ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、国内男子ツアー「ISPS HANDAシリーズ」2試合の優勝争いについて語ってもらった。
画像: 「誰が一番強いんだ〜」で優勝の小平智。「(比嘉と小平の)最終18番ホールのシーンには、海外でつらい思いを味わい苦労して、そこからもう一度這い上がった者だけが醸し出すオーラみたいなものがありました」(佐藤プロ)

「誰が一番強いんだ〜」で優勝の小平智。「(比嘉と小平の)最終18番ホールのシーンには、海外でつらい思いを味わい苦労して、そこからもう一度這い上がった者だけが醸し出すオーラみたいなものがありました」(佐藤プロ)

2週連続で北海道で開催されたISPS HANDAシリーズ。御前水GCでの「どれだけバーディ〜」では比嘉一貴、ブルックスCCでの「誰が一番強いんだ〜」では小平智と、ともに海外で苦しい時期を経た選手の優勝でした。両試合ともボクは上がり18番での解説でしたが、優勝を決めたシーンだけでも、ともに感動的でした。 

画像: 「どれだけバーディ〜」で優勝した比嘉一貴

「どれだけバーディ〜」で優勝した比嘉一貴

比嘉くんは22年に4勝を挙げ、賞金王に輝き、その資格で欧州ツアーへ。しかし23年は20試合に出場するも、予選通過はわずか11試合。ランクは120位と116位までのシード権にあと一歩届かず、またマスターズ、全米プロ、全英オープンのメジャーでは、世界の壁に跳ね返された印象でした。 

立て直しを図った24年は、日本ツアーに19試合出場して17試合で予選通過、トップ10も5回で賞金ランクは24位。アジアンツアーでもシード権を獲得し、若手の台頭の陰に隠れて目立ちはしませんでしたが、「さすがだな」という実力者ぶりを示しました。 

そして迎えた今年、伸びた飛距離に驚かされます。「どこに飛んでもいいから振る練習」と、とにかく振っていたら右ひざをケガしたようで、優勝した試合ではプロアマを半分でリタイアしたものの、結果は30アンダーで米澤蓮選手とのプレーオフでの3年ぶり7勝目。この18番グリーンで一人残った比嘉くんは、やっと終わったという表情でうつむくと、次の瞬間、両手で地面をポンと叩いて「よし」と、苦しんだ時期を乗り越えた喜びを静かに噛み締めているようでした。 

その翌週、7年ぶりの8勝目を挙げた小平智。首位に3打差の8位から出た智は、折り返しの10番で「(岩田)寛さんがリーダーボードの一番上にいてスイッチが入った」。後は、会心のバック9。普段から兄と慕い、この試合でも一緒に練習ラウンドをする仲。智の優勝が決まった瞬間、真っ先に飛び付いたのが寛でした。ともに海外ツアー経験での苦しみも知る同志のような絆もあったのでしょう。18年RBCヘリテージで、参戦15試合目でPGAツアー初優勝。

しかし、日本ツアーでメジャー3勝の実力者も、PGAはそう甘いものではありません。23年1月にはコーチでもある父の健一さんが死去。結果が出ないなかでも、インスタでは前向きな発言の多かった智ですが、昨年の春先にコーンフェリーツアーで戦った際、「心が折れた」という珍しいコメントがあり、心配になったものです。 

しかし、それでもアクティブに挑戦するのが小平智です。今年2月には渡米して復活に向けての合宿を張り、また7月には松山英樹、平田憲聖、久常涼とアメリカで一緒にゴルフ。「若手に誘われた」合宿だったようですが、上にも下にも好かれる智の人柄あってこそ。この松山くんたちとのゴルフで、「モチベーションが回復した」という智。「次に英樹に会うときには変わった自分を見せたい」と誓い、早くもこの優勝でその姿を見せたのではないでしょうか。優勝の兜かぶとがよく似合い、その貫禄と精悍さはまるで野武士のようでした。

PHOTO/Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki

※週刊ゴルフダイジェスト2025年9月16日号「さとうの目」より

「ISPS HANDAシリーズ」で優勝した比嘉と小平

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