
現役時代と変わらない笑顔で取材に対応していたイ・ボミ。「練習したいです!」と嘆いていました(笑)
「女性に輝ける場所を」をコンセプトに始まった「LADY GO CUP」。原江里菜と有村智恵が発起人であるこの大会。出場する選手たちは、原や有村だけでなく、これまで国内女子ツアーの人気を牽引してきた面々。彼女たちは年齢を重ねる中で結婚や引退を当然のように迎える。そしてその後、ツアー復帰はなかなか厳しい道のりとなり、選択肢が絞られてしまう現実があった。そんな中、「人生の分岐点に立つ選手たちが新たな挑戦をすることで、セカンドキャリアへの気づきや発見得られる場」として、この「LADYGO CUP」が存在している。アスリートの宿命と言ってしまえばそれまでだが、この年齢(30歳前後)で自身の“今後”と向き合わなければいけない、そしてその選択肢が少ないのはすごく酷だなと感じてしまう。
5回目を迎える今回は栃木県の「セブンハンドレッドクラブ」で行われ、2023年に引退したイ・ボミが初めて参加。特別限定チケットは完売になるなど、その影響力は相変わらずだ。
「30代世代の選手たちが楽しんでやっている試合ということは知っていました。こういう機会はすごく大事で、この先もずっとずっと続いてほしいので今回参加させてもらいました」(イ・ボミ)
イ・ボミも今は“セカンドキャリア”を過ごしていて、“試合”に出場することはほぼない状況。プロアマ後に話を聞くと、「試合はとても楽しみ」としつつ、プレッシャーも感じていると話す。
「普段はイベントのプロアマにしか参加しないので、いつもその日が本番。だから、プレッシャーを感じる間もなく終わるのですが、今日は試合前のプロアマ。試合があると思うとやっぱり気持ちが違いますよね。普段はラウンド前に練習することはないんですが、今日はしっかりやりました(笑)。それでも1番ホールはすごく緊張していましたし、なかなか緊張がほぐれませんでした。ただ、明日の試合を意識しながら回っていて、なんか懐かしい気持ちにもなりました。こういう試合があるからこそ昔の仲間にも会えて、プレー以外の部分での楽しみはたくさんありますね」

パッティング練習は真剣そのもの。「プロアマではタッチが合わなかったので……」と、時間ギリギリまで練習していた
イ・ボミはすごくストイックな選手ゆえ、引退しても自分のゴルフにはすごく厳しい。以前話を聞いた時も「自分のしたい動きができていないから嫌だ!」と言っていた。だからこそ、たとえ引退していても“試合”となったら恥ずかしいプレーはしたくないし、できないという思いが強いのだろう。
「もちろん、自分の思い通りには打てていないけれど、ミスをしたときに『なんでそのミスが出たのか』はわかるようになってきた。感覚と体のズレをどうにかすればもう少しマシなゴルフができると思うんですけどね」
セカンドキャリアの選択肢を増やしてくれる
33歳の堀奈津佳は大会をきっかけにもっと多くの人に活動を知ってもらいたいと話す。

「子どもも連れてきました!」と、出産したばかりの福田真未。「安心して試合に連れてこられる環境があるというのは母親にとってすごくありがたいです」(福田)
「女性としての人生と、プロゴルファーとしてのキャリアの積み方が難しいなと最近すごく感じるようになりました。その中でこういう大会があるのは『女性としてもプロゴルファーとしてもどっちも頑張っていいんだよ』と背中を押してくれるような気持ちになるのですごくありがたいですよね。会場には普通にお子さんを連れてきているプロもいますし、その環境が整っている。今までだったら、何かを諦めなきゃいけなかったんですが、こういう大会が増えれば選択肢も増えるので、もっともっと広がっていったらいいなと思います」
また、今大会はペアマッチで行われるが、「それもいいですよね」と堀。
「ペアマッチの方式もあまりないのに、そこで(有村)智恵さんとペアを組めるなんて滅多にないです。智恵さんの考え方やプレーの仕方、スウィングのことなど、見て、聞いて吸収したい。智恵さんはじめ、多くの先輩方とプレーすることですごく勉強になりますし、刺激にもなります。明日は、智恵さんに迷惑をかけないように頑張ります!」
最前線のツアーの現場とはひと味違った“穏やかな”空気が流れ、各選手がその場をすごく楽しんでいてとても笑顔が多い。とはいえ真剣勝負。「やっぱりみんな勝ちたいんだな」と、練習している姿を見ているとつくづく感じ、ツアーの現場と同じだと実感。明日、どんな戦いが繰り広げられるのか、要チェックだ。
写真/三木崇徳