
解説:今野康晴プロ
正確なアプローチや切れ味鋭いアイアンショットを武器に、ツアー通算7勝をマーク。ウェッジに強いこだわりがある。現在、シニアツアーに参戦する52歳
「短い距離でも、体を使ってしっかり振る。これが肝心です」(今野プロ)
体とクラブの動きをコントロールする
アマチュアのラウンドレッスンも行っているという今野プロ。アマチュアのアプローチが、寄ったり寄らなかったりと安定しない最大の原因は、“ゆるむ動き”にあるという。
「勢いや反動を使っても大丈夫なフルショットとは違い、アプローチはしっかり体とクラブの動きをコントロールしないと安定しません。だからこそ、“ゆるむ動き”は禁物。短い距離でも、手だけでなく体を使って、手とクラブを体の正面に収めて、手首の角度を保ったままハンドファーストでボールをとらえていく。そうすることで、距離感、方向性が出せる“一定インパクト”になるんです」
“ゆるむ動き”がアマチュアに多いミスの原因

画像左:手だけで上げるから大振りになりやすい/①「飛びすぎるかも」とゆるめる動きに/②ボールに合わせにいく動きも起きやすい
手だけでクラブを上げ大振りになり、飛びすぎるのが怖くなって、無意識にゆるめてしまう。さらに手でヘッドをボールに合わせにいく動きにもなりやすい。
▼ウェッジワーク・ここが大切!
「アプローチはアドレスとインパクトがほぼ同じ。それができるような動きをしたいんです」

左:アドレス/右:インパクト
「通常のショットでは捻転差を作るために腰を回すので、アドレスとインパクトのカタチは変わります。でもアプローチでは、下半身が動きすぎるとインパクトが不安定になりやすい。なので、アプローチはインパクトのカタチで構えて、クラブを上げたらそこに戻すだけ。インパクトの再現性を高めるための構えや動きをすることが大切です」

スタンスはオープン。フォローで体が回りやすい
「スクエアなスタンスで構えて打つと、腰が止まってリスト=ヘッドが返りやすい。オープンスタンスで構えておけば、フォローで自然に体が回って手が同調して動きます」

テークバックは左肩で押し込むように胸を回す
「手首でヒョイと上げるのではなく、左肩で押し込むように胸を回してテークバック。“手上げ”になりませんし、遠くからヘッドが下りてくるので入射角もゆるやかになります」

右ひじと体の間隔を一定に保つ。軌道が安定
「アドレスで少し曲げた右ひじと体の間隔を、スウィング中できるだけ一定に保つよう意識。右ひじが『外れる』『突っ張る』『引ける』という動きは、軌道を不安定にします」

スウィング中の“等速感”。これができればミスしづらい
「大切なのは“等速感”。『テークバック』『ダウンスウィング』『フォロー』とそれぞれのポジションで同じスピードになるような感覚。そのために体を使って振るんです」
自分にとってやさしいウェッジを見つける
「打ち方の基本がわかっていても、使っているウェッジが自分に合っているものでなければ、イメージ通りに寄せるのは難しくなってしまうんです」と今野プロ。今は、ウェッジの見た目、性能、ソール形状などのバリエーションが増えているので、その人にぴったりのモデルが見つかるはずという。
今野プロのこだわり “ どんぴしゃソール”がこのインパクトを生む!

※30Yアプローチのインパクト
手前からソールが滑って、ボールがフェースにしっかり乗ったインパクトに。食い付いたぶん十分なスピンがかかっている。
「アプローチやバンカーでミスした原因が、刺さって“ザックリ”しているのか、地面に跳ねて〝トップ〞しているのか。前者ならば、もう少しバウンスが大きければソールが滑ってくれるはず。僕らプロもボールへきっちり入れるつもりで打っていますが、いつも完璧に打てるわけじゃありません。見た目やソールの形状・バウンスなどが合っていて、多少のミスをカバーしてくれるモデルが使いたくなるウェッジなんです」
合わないモデルだとアプローチが苦手になる可能性もある
今どきのウェッジは、ソールのグラインドやバウンスのバリエーションが増えている。その中に、自分にとって打ちやすいソールのウェッジがあると今野プロは言う。

各メーカー同じロフト角でバウンス違いをいくつも出している。自分に合うモデルを探そう
「打ち方に合わないソール形状やバウンスのウェッジを使っていたため“ザックリ”をしたのに、今度はそのミスが怖くなって腕が縮こまり“トップ”をして……。そういうウェッジを使い続けると、アプローチに対してどんどんマイナスのイメージがついてしまうもの。例えば、アマチュアには『ハイバウンスがやさしい』とススメられる傾向があると思いますが、それが誰にでも当てはまるわけではありません。打ち方に合わないソールを使ってミスしているのならウェッジを見直して、自分に合うソールを見つけてもらいたいですね」
「一定インパクトにするには“振り方”と“道具”の両方が大切になりますね」
今野プロは、アプローチの振り方とクラブがマッチしてこそ“一定インパクト”が可能になるという。

写真左:ボーケイSM4プロト258・08/写真右:ボーケイSM8プロトMG5 Tグラインド
「ボクはずっと、ロフト60度・バウンス8度のウェッジを使っていましたが、今のウェッジにするまでに3タイプのソールグラインドを打ち比べました。グラインドによって、同じバウンスでも当たり方の違いを感じたりする。その中で『T』グラインドは、ソールの幅が狭いわりに刺さらないし、フェースを開いても打ちやすい。今の“エースウェッジ”です」
「モデルが多様化。自分に合ったウェッジを見つけたいですね」

ソールの頂点もモデルで変わります
「アマチュアの人は基本的に、フェースを開くよりはスクエアに打つほうが多いのではないでしょうか。そのときに、コックを使って上から打ち込む人は、バウンスが大きいほうが滑ってくれるし、コックをあまり使わずシャローに入れる人は、バウンスが少なめのほうが弾かれません。バウンス一つを見ても、その人にとって適正なものがあるということです」
取材・文/新井田聡
写真/有原裕晶、姉﨑正
協力/京葉カントリー倶楽部、浅見ゴルフ倶楽部、ユニオンゴルフ
※月刊ゴルフダイジェスト11月号『ウェッジワーク大百科』より
===
今回の記事では、今野康晴プロにアプローチの「ゆるむ動き」をなくすための基本レッスンを解説してもらった。続きでは、自分に合ったウェッジを見つけるためのソールの形状やグラインドの種類、そしてアマチュアが陥りがちなミスをカバーするモデルなど、あなたのウェッジ選びを変えるヒントをまだまだご紹介します。続きは月刊ゴルフダイジェスト11月号、Myゴルフダイジェストにて掲載中!