
世界で一番模倣されているレダンは17番に再現
同GCが改修を決意したのは、2020年に開催された日本女子オープンが終了した月曜日の朝だったという。優勝した原英莉花のスコアが16アンダー、メジャー競技にふさわしくないスコアにショックを受けた経営陣は改修を決意。
「弊コースはガラパゴス化している。もう一度、フラッグシップの試合をするには大改造が不可欠。その時に頭をよぎったのはスコットランドのリンクス巡りの体験でした」(同GC経営母体の代表取締役、谷水利行氏)
かくしてスコットランド出身のベンジャミン・ウォーレンに改修の指揮を依頼。彼は世界でもっとも模倣されているホールレイアウト「レダン」(西コース15番パー3)で有名なノースベリックGCのそばで育ち、夕方には柵を越えてプレーする"フェンスメンバー"の子ども11人の1人だった。これを容認する文化がスコットランドにはあるという。
父親は同GCのクラチャンで名誉会員。ベンジャミンは巨匠・トム・ドークやリオ五輪の開催コースを設計したギル・ハンスのもとでシェイパー助手として修業。その成果は十分発揮されたようだ。英国のリンクスを巡り尽くし、リンクス博士ともいうべき武居振一氏いわく「おそらく日本ではリンクステーストが一番感じられるコースに仕上がったのではないでしょうか。リンクスの原点回帰的プリミティブな風が吹いていました」とコメント。コースを評価するショットバリュー、デザインバラエティ、メモラビリティの3要素も過不足ないという。リンクスの痕跡を並べてみよう。
設計者の故郷のレダンは7番、17番に配置。17番は打ち下ろし、バンカーに囲まれた横長のグリーンで風の読み方次第でスコアは大きく変わる。5番は古典的ケープスタイルのドッグレッグホール。10番から池を挟んで14番、18番が見渡せる景観は息をのむ。12番、中央のバンカーがダイアゴナル(対角線)に配置され戦略性を高めている。シグネチャーホールは13番。右側のマウンドは設計者のアイデアで位置と形状は秀逸だ。
同GCはこれまで日本女子プロ、日本シニアオープン、日本女子オープンとメジャーを開催。そして28年に2度目の日本女子オープンを迎える。「山のリンクス」で女子プロたちがどう戦うのか、今から楽しみである。
※週刊ゴルフダイジェスト2025年9月23日号「バック9」より