
「資生堂・JALレディスオープン」で5年ぶりの優勝を飾った永峰咲希(撮影/姉崎正)
プレーオフで木戸愛との激闘を制した

プレーオフで木戸愛との激闘を制した(撮影/姉崎正)
プレーオフの3ホール目、永峰は30センチのウィニングパットを沈めると、右手でキャップのつばを押さえ、大ギャラリーに向かってペコリとおじぎをした。木戸との大激戦にようやく終止符。最初はほっとしたような笑みを浮かべ、グリーンサイドで待ち受けたプロテスト合格同期生の堀琴音、仲がいい安田彩乃からハグで祝福を受けた途端、涙がほおを伝って流れ落ちた。
優勝スピーチでは思いの丈を言葉にした。
「この4日間暑さで何度も倒れそうになる瞬間もあったんですけど、たくさんの方の応援のおかげで前を向いて4日間頑張ることができました。30歳になってやっと1勝できました。まだまだ若い子たちに負けないように前を向いて頑張っていきたいと思います」
30度を超える酷暑の中のサバイバル戦を勝ち切った。正規の18ホールは木戸と並ぶ通算7アンダー首位からスタート。16番パー5で7メートルのフックラインを読み切ってバーディを奪い、単独首位に立ったが、18番で木戸が12メートルのバーディパットを決めたことで、決着はプレーオフへと持ち越された。
「(正規の18番は木戸のボールが)途中きれいに転がっていたので入りそうだなと思って見ていたんですけど、入った瞬間のギャラリーの方の歓声が体の中に響いて、あれで目が覚めてアドレナリンも出た。そこは自分も驚きですね。人の歓声で人間の体はモチベーションが上がるんだなと」
プレーオフを経験するのは初優勝した2018年フジサンケイレディス以来2度目。1ホール目は第2打をグリーン奥に外し、アプローチがピンを2.5メートルオーバーしたが、これを沈めて2ホール目へ進んだ。2ホール目もパーで分け、カップ位置がグリーン奥に切り替わった3ホール目で勝負を決めた。
「もう負けたかなと思う瞬間が1日で何度もあった。(最後に)パーパットが入った瞬間は本当によかったなというのと、終わったなという気持ちのほうが強かったんで、段々そのあと喜びが増してきたという感じです」
メジャーチャンピオンの肩書でプレッシャーがあった

国内メジャー日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯以来5年ぶり復活V(撮影/姉崎正)
優勝は2020年の国内メジャー日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯以来5年ぶり。復活への道のりは決して平たんではなかった。2022年には賞金ランク60位にとどまり、それまで6年間保持したシードを失うなど苦しい時期に耐えただけに、今大会は起死回生の優勝となった。
「メジャーを勝って結果をもう1勝と思っていたので、そことのギャップ、正直メジャーを勝ったときも、この実力で勝っちゃったというのはおかしいですけど、まだまだなのにメジャーチャンピオンの肩書をもらって、そのプレッシャーもあったけど、この5年間で技術、精神力をちょっとずつ成長してきた結果の優勝なのかと思います」
雌伏のときを乗り越えての復活V。今大会は結婚後初の優勝でもあった。4月28日で30歳の節目を迎えたが、プロゴルファーとしての心身のピークはまだ先だ。
「やっぱり30かって今年なったときは思ったけど、でも、今年が一番状態も調子もいい。同年代の選手も先輩たちも頑張っていて、やっぱり追いつきたいし、複数回優勝したこともないので、若い子たちは知識も技術もあるけど、そういうところを経験値でカバーできていけるようになれたらいいなと思います。このあとも2勝目3勝目4勝目を目指して頑張りたいです」
メジャーチャンピオンと呼ばれるにふさわしいゴルフで今大会を制した永峰が、これからも若手の壁になり手本となる。