今週北アイルランドのロイヤルポートラッシュで開幕する第153回全英オープンでも世界ランク1位のスコッティ・シェフラーは間違いなく本命中の本命だ。3月末以降10試合で3勝、トップ8を外したことがない安定ぶり。それだけ活躍しながらプレーぶりもコメントも面白みがなく退屈なチャンピオンと呼ばれている。しかし全英直前の記者会見でシェフラーが吐露した本音に全米メディアが騒然とした。

会見でこれまでにもっとも長くなにかを祝ったことはあるか? という質問を受けシェフラーは訥々と語り始めた。

「優勝して得られる高揚感はほんの数分しか続きません。地元(テキサス、ダラス)でバイロン・ネルソン(CJカップ)に優勝するために人生を懸けて努力してきたといっても過言ではありません」

「そして実際に優勝して家族で抱き合って喜びを分かち合った。本当に素晴らしい瞬間でした。でも高揚感は数分しか続かない。すぐに今夜はなにを食べようか? って思うんです」

画像: 全英オープン直前の記者会見で本音を語ったシェフラー(写真/Getty Images)

全英オープン直前の記者会見で本音を語ったシェフラー(写真/Getty Images)

「なにがあっても人生は続きます。ゴルフというスポーツでなにかを成し遂げるのは素晴らしい。考えただけで涙が出てきます。だって人生を懸けて努力をしてきたんだから。ゴルフが上達して優勝して、ああいう達成感を味わえて夢を叶えたと思えます」

そして彼は爆弾発言をする。

「でも結局僕は次世代のゴルファーに刺激を与えるためにここにいるわけじゃない。誰かを世界最高の選手にすることにどんな意味があるというのだろう?」

ゴルフというゲームを次世代に繋ぎたい。若い世代にインスピレーションを与えたい、というのがプロアスリートの教義だ。しかしシェフラーはそれに反するセリフを口にしたのだ。

さらに彼は頂点に立つことは「充実した人生ではない」とまでいい切った。

「達成感は得られるけれど心の底から満たされるわけではない。満たされるはずだと思っていたものに辿りついた途端、いったいなんの意味があるんだ? と思ってしまう」

「突然世界ランク1位になって思ったのはそういうこと。なんの意味があるんだろう、と。それなのにどうしてこんなにトーナメントに勝ちたいのはなぜなのか? どうしてこんなに全英オープンに勝ちたいんだろう?」

「僕は毎日その問いと葛藤しています。でもその答えはわからない。2分間は最高の気分になるからね」

「プロスポーツをすることは本当に奇妙なことなんだ。僕らは儚いものに一生懸命努力する。勝利の喜びはそんなに長く続かないのに」

そして彼が導き出した結論は「ここは満足感を求める場所ではなく、この仕事ができることに深く感謝する場所だということ」。

賞金だけで8800万ドル(約130億円)を稼ぎ28歳にして信じられないほどの成功を収めた男の葛藤。それを正直に打ち明けたシェフラーはスウィングマシーンではなく血も涙もある人間だった。

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