スウィング動画をAIによる3D解析技術でデータ化することができる、コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」。このアプリを活用しているゴルフコーチ・北野達郎に、25年の女子メジャー最終戦「AIG女子オープン」で初優勝した山下美夢有のドライバースウィングを解説してもらった。
画像: AIG女子オープンでメジャー&LPGA初優勝を飾った山下美夢有のドライバースウィング後方、インパクト付近(Photo by Richard Heathcote/R&A/R&A via Getty Images)

AIG女子オープンでメジャー&LPGA初優勝を飾った山下美夢有のドライバースウィング後方、インパクト付近(Photo by Richard Heathcote/R&A/R&A via Getty Images)

こんにちは。SPORTSBOX AI 日本アンバサダーの北野達郎です。今回は海外女子メジャーの「AIG女子オープン」で、日本人6人目となる女子メジャー優勝という大快挙を成し遂げた山下美夢有選手(以下、山下選手)の後方からのドライバースウィングをスポーツボックスAIのデータとともに解説させて頂きます。山下選手のスウィングは、下記の2点が主な特徴です。

①トップで胸の回転と手の奥行きが深い
②切り返しで両手が前に出ず、胸と骨盤の捻転差をキープしている

また、後半ではアマチュアと山下選手を比較して、切り返しでクラブをインサイドから下ろすためのポイントや練習ドリルについても解説しています。それでは早速チェックしてみましょう!

トップで胸の回転と手の奥行きが深い

まずはトップを見てみましょう。山下選手は身長150cmと小柄であるため、スウィングがフラットなことが特徴で持ち球はドローボールです。フラットなスウィングタイプであることを裏付けるデータがあります。「Chest Sway」は胸が左右にどれだけ回転したか? の角度を表します(マイナスは右、プラスは左)。そして「Hand Thrust」はアドレスの位置から、両手が前後にどれだけ動いたか? の距離を表します(マイナスはアドレスより背中側、プラスはアドレスよりボール側)。山下選手のトップは胸がマイナス101度、両手の奥行きがマイナス46.6cmです。

画像: 画像①トップ/小柄な山下選手はトップで胸の回転と両手の奥行きが深い

画像①トップ/小柄な山下選手はトップで胸の回転と両手の奥行きが深い

スポーツボックスAIが独自で調査した、トップのポジションでの両手の奥行きの深さのLPGAツアーレンジは、マイナス34.0cm~マイナス46.7cmですので、山下選手はLPGAツアープレーヤーの中でも両手の奥行きが深いタイプであることがわかります。また胸の回転もマイナス101度と深く回っており、「胸の回転と手の奥行きが深い」タイプは自然とトップがフラットになるので、クラブをインサイドから下ろしやすく、ドローボールが打ちやすいのが特徴です。ちなみに男子プロの代表的な例ですとローリー・マキロイもこのタイプです。

両手が前に出ずインからクラブを下ろすポイントは、胸と骨盤の捻転差のキープ

続いて、切り返しをアマチュアと山下選手の3Dアバターで比較してみましょう。P5(ダウンスウィングで左腕が地面と平行のポジション)で写真左がアマチュア、写真右が山下選手です。まず、先ほど取り上げたデータから両手の前後の動き(Hand Thrust)を比較すると、左のアマチュアがプラス5.0cmとすでに両手がかなりボール側に寄っているのに対して、右の山下選手はマイナス33.0cmと両手がまだ前に出ず背中側に保たれているのがわかります。

画像: 画像②アマチュア(左)と山下選手(右)の3Dアバター比較/両手の位置と、胸と骨盤の捻転差に大きな違いがある

画像②アマチュア(左)と山下選手(右)の3Dアバター比較/両手の位置と、胸と骨盤の捻転差に大きな違いがある

P5(ダウンスウィングで左腕が地面と平行のポジション)で両手が前に出るアマチュアと、両手が前に出ない山下選手の大きな違いは「X Factor」(胸と骨盤の捻転差)にあります。左のアマチュアは骨盤と胸がともに左に回転していて、胸と骨盤の捻転差はマイナス30度と少なくなっていますが、右の山下選手は骨盤に対して胸はまだ開いていないので、胸と骨盤の捻転差がマイナス43度と、捻転差をキープしているのがわかります。もし、アウトサイドイン軌道からの引っかけやスライスにお悩みのアマチュアの方は、切り返しから手が前に出ている可能性があるので、山下選手のように切り返しで胸を開かずに両手を下ろすように心がけると良いでしょう。

クラブを持たずに家でもできる、切り返しの「壁ドリル」

最後に山下選手の切り返しを参考に、家でもできる練習ドリルを1つご紹介します。体の背後に壁がある位置でトップを作り、そこから右ひじ~右手が壁についたまま切り返して両手を下ろします。この時に胸は左に開かずに右に向けたまま、右足の方向に両手を下ろしましょう。

画像: 画像③切り返しの練習ドリル/体の背後に壁がある位置でトップを作り、そこから右手を壁につけたまま切り返す。胸が開くと右手も離れる

画像③切り返しの練習ドリル/体の背後に壁がある位置でトップを作り、そこから右手を壁につけたまま切り返す。胸が開くと右手も離れる

このドリルをした時に胸がすぐに左に開くと、右ひじや右手が壁から離れて前に出てしまいます。こうなるとアウトサイドイン軌道による引っかけやスライスが出る可能性が高くなります。この「壁ドリル」はクラブを持たずに家でも手軽にできる練習ドリルですのでお勧めです。もし体が硬くて、壁まで両手が届きにくい方は、右足を後方に下げてクローズスタンスにして行うと良いでしょう。

今回は山下美夢有選手のドライバースウィングを解説させて頂きました。8月2日に24歳の誕生日を迎えて、その翌日にAIG女子オープン優勝というこれ以上ないハッピーバースデーとなった山下選手をはじめ、2位タイに勝みなみ選手、4位タイに竹田麗央選手と、日本人選手の活躍が光った今大会でした! 余談ですが私も大阪府の出身で、山下選手の地元・寝屋川市は高校の通学時に毎日自転車で通っていました。そんな私の地元近くから生まれたメジャーチャンピオンは、ホンマに大阪と日本の誇りです!!

▶次ページでは「まったく曲がらない! 山下美夢有のドライバー後方スウィングを数値とともに紹介!【AIG女子オープン公式インスタより】

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