運命の巡りあわせによってスポーツ史に偉業をもたらすことがある。甲子園を沸かせたPL学園の桑田真澄、清原和博の「KKコンビ」が活躍した同じ頃、日体荏原高校に3人のジュニアゴルファーが集まった。伊澤利光、丸山茂樹、そして「今回の連載」の主人公、西川哲である。全国高校団体優勝の主軸として活躍し、日体荏原黄金時代を築いたメンバーのひとり。個人でも関東高校3連覇、日本ジュニアのタイトルも手中に収め、プロ入り後もツアー3勝を挙げた。伊澤、丸山だけでなく、多くのプロゴルファーが一目置く「西川哲のゴルフ」。これまで多くを語らなかった西川だが、その内容は意外なものだった。

小さなところより大きなところに問題がある

「レッスンに来られた方に、『テークバックでクラブを真っすぐに引けない』と相談されたことがあります。その方のスウィングを一通り見た時に、たしかにテークバックで体から遠ざかる方向にクラブを引いていました。
 
この場合もアドレスが左を向いている状態のまま、スウィングをしていたのでカット軌道で球を打っていたんです。だから右方向に向いてもらい、ターゲットに対して真っすぐの状態を覚えてもらい、いつも通りにクラブを引いてもらったらスクエアになったんです」(西川・以下同)

画像: 左に向いていたアドレスを少し右にすることで、ターゲットに対して正しいアドレスができる。そして体の外に上がっていたテークバックが真っすぐになる

左に向いていたアドレスを少し右にすることで、ターゲットに対して正しいアドレスができる。そして体の外に上がっていたテークバックが真っすぐになる

テークバックに問題があったわけではなく、アドレスの向きが間違っていたために、誤った方向にクラブを引いていたわけだ。このように自分が原因だと思っている箇所に、問題があるとは限らないケースがあるという。

「紹介した例でいえば左に向いたアドレスでクラブを引いていたので、アウトに上げてカット軌道で球を打っていました。テークバックが真っすぐに引けないからといって、もっとインに引こうとすれば、今度は体がきつくてクラブが上がっていきません。
 
レッスンをするうえで気をつけていることですが、ひとつのミスに対して色んな原因を考えて、全体を見て直すことを考えています」

この考え方はアドレスだけでなく「体全体の使い方」にも当てはまる。体を回すことを考えるあまり、下半身と上半身を同時に回してしまうことがアマチュアには多い。

「切り返しと同時に腰と一緒に左肩も回してしまうので、捻れの力がつかないので飛びませんし、クラブが外から入ってしまいスライスになってしまいます」

体を動かす順番を理解することがスウィング構築において大切なことだと言える。正しい順番で体を使うことを理解し、身に付ければ飛距離と安定したスウィングが完成する。その際に大切なことは「真っすぐに飛ばそう」、「曲げないように当てよう」という考えを一度捨てることだと言う。

「打球の結果は後にして、まずは体を正しく扱うことが先だと考えています。下半身をメインにクラブを動かし、切り返しでの上半身を我慢するといったことをできるようになれば、打球の方向性や飛距離は勝手についてきます」

下半身を使ってそれに合わせて上半身を使うのがスウィングの肝になる。そして「アマチュアを見ていると手首のタメがほどけるのが早い」と西川は言う。その原因は次回詳しく紐解いてもらう。

つづく

・撮影協力/バーディー赤坂24

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