
今季3勝、通算3勝目(撮影/有原裕晶)
「楽しもうということだけをテーマにしていた」

左手を高々と突き上げて観客席に感謝の気持ちを伝えた(撮影/有原裕晶)
ウィニングパットはちょっぴりドキドキだった。最終18番、佐久間は下り80センチのスライスラインをカップの右半分から沈めると、左手を胸に当ててほっとしたように息を吐いた。沸き上がる大歓声。一瞬の間を置いて今度はその左手を高々と突き上げて観客席に感謝の気持ちを伝えた。
「今週は先週から調子がよくなかったので、のんびりやろう、楽しもうということだけをテーマにしていて、楽しんだつもりだったんですけど、長かったなと思いました。(優勝の瞬間)涙は流れなかったです」
河本結との1打差を追ってスタートしたが、いきなり2番でつまずいた。距離がピンまで実質239ヤードと短く、選手に1オン狙いを誘う設定。佐久間は3番ウッドで打ち、いったんグリーンをとらえたが、傾斜で右の池に転がり落ちてしまった。このホールをボギーとし、前半は2バーディ、2ボギーの36にとどまった。
反撃に転じたのは後半11番パー4。10メートルを沈めてバーディ。同組の菅沼がこのホールをボギーとし首位に並んだ。勝負を決めたのは15番パー3。177ヤードを5番ユーティリティで5メートルにつけてバーディを奪い単独首位に浮上し、そのまま逃げ切った。
「2番で池に入れてしまったので、キャディさんとじわじわ上げていこうと話して、途中3打差くらい離されたんですけど、自分が自分のプレーに集中できればチャンスはあると思っていました。焦らずにプレーできたのがよかったと思います」
国内ツアー最高額の賞金5400万円を獲得

国内ツアー最高額の賞金5400万円を獲得(撮影/有原裕晶)
今季は4月のKKT杯バンテリンレディスで自身初優勝を挙げると、5月のブリヂストンレディスで2勝目をマーク。今週は過去2勝の経験を生かした。
「ボギーを打っても次のホールでバーディがきたというのも、前の自分だったらボギーを打ったら、差が開いちゃったと思うんですけど、そこをしっかり自分の中でセーブして、次のホールで取り返すと気持ちを切り替えられた。前の2勝を通じて少しずつ落ち着いてプレーができているので、そこが大きな変化かなと思います」
今大会の優勝で国内ツアー最高額の賞金5400万円を獲得し、年間獲得賞金が初の1億円(1億1602万8200円)を、生涯獲得賞金が3億円(3億1078万9287円)を突破した。
「これを勝てば去年の賞金(1億577万8357円)を超えると分かっていました。やっぱり去年の成績を超えるというのがひとつのテーマでもあったので、そこは超えられてよかったなと思います。3億円は今初めて聞いてそんなにいっているんだと思ったんですけど、もっと稼ぎたいです」
優勝の原動力の一つにはパッティングの向上を挙げた。パッティングコーチの橋本真和氏の指導を仰いでいるそうで「今シーズンはプレースタイルが変わったと思っていて、前はショットメーカーといわれたんですけど、今シーズンはパッティングが調子いいおかげでバーディパットを決め切れているので(優勝の)チャンスが多くなってきていると思います」と話した。
初優勝から短期間で3勝をマークしたことで、今季描いていた目標も上方修正される。
「1回勝てたことで自分自身に余裕が出てきた。去年までだったらこのチャンスを生かせなかったら勝てないと自分を追い込んでプレーしていたんですけど、今日なんかは自分のプレーをすることにフォーカスできていたので、そこが初優勝してから気持ち的に変化した。それが結果的にいい方向に変化しているんじゃないかと思います。(今季は)5勝はいきたいなと思います。年間女王になるには5勝は必要だと思っています」
ジャンボ尾崎の薫陶を受けた女子プロゴルファー、笹生優花、西郷真央、そして原英莉花がトップクラスの選手に成長している。佐久間も先輩たちの背中を追い、そして追い越す。