
「パナソニックオープンゴルフチャンピオンシップ」でツアー初優勝を飾った勝俣陵(撮影/姉崎正)
「シードを取って4年目の優勝は、すごく長く感じた」

ツアー仲間らからウォーターシャワーの祝福を受ける勝俣(撮影/姉崎正)
勝俣がほっとしたように白い歯をのぞかせた。最終18番、短いウィニングパットを沈めた瞬間、それまでの緊張がほぐれた。グリーンサイドで待ち受けた2位タイの小木曽、堀川をはじめツアー仲間からは、ちょっぴり手荒いウォーターシャワー。それまでの笑顔が瞬く間に泣き顔に変わった。
「最後はうれしさよりもバーディパットをショートした恥ずかしさを感じた。先輩たちが水かけで待っていてくれた。優勝したんだと思って、涙が勝手に出てきた」
この日は2位に3打差をつけてスタートし、1番で3打目のアプローチを80センチにつけてバーディ先行。2番パー4も1メートルを沈めて連続バーディとした。14番パー4ではピンまで残り40ヤードの第2打を60度のウェッジで直接カップインさせるイーグルを決め、初優勝へ大きく前進した。15、16番で1メートル前後のパーパットを外して連続ボギーとし、産みの苦しみも味わったが、最終18番は第3打でグリーンを捕らえて逃げ切った。
「あのイーグルで勝てるとは思わなかったけど、ちょっと安心したのか、そのあとの2ホール3パットにつながった。(優勝は)すごくうれしいなという気持ちですけど、また来週のことを考えている。後輩、同級生が優勝して、自分が情けないという気持ちが強かったので、シードを取って4年目の優勝は、すごく長く感じました」
初優勝を支えてくれた片山晋呉に感謝

タイトリストGT1のドライバーとプロV1xのボールの組み合わせで飛ばす勝俣(撮影/姉崎正)
1995年12月27日、埼玉県三芳町出身。中学2年までは野球に打ち込んでいたが、両ひざの故障もあって断念。父親の勧めでゴルフを始めた。初ラウンドのスコアは「111」だったという。埼玉栄高3年の関東高校選手権で個人、団体の2冠を達成。日大3年の2016年にはプロを相手に埼玉オープンで優勝を果たした。2017年にプロ転向し2022年初シード。今季は初優勝を期待される選手のひとりにあげられていた。
初優勝を支えてくれた日大の大先輩で永久シードの片山晋呉には心の底から感謝した。数年前から毎年オフの合宿をともにしており、前日は励ましの電話、この朝はライン連絡をくれたという。
「(朝は)片山さんからは誰でも緊張するし、ミスもする。やっている練習は緊張する場面でもできることをしっかり教えているから、しっかり出し切ってこいと。それが緊張が一気になくなった要因でした」
銭湯で神頼みというユニークな「願掛け」も効果があったようだ。
「毎日銭湯にいくんです。昨日の夜は(優勝したら)どんなガッツポーズをしようか考えていたけど、頭が真っ白で(ガッツポーズは)できなかったです。塩サウナがあったので、塩を全身に塗りたくって神頼みもしていました」
名前が「陵」ということもあってか、同じ埼玉県出身のスーパースター石川遼とも親交がある。
「先週は帰りの飛行機が一緒で『来週もお願いします』と言ったら『(自分は)休みだから頑張ってね』と言われて。次のリョウは俺だぞと言いたいですけど。でも、久常も涼なので」
これで今季賞金ランキングは16位に躍進。初優勝という高いハードルを飛び越えたことで、将来への視野も大きく広がった。
「初優勝で満足せず、今季残り試合で2勝目、3勝目を勝ちたいです」
雌伏の時を超えて、12月に30歳の誕生日を迎える勝俣がさらなる飛躍を誓った。