「団体4冠、そしてソニーオープンに出たい」

ウォーターシャワーを浴びる佐藤快斗(撮影/有原裕晶)
7月初旬に行われた日本アマの優勝会見での第一声で「苦しかった」と答えた佐藤。3日目に62を出し、6打差首位で最終日を迎えるも、スーパー高校生、長﨑大星たちの追い上げでひと息つく間もない展開に。しかし結果は、「意識しながらのプレーではあったけど、緊張はなかったです」という佐藤が2打差で逃げ切った。これまで“日本”タイトルを何度も逃してきた。悔しい思いをしてきたが、毎回新しい課題が見つかり、1つ1つ克服してきた。
「1つ1つのショットのレベルも上がり、メンタル面も強くなれた。メンタルトレーナーのニール・スミスさんは『未来のことを考えると緊張するし、過去のことを考えると不安にもなる。今、自分ができることを考えるほうがいい』と言っていたし、大学の座禅の授業でも『今に集中することが大事』と、同じようなことを言っていて。これが自分の心に響きました」
信頼できる人の話を聞く耳を持っていることも佐藤の強みかもしれない。最終日前日には、ナショナルチームのメンタルコーチ・菅生貴之氏や高校ゴルフ部のコーチと電話で話をしたという。

アプローチとメンタルの成長が勝利につながった。「スコアを気にすることは未来にいくこと。今のことをしようと気持ちを区切るんです」
「初めての経験だったので、どういう心持ちで行くかちょっと話を聞こうと。菅生さんは『1打1打集中してやることが大事』と、高校のコーチとは、『人のスコアは気にせず4日間60台を出すことを目指す』という話をしました」
今回の優勝でも、ゴルフに向き合う姿勢に変わりはない。ただ、「この優勝で勝ち切れたという思いはある」。「自信」を得たことはさらなる変化につながる。
佐藤快斗は、ティーチングプロとなった兄・翔太の影響で、小4から本格的にゴルフを始めた。兄と同じ練習場のスクールに通い、その後は基本、独学だった。小学生時代はサッカーと水泳もやっていた。「ゴルフよりサッカーのほうが楽しかった。今はちゃんとゴルフが好きです(笑)」。
埼玉栄に入学した中1くらいからプロになろうと思い始めた。
「試合に出るようになり、『もっとやらないと』と思うようになりました。スコアも出始めて楽しくもなって。高校卒業後すぐプロになろうと考えたけど、福祉の先輩、岡田晃平さんとラウンドする機会があり『まだまだ自分は足りない』と思い知らされた。練習環境もよかったので大学に進学しました」
大学入学後も、先輩たちの話をどんどん吸収し成長していく。日本ゴルフ協会のナショナルチームに入り、学んだことも多い。海外遠征で周りの選手を見てノートを書く習慣を取り入れた。
「今日の振り返りと明日やるべきことをノートに書いて読み返す。このミスのときはこうだったと頭に入っていると準備に役立ちます」
トレーニング方法も教わり、週3日程度、自身で取り組む。
「フィジカルはだいぶ大きくなってヘッドスピードも49m/sから51m/sに。僕がこの体(身長172cm、体重70㎏)で飛ぶのはパワーかな。たとえばスクワットは120キロのセットを組みます。重量は体の大きな選手と変わりません」
ショートゲームの引き出しも増えた。
「いろいろなドリルや打ち方を教わりました。パットは練習器具を使うようになったし、アプローチはインサイドアウト軌道になっていたのをオンプレーンにすることで柔らかい球が出るようになり、そこから高い球や低い球も打てるようになりました」
直近の目標は日本学生での優勝だが、その後、日本オープンもあるし、来年初めのソニーオープンにも出たい。
「日本アマランク1位だったら出られます。PGAの大会なので。松山(英樹)選手が優勝したプレーオフのセカンドショットをよく覚えています」
将来の目標はもちろんPGAツアーだ。
「きちんと日本でお金を稼いでから行きたい。残りの大学生活では団体戦で4冠を取りたいんです」

現在の課題はロングパットの距離感だという佐藤。休日は寝る、フットサルや野球をする、買い物、野球を見る。「ドジャースの山本由伸が好き。ひたむきに準備して結果を出しています」。好きな食べ物はラーメン、仙台の牛タンだ
どんなプロになりたいかのか。
「カッコいいと思うのは、ドライバーで300Y以上飛ばして、力強いゴルフをするプロですね」
具体的にはスウィングのバランスが崩れず、最後までしっかり振り切って飛ばすローリー・マキロイを挙げる。しかし、佐藤はスコッティ・シェフラータイプに見える。
「そうですか。シェフラーもめちゃくちゃカッコいい。ショートゲームが素晴らしく、淡々と最終日にスコアを伸ばしたり、当たり前に逆転したり」
仲間には「さとかい」と呼ばれる。名前の「快」には「快く生きる」という意味があるそうだ。
「練習もコツコツとやることも好き。一人でやることも嫌いではないのでゴルフに向いていると思います。それに僕、人の話も、大事なことしか覚えてないんですよ」
自分で選ぶ“快いゴルフ”で、大きく化けそうな19歳である。
PHOTO/ Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki、Yasuo Masuda
※週刊ゴルフダイジェスト9月2日号「勝利をステップにして」より
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7月初旬に開催された「日本アマチュアゴルフ選手権」にて通算15アンダーで逃げ切った佐藤快斗が大会の振り返りやゴルフ対しての向き合い方を話してくれた。日本女子アマチュアを優勝した中澤瑠来のインタビューは「週刊ゴルフダイジェスト」9月2日号、Myゴルフダイジェストにて掲載中!