こんにちは。SPORTSBOX AI 日本アンバサダーの北野達郎です。今回はDPワールドツアーの「BMW PGA選手権」で優勝しましたアレックス・ノレン(以下、ノレン)の正面からのドライバースウィングをスポーツボックスAIのデータと共に解説させて頂きます。
ノレンといえば、ショット前のルーティンでトップから切り返しにかけて「あっち向いてホイ」のような独特の動きが特徴的な選手です。そんなノレンのスウィングの特徴は、下記の2つです。
①ルーティーンは独特だが、実は切り返しの回転はオーソドックス
②トップから切り返しにかけて、胸と骨盤の左右差が減る
後半ではノレンからアマチュアが学べるポイントについて解説しています。
それでは早速チェックしてみましょう!
ルーティンは独特だが、実は切り返しの回転はオーソドックス
まずノレンのルーティンをご紹介しますと、トップから切り返しにかけて体を極端に開いて、「あっち向いてホイ」のような体勢を作ります。このドリルはノレンが2017年頃から約8年近く継続していて、SNS等でもよく見かける独特のルーティンとして知られています。手の位置は少しずつイメージを変えているようですが、体を極端に開く動きは一貫しています。

画像①ドリルとショットの切り返し/ドリルでは極端に体を開いているが、ショットではいたってオーソドックス
ですが、実際にショットをする時の体の回転のデータはいたってオーソドックスです。「Chest Turn」は胸の回転、「Pelvis Turn」は骨盤の回転をそれぞれ表します(マイナスは右、プラスは左、両足首のラインに対してスクエアが0度)。ノレンの切り返し(P5・左腕が地面と平行のポジション)の体の回転は、胸がマイナス51度、骨盤がマイナス11度で、いずれも開かずに切り返しています。このように感覚と実際の動きが異なるのは、ゴルフスウィングではよくあることですが、あのルーティンの効果は実は別のデータで表れています。それは、「胸と骨盤の左右差」と、「胸の側屈」です。
トップから切り返しにかけて、胸と骨盤の左右差が減る
続いて、トップから切り返しを比較してみましょう。「Sway Gap」は胸と骨盤の左右差を表します(マイナスは胸が骨盤より右、プラスは胸が骨盤より左。胸と骨盤が垂直に重なると0cm)。胸と骨盤の左右差のデータを見ると、トップでマイナス2.2cm、切り返しでマイナス0.4cmと、胸が骨盤よりわずかに多く左に移動することで、胸と骨盤の左右差が減っています。

画像②トップから切り返しの比較/胸と骨盤の左右差が減るので、胸の左側屈を保っている
この切り返しで胸と骨盤の左右差が減ることの効果は、胸が右に傾いて、右肩が下がるのを防ぐことができます。「Chest Side Bend」は、胸の左右の側屈角度を表します(マイナスは左肩が下がり、プラスは右肩が下がる)。ノレンの切り返しでの胸の側屈角度はマイナス31度です。スポーツボックスAIが独自で調査した、切り返しでの胸の側屈角度の海外男子ツアーレンジは、マイナス19度~マイナス29度ですので、ノレンはツアープロの中でも左肩が低いまま切り返すタイプの選手であることがわかります。切り返しで胸と骨盤の左右差が減って、左肩が低いまま切り返すのは、独特なルーティンを行うノレンならではのデータと言えます。
ノレンからアマチュアが参考にできるポイントとは?
それでは、ノレンからアマチュアが学べるポイントと練習ドリルをご紹介します。それはトップから切り返しにかけて、「体を左の壁に当てる」ドリルです。まずクラブを持たずにトップの位置まで体を回して、そこから左肩~左足にかけて、壁に体を当てていきます。

画像③トップから切り返しのドリル/トップの位置(写真左)から体を壁に当てる。体の壁への当たり方で、切り返しの傾向がわかる
この体を壁に当てるドリルで、特にフッカーに多い傾向は「骨盤は壁に当たるが、左肩が当たらない」ケースです。このケースは骨盤が先に左に移動して、胸は右に残そうとしているゴルファーに多く見られます。この動きでは切り返しで胸と骨盤の左右差が広がるので、胸の左側屈も少なくなります。その結果として右肩が下がり、スウィングはインサイドアウトの傾向が強くなるので、良いときはドローを打てるが、調子が崩れるとプッシュまたはチーピンのミスが出ます。
ノレンの長年のコーチであるマシュー・ベルシャムが以前に解説していましたが、かつてはノレンも体が右サイドに倒れる傾向があったそうです。ノレンの場合は体を極端に開くドリルが有効でしたが、アマチュアにはトップから切り返しにかけて、「左肩~左足を開かずに左の壁に当てる」ドリルのほうが、切り返しの正しい動きの順番である「移動→回転→伸展」の順序が整いやすくなるのでお勧めです。
今回はアレックス・ノレンのドライバースウィングを解説させて頂きました。独特のドリル(ルーティン)を約8年にわたって継続しているノレンから学べるのは、「自分に必要な課題を継続する強さ」です。情報過多な現代において、ノレンのように「課題を絞って継続する」強さは、全てのゴルファーが学べる上達の秘訣です!