゴルファーは慣性モーメントが大きいモデルとマッチングさせるのがオススメです。
今回テストしていませんが人気のPING「440 MAX」などにも良いと思います。
「Fabulous Ni-Ti 40 Flash」総評
数多くあるゴルフシャフトの中でもパフォーマンスの高さはもちろんゴルフシャフトの可能性を感じられるシャフトでした。
片山晋呉プロの軽めで硬いシャフトが欲しいとのリクエストを形にしたシャフト「Fabulous Ni-Ti 40 Flash」は高性能素材を形にした高い技術力を持って仕上がりました。効率の良いシンプルなスウィングの片山晋呉プロの理想のイメージに仕上がった高性能ハイパフォーマンスシャフトでした。

40グラム台で飛距離性能を持ったパワーのあるシャフトはそうありません。適正フレックスを使用することでアマチュアゴルファーでもシンプルに気持ち良く振りきれてシャフトのパワーで効率良く飛距離を出せるシャフトだと思います。11万円(税込)という価格はドライバーシャフトとしては高価格になりますので、正直誰でも手にすることができる製品ではないと思いますが、新しいドライバーを1本買うよりもリシャフトすることで今よりも確実な飛距離アップが実現できる人であれば、十分価値のあるシャフトだと思います。
驚きの結果が出る方もいると思います。TRPXの直営店や取扱店の試打会等で是非体感して頂きたいと思います。