運命の巡りあわせによってスポーツ史に偉業をもたらすことがある。甲子園を沸かせたPL学園の桑田真澄、清原和博の「KKコンビ」が活躍した同じ頃、日体荏原高校に3人のジュニアゴルファーが集まった。伊澤利光、丸山茂樹、そして「今回の連載」の主人公、西川哲である。全国高校団体優勝の主軸として活躍し、日体荏原黄金時代を築いたメンバーのひとり。個人でも関東高校3連覇、日本ジュニアのタイトルも手中に収め、プロ入り後もツアー3勝を挙げた。伊澤、丸山だけでなく、多くのプロゴルファーが一目置く「西川哲のゴルフ」。これまで多くを語らなかった西川だが、その内容は意外なものだった。

“ボギーを打たないゴルフ”は誉め言葉じゃない

「あの時の哲っちゃんのゴルフは無鉄砲でしたよ。ショットも曲がらないことが多かったからミスした時のことを考えていなかったと思います。だからボギーが出ることがありました。でもその分だけバーディを取る、取りに行く姿勢がありましたから」(渡辺)

西川が「一番ゴルフが上手かった時期」と振り返るようにショットやアプローチ、そしてパットも思いのままだった。成功が多かったからこそミスをした時の対応で後手を踏み、スコアを取りこぼすことに繋がっていた。しかしこの失敗に臆することなく「昨日失敗したホールだから今日は取り返してやろう」といったようにアグレッシブな姿勢でゴルフに向き合った。失敗にへこたれずバーディをもぎ取りに行く西川少年の姿に渡辺は惹かれた。この姿勢はプロアマ関係なく大切なメンタリティだという。

画像: 学生時代の西川のように「ボギーを恐れずバーディを狙うアグレッシブな姿勢はプロ、アマ関係なく大切な心構えだ」という

学生時代の西川のように「ボギーを恐れずバーディを狙うアグレッシブな姿勢はプロ、アマ関係なく大切な心構えだ」という

「ボギーを打たないゴルフを目指すのではなくて、どれだけバーディを取りに行くかという姿勢は大切だと思います」と西川が言えば、「プロゴルファーにとってボギーを打たないゴルフって誉め言葉じゃないんですよ。いろんなピンチがあった中でボギーフリーだったなら価値はあります。同じノーボギーでも意味が違うんです」と渡辺も同調した。

この失敗を恐れることなく攻めることはこれからゴルフを始める、プロを目指すこどもたちに伝えたいと2人は話す。

「失敗をしても責めることなく、どんどん前向きにアグレッシブにこども自身がやりたいゴルフの形を応援してあげることで一人一人の個性が伸びるんじゃないかって考えています。本人たちがこうしたいと思っていることにブレーキをかけずに背中を押してやるのが大人の役割だと思うんです」(西川・渡辺)

決してリスクを減らすマネジメントを否定しているわけではない。一方で唯一無二の飛ばせる力があったジャンボは狭いホールでもドライバーを握っていたし、逆にフェアウェイに運びセカンドから鋭いアイアンショットでピンを狙っていく青木のように、それぞれの個性を生かしたゴルフ力でタイトルを勝ち取っていた。このような個性を育むためにも、子供達がしたいプレースタイルを尊重し、精神的にも前を向けるたくましいゴルファーに育つと考えている。

つづく

・取材協力/バーディ赤坂24

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