ゴルフの上達を目指すゴルファーにとって役立つ情報を発信する「みんゴル・ゴルファー応援隊」。その隊長に就任したシングルプレーヤー・マツケンが上達のヒントになることを紹介。今回は、「ゴルフは”肉眼基準”」がテーマです。
画像: 映像で微細な判定を検証する他のスポーツとは違い、ゴルフは「肉眼基準」(写真はイメージ)

映像で微細な判定を検証する他のスポーツとは違い、ゴルフは「肉眼基準」(写真はイメージ)

ゴルフは人間の生身の力量で競うゲーム

最近様々なスポーツで導入が進んでいるのが、ビデオ映像によるプレーやボールの位置などの検証です。野球やバレーボールでの「チャレンジ」、サッカーの「VAR ビデオアシスタントレフェリー」など。肉眼では確認が難しい微細な判定が可能になり、この面での進化が著しいと感じています。

野球やサッカーのスタジアムでは、リプレイの映像が大型スクリーンに映し出され、判定が決まるまでの間、観客が固唾を呑んで見守り、決まった瞬間、大きな歓声が湧き起こります。そう、こうしたスポーツでは既にエンターテイメントとして欠かせない要素にさえなっているようです。

翻って我々の「ゴルフゲーム」ではどうなっているでしょう? 日本のゴルフを統括し、日本と名の付く最高峰の大会を主催しているのは、公益財団法人 日本ゴルフ協会(JGA)です。

そのJGAが主催するメジャー競技、いわゆる3オープン(日本シニアオープン、日本女子オープン、日本オープン)が続け様に行われる10月になると毎年のようにホームページに掲載されるのが、「TV映像による証拠の取り扱いについての方針」という声明です。

元々の目的は、テレビの視聴者からのプレーやルール裁定へのクレームによる混乱を防ぐためのメッセージだと思いますが、私が気になった箇所だけ要約すると、

1 ゴルフは人間がプレーするゲームであるから、事実の決定は現場で人間が知り得る情報に基づいて行われるべき。

2  テレビの映像を裁定に利用すことはあるが、あくまで肉眼基準。スーパースローや、高解像度のカメラでしか確認出来ないものは証拠として採用しない。

3 例えば、ボールが池を横切った地点など、規則で場所の決定が求められる場合、プレーヤーが規則に基づき、合理な状況証拠によって正しい手順を踏んで決めた場所なら、映像との誤差があっても誤った場所からプレーしたとは見做さない。

どうですか。 これ、いかに他のスポーツと違うことでしょう。

元々、ゴルフは審判のいないゲーム。プレーヤー自身がルールを正しく運用してゲームを進めるのが原則。正しい処置が分からない時に導いてくれるレフェリーはいますが、他のスポーツのようにプレーヤーを監視する存在ではありません。

また、ゴルフコースという広大なフィールドでプレーヤー全員のプレー、行動を監視することなど現実的ではありませんし、100人以上が同時にプレーしているゴルフコースというフィールドで、一々「リプレイ検証」していたら、ゲームが進まなくなってしまうでしょう。

こうしたゴルフゲームの特殊性を差し引いたとしても、この方針には、「ゴルフゲームとはこうあるべき」という強いメッセージが込められている様に思えるのです。

この方針はJGAだけでなく、世界のゴルフを統括するUSGA、R &Aが定めた基準でもあります。他のスポーツでは、最新技術を駆使してミリ単位まで突き詰めて真実を追求しようとしている中、ゴルフはあくまでも「肉眼基準」。

高解像度のカメラでしか捕らえられない事象は、判断材料として採用しないのです。ゴルフの世界ではこれまでも、過度にテクノロジーに依存せず、あくまでプレーヤー自身の力によってプレーする事が尊ばれて来ました。

レーザー距離計も長い間、規制を受けてきましたし、グリーンの傾斜が測量図の様に細かく記されたグリーンリーディングブックの使用も禁止されました。やさしすぎるクラブ、パター、飛びすぎるボール。そうした用具を規制しているのも、人間の生身の力量を純粋に競ってもらいたい。

ゴルフというゲームはあくまで人間の生身の力で勝負するもの。その挑戦こそが、大自然を相手に戦うゴルフに相応しい。そういう意図が込められているように感じられたのです。

改めてゴルフゲームの特異性、素晴らしさに気付かされたJGAの声明文でした。皆さんが日頃愉しんでいるゴルフ。こんな観点もあると知っていただけたら嬉しいです。

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