男子ゴルフの国内ツアーのメジャー第3戦「日本オープンゴルフ選手権」が10月16日から栃木県・日光カンツリー倶楽部(7238ヤード、パー70)で開催される。その練習日の会場で、一人の若きトッププロが伝説的なレジェンドから貴重なアドバイスを受けていた。グリーン周りのラフからアプローチを続ける蟬川泰果に歩み寄ったのは、日本オープンを4度制した中嶋常幸。恐縮しながらも練習を続ける蟬川に、中嶋はウェッジ選択に関する重要な指針を伝えた。
画像: 蟬川のラフからのアプローチを見入る中嶋常幸

蟬川のラフからのアプローチを見入る中嶋常幸

60度ウェッジはソール違いを3本用意し練習ラウンドで試す

画像: 14日は60度のソール違いのウェッジを3本バッグに入れていた

14日は60度のソール違いのウェッジを3本バッグに入れていた

中嶋のアドバイスを受ける一日前、蟬川はバッグにソール形状が異なる60度のウェッジを3本入れて試していた。これは、「芝質によってボールへの入り方や抜け方が変わるため、今回の芝に合うソールを見つけるため」だ。このタフなセッティングの日本オープンに対応できる最適な一本を見極めようとしていた。

中嶋が注目したのは、まさにこのウェッジだ。

「ラフの長さなどを考慮すると、56度のほうが60度に比べて圧倒的に(ソールが地面に)潜る心配が少ない」

松山英樹も56度を多用しているという話に触れつつ、ラフが深く設定されるメジャーセッティングにおいては、60度よりも56度で様々なバリエーションのアプローチをすることを想定すべきだと助言した。蟬川はこのアドバイスを、「今回の大会もそうですが、今後PGAツアーなども含めて考える上での、一つの貴重な指標として参考にさせていただきます」と真摯に受け止めた。

「誰かが行ったから僕も行ける」ではない

同学年の平田憲聖がコーンフェリーツアーからPGAツアー昇格を決めたことについて聞くと、「レベルがすごく高いなと感じました」と率直に語る。自身もコーンフェリーツアーに4試合出場したが、「今年は(怪我で)断念せざるを得ませんでしたが、コーンフェリーツアーのレベルの高さを痛感した」という経験を持つ。その中でトップ15に入りPGAツアー昇格を決めた平田の活躍は、大きな刺激であることは間違いない。

しかし、安易な発言はしない。「いまの女子プロの活躍は渋野日向子さんのAIG女子オープン優勝を見て、『自分もできるはず』と思った結果だと言われることが多いですが、そのようなことは思いませんか?」と質問すると、「自分がレベルアップをしないと、『誰かが行ったから僕もいけるんじゃないか』という簡単な考えには思えない」と回答。

これは、自らがPGAツアーへ挑むためには、他者の成功ではなく、自らの絶対的なレベルアップが不可欠だという、蟬川のプロとしての厳しい自己認識を示している。

「狙って勝てる大会ではない」からこそ

最後に、日本オープンへの意気込みを聞くと、「狙って勝てるような大会ではないですが、やはり一度勝った試合ですし、この大会は日本で一番大きいタイトルでもあるので、もちろん優勝を目指したいと思っています」と語った。

悪天候が予想される初日に向けては、「あまり良くないコンディションの中でも、しっかり一つでも多くスコアを伸ばせたらいいなと思っています」と、タフなセッティングでの粘り強さを誓った。

日本ゴルフ界のレジェンドからの助言を糧に、世界基準のウェッジワークを磨き上げようとする蟬川泰果。その現状に満足しない向上心こそが、彼を再び大舞台の頂点へと導くだろう。

撮影/姉崎正

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