
●解説:中井学プロ
パットで悩み抜き、さまざまなパターを手に入れて試しつつ、パット巧者の道具や打ち方をウォッチする。
グリーンが改良されてストロークが変わった
今シーズンのメジャーチャンピオンが手にしたパターは、全員がマレット型。長年にわたりパターを研究する中井学プロは、この現象を分析する。
【解説あり】画像をクリックしてパター詳細をチェック!
「近年はグリーンの芝の品種改良などによって、スピードが速くなり表面が硬くキレイになりました。スパイク跡やピッチマークによる、転がりへの影響が少なくなっています。そして、グリーンが速くなると傾斜が強いところにピンを切れなくなり、わりとフラットなところにピンが立つように。そういうグリーンでは、目標へスクエアに構えて、真っすぐのストロークで直線的に転がすほうが有利になります。デザインの自由度が高くアライメントが取りやすいマレット型のほうが、プレッシャーがかかる状況でも真っすぐ打ちやすいのだと思います」
アーノルド・パーマーなんかの時代はパチンと打っていましたが……

A・パーマー辺りの時代はタップ式のストロークが主流だった
パーマーなど“ビッグ3”の時代は、グリーンが重かったり、表面に細かい凹凸があったので、リストを使ったタップ式のストロークで強い球を転がしていた。
同時に、マレット型が改良されてきたことも後押しした。
「大型&深重心で寛容性が高いマレットだけではなく、今は小ぶりなサイズや重心が浅めのヘッドにショートスラントネックを挿したりして、操作しやすくプロが扱いやすいマレットが増えました。かつてブレード型を使ってきたプロがマレット型にスイッチできたことも大きいですね」
【現在】
スクエアにセットして真っすぐ大きなストローク

真っすぐ大きなストロークにはマレットがあう
グリーンが速く表面がキレイになった今は、真っすぐ大きなストロークで、直線的に転がすのが適している
【以前】
ショートストロークでつかまえる動き

タイガーのような打ち方は主流ではなくなった?
ブレード型で時代を席巻したタイガー。フェースを開閉して球をつかまえ、小さいストロークで強い球足を求めた
なぜトップ選手はマレット型を選ぶのか?
「アライメントがズレにくい。これもマレットの強みです」

アライメントをより正確に取りたい方にとってオススメ
「トッププロは芯で打てるので、寛容性はそれほど必要ない。アライメントをより正確に取りたいプロにとって、マレットのほうが目標へセットしやすいんです」
「大きなフェース開閉は必要ない。シェフラーはクローグリップに」

「マレット型の『スパイダー』は、開閉が少ないヘッドです。その特性に合わせて、シェフラーはローテーションが抑えられるクローグリップにしましたね」
2018 ~ 22年のメジャー優勝パターはこうだ “●”はマレット型のモデル
【マスターズ】
・2022年 スコッティ・シェフラー
∟スコッティキャメロン タイムレス ツアープロト
・2021年 松山英樹
∟スコッティキャメロン ニューポート2 ツアープロト
・2020年 ダスティン・ジョンソン
∟●テーラーメイド スパイダー ツアー ブラック Itsy Bitsy
・2019年 タイガー・ウッズ
∟スコッティキャメロンニューポートGSS
・2018年 パトリック・リード
∟オデッセイ・ホワイト・ホットPRO #3
【全米プロ】
・2022年 ジャスティン・トーマス
∟●スコッティキャメロン T・5 プロト
・2021年 フィル・ミケルソン
∟オデッセイ ミルドブレードPM
・2020年 コリン・モリカワ
∟テーラーメイド TPコレクションSOTOプロト
・2019年 ブルックス・ケプカ
∟スコッティキャメロン T10セレクト ニューポート2
・2018年 ブルックス・ケプカ
∟スコッティキャメロン T10セレクト ニューポート2
【全米オープン】
・2022年 マシュー・フィッツパトリック
∟ベティナルディ BB1F DASS プロト
・2021年 ジョン・ラーム
∟●オデッセイ ホワイト・ホット OG ROSSIE S
・2020年 ブライソン・デシャンボー
∟SIKプロト
・2019年 ゲーリー・ウッドランド
∟スコッティキャメロン ニューポート プロト
・2018年 ブルックス・ケプカ
∟スコッティキャメロン T10セレクト ニューポート2
【全英オープン】
・2022年 キャメロン・スミス
∟スコッティキャメロン 009M プロト
・2021年 コリン・モリカワ
∟テーラーメイド TPコレクション JUNO
・2020年 コロナの影響で中止
・2019年 シェーン・ローリー
∟オデッセイ EXO 2ボール
・2018年 フランチェスコ・モリナリ
∟ベティナルディ BB-0 DASS プロト
取材・文/新井田聡
写真/有原裕晶、岩本芳弘、姉﨑正、Getty Images
イラスト/コーチはじめ
協力/越谷ゴルフリンクスプライベートスタジオ
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月刊ゴルフダイジェスト10月号では、トップ選手がこぞって使用するマレット型パターの魅力を調査し、それぞれの使用パター詳細や打ち方の違いなどを解説している。全編ではマレット型50年の歴史を振り返るとともに、現在国内女子ツアーで活躍している15人のプロにマレットのこだわりを聞いている。続きは月刊ゴルフダイジェスト10月号、Myゴルフダイジェストにて掲載中!