5月に行われたSKY RKBレディスで2年ぶりの優勝を果たし、賞金ランキングのトップを走る神谷そら(6月4日現在)。その2週後に行われたリゾートトラストレディスでツアー初優勝を遂げた稲垣那奈子。この2人のコーチを務めているのが、24年レッスン・オブ・ザ・イヤーの坂詰和久(ニックネームは、わきゅう)だ。契約選手たちが次々と活躍する、わきゅうコーチの秘密はどこにあるのか。本人に直撃した。
画像: 坂詰和久コーチ

坂詰和久コーチ

坂詰和久 

さかづめ・かずひさ。女子ツアーを中心にティーチング活動を行っているプロコーチ。TPIメソッドを基本としたレッスンを展開しており、現在、渡邉彩香、神谷そら、稲垣那奈子、宮田成華らのコーチを務める。2024年レッスン・オブ・ザ・イヤー。

画像: Sky RKBレディスで優勝した神谷そら。今年に入ってから坂詰和久コーチが教える(撮影/岡沢裕行)

Sky RKBレディスで優勝した神谷そら。今年に入ってから坂詰和久コーチが教える(撮影/岡沢裕行)

――神谷そらプロ、稲垣那奈子プロの優勝おめでとうございます。さらに、ブリヂストンレディスでは、ときどきアドバイスを送っている佐藤心結プロも優勝争いをしていましたよね。わきゅうコーチ、絶好調じゃないですか。

わきゅう(以下 わ): ありがとうございます。でも、ボクよりも選手たちを称えてあげてください。主役は選手ですから。ボクはひっそり、こっそりと陰でやっていきますので(笑)

――相変わらず目立つのが苦手のようですね。でも、これだけ結果が出ていると、どんなレッスンをしているのか気になります。今回の前編では、神谷プロの話を伺いたいのですが、いつ頃から教えているんですか?

: 最初に会ったのは24年の12月で、本格的に教え始めたのは今年(25年)に入ってからです。神谷プロは23年に2勝したけれど、24年は結果が出ていませんでしたからね。教えてほしいとオファーがあったんです。
 
その中で、オーバースウィングを直したいという話があったですが、そこには手をつけませんでした。そこを直すと、神谷プロのストロングポイントである飛距離が落ちそうだったので。プロもアマチュアも、みんな形を気にするのですが、形を直してスピードや反復性が落ちてしまったら元も子もありませんからね。
 
基本的に、ボクは形なんてどうでもいいと考えているんです。もちろん、それが原因でスウィングパス(軌道)やフェースの向きが不安定になっているとか、スピードが著しく失われているような場合は直すこともありますが、神谷プロの場合、元々スウィングの軌道がものすごくキレイだったので、直す必要はないと判断しました。

――では、どんなところを変えたのでしょう?

: まず、バックスウィングで左ひざが内側(右)に入るクセがあったので、そこを直しました。左ひざが内側に入ると、体が右にズレやすいですからね。で、左脚が安定したぶん、上半身のポジションや動きが決まるようになって、ショットがかなり落ち着いたんです。元々ダイナミックなスウィングには定評があったと思いますが、さらにカッコよくなったんじゃないでしょうか。
 
それと、元々は少し大きめのドローを打っていたんですが、スウィングパスがフェードに向いていると思ったので、球筋をフェードに変えました。フェード系のパスで、右を向いて無理にドローを打っていると、右のプッシュアウトや、左へのフックが出やすいですからね。ただ、フェードと言っても、ほぼストレートですけど。

――以前、週刊ゴルフダイジェストの連載で、坂詰コーチは「ナチュラルに振ったとき、インサイドアウトになる人はドロー、アウトサイドインになる人はフェードを持ち球にするといい」という話をしていましたが、神谷プロはアウトサイドイン軌道なのですか?

: アウトサイドインと言っても、ほんのわずかですよ。だから、大きく曲がるフェードではなく、見た目にはほぼストレートに飛んでいくフェードが打てるんです。

――なるほど。では、今回の神谷プロの優勝は、どこがよかったと思いますか?

: 試合中に考えることが少なくなって、情報量をコントロールできたのがよかったんじゃないでしょうか。昨年は結果が出ていなかったので、スウィングやショットのことを考えすぎていたと思うんです。でも、今は球が曲がる原因も、自分なりの修正の仕方もわかって、余計なことを考えなくてよくなりましたからね。
 
球が曲がったときに原因がわからないと、いろいろ考えて直そうとしますよね。でも、それだと目の前の一打に集中できないし、同じミスを繰り返したり、余計に曲がったりしちゃうわけです。それがなくなったのは大きいと思います。

――具体的には、どんな指導をしたんですか?

: フェース管理の仕方を教えました。先ほど、神谷プロはスウィングパスがキレイだという話をしましたが、極端な言い方をすると、スウィングパスがキレイな人は、インパクトのフェース向きを管理することだけを考えればいいんです。球が右に行ったらフェースが開いた。左に行ったらフェースが閉じた。だから、自分なりにそこをコントロールする方法を覚えておくのです。神谷プロは、トラックマンを持ち歩いて、常にフェースの向きをチェックしているんですよ。
 
ボクは、プロを教えるときも、アマチュアを教えるときも、必ずその人のミスの傾向と、その修正法を指導するようにしています。そこが身につけば、ボクがそばにいなくても、自分で修正できるようになりますからね。

――では、これからも楽しみですね。

: そうですね。まぁ、今まで目標の右を向いてドローを打っていたので、左を向いてフェードを打つことにまだ違和感があるようですが、それも徐々に修正されていくと思います。神谷プロの場合、元々ショートゲームが上手いので大崩れしないし、爆発力もあるので、自信を持ってフェードが打てるようになったら面白いと思います。なにより、彼女は人の話を聞く能力が高いし、ひとつのことをずっとやり続けることができる人なので、もっともっと上手くなるんじゃないでしょうか。

――ありがとうございました。後編では、稲垣那奈子プロの話を伺いたいと思います。

: わかりました。よろしくお願い致します。

Sky RKBレディスで2年ぶりの優勝

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