片岡尚之:片山晋呉の助言で克服した「負け癖」

パーパットを沈め、静かにガッツポーズする片岡尚之
片岡尚之の優勝は、長年の苦闘と、土壇場で発揮された驚異的な粘りによってもたらされた。
苦悩の4年間と「大逆転の勝因」
初優勝から4年間、片岡は優勝争いに何度も絡みながら「2位が7回」という辛酸を舐めてきた。「すごい苦しかったです。予選落ちも結構あって、今年に関してはもう優勝争いすら全然できない状況でした」と振り返る。
彼は、その間についた「負け癖」を最大の敵として意識してきた。「すごい緊張するタイプなので、特に優勝争いになるとすごく緊張します。緊張によるミスが結構ありました」。
しかし、今回の勝利は「経験を積んだうえでの勝利なので、自信になります」と、自ら掴み取ったものだと強調した。
転機は片山晋呉の助言
片岡の復活の最大の転機は、この大会の直前に受けた片山晋呉からのアドバイスだ。
「晋呉さんからいただいたアドバイスを試す、チャレンジという気持ちで入りました」と、優勝を意識するよりも、助言を実践することに集中したことが、好結果に繋がったと説明。「練習日は予選を通過するかな、というくらいの出来でしたので」と本戦になって調子が上向いたという。また、4日間を通してオーバーパーのスコアがなかったのは片岡のみで、その勝因を「4日間を通してパターが本当に入りました。オープンなので厳しいパーパットが何度もありましたが、ほぼ入ってくれました」と語った。
特にプレーオフを制した最大の勝因は、18番での「本当に厳しいパーパットが入った」ことだと述べている。
感動の瞬間とマスターズへの決意

2026年のマスターズフラッグと全英フラッグを手にする片岡
マスターズと全英オープンの出場権を獲得したことに対し、「本当に夢であるマスターズと全英オープンに出られることがうれしい」と喜びを爆発させた。
「たぶんその2試合に出場する選手のなかで、僕は一番下手だし、技術もないし、力もないと思うので、努力して4月までに準備して、なんとか戦えるように頑張りたい」と、謙虚ながらも強い決意を表明。
また、本戦で敗れた直後の清水大成が、泣きながら「おめでとう」と祝福してくれたことに触れ、「普通なら素直に来ないはずなのに、泣きながら『おめでとう』と言ってくれたのが嬉しかったです。そういう人間性が本当に好きなところです」と、ライバルへの感動とリスペクトを語った。
原敏之:プレーオフで芽生えた「悔しい」という感情

73ホール目のパーパットを外し、苦笑いをする原敏之
一方、プレーオフの末にメジャータイトルを逃した原敏之は、複雑な心境を吐露した。
「あのプレーオフするまでは、本当に優勝とかは、自分のなかであまりないと思っていた」という原だが、プレーオフが始まりティーショットを打った直後、「負けたら悔しいみたいな気持ちが初めて出てきて」と、勝者への意識が芽生えたことを明かした。
しかし、その緊張が最終パットでのミスパットに繋がったと自己分析。「最後のパーパットもちょっと手がうまく動かなくて、少しミスパットになってしまった」と悔しさを滲ませる。
原は17番でダブルボギーを叩いたことで「開き直って18番に入ることができた」と振り返り、自身がトップ争いでプレーできることを実感できた喜びを語った。最後に、優勝の可能性がよぎった時、「これ勝ったら、マスターズいけるのか、ちょっとこうよぎりましたけど」と述べつつ、プレーオフでの敗因は「準備不足だと思います」と締めくくった。
片岡は、長年の苦悩を乗り越え、ついに栄光を掴んだ。その裏には、敗者であっても勝者を祝福する清水の人間性や、原とのプレーオフがあった。この勝利は、片岡にとって単なる2勝目ではなく、自身が「やっと自分で勝った」と確信できる、キャリアの大きな転機となった。
撮影/姉崎正