65年以上に及ぶクラブ作りの歴史と技を最新モデルに注ぎ込んだ!
社長が語る「TW777」開発の背景‶外部からの人間と匠との軋轢″
本間ゴルフ 代表取締役社長兼最高経営責任者
小川典利大氏
アディダスジャパン副社長、デサントジャパン代表取締役社長などを務め、スポーツ用品業界、マーケティング、ホールセール/リテールビジネスにおいて豊富な経験を有す
2023年12月に本間ゴルフの代表取締役社長兼最高経営責任者に就任した小川典利大氏。就任時には前作「TW767」の開発がすでに進んでいたため、携わったのは「最後のファインチューニングだけ」だと言い、ゼロから手掛けたモデルは今作「TW777」が初となった。

ドライバーは「TW777」と「TW777 MAX」の2モデルと360ccのミニドライバー「TW777 360 Ti」をラインナップ。「ソールのウェイトなどで細かく調整できるのでフィッティングでほとんどすべてのゴルファーに合わせることができます」(小川社長)
「本間ゴルフの最大の強みは、酒田工場での〝匠〞と呼ばれる職人によるクラブ作りにあります。しかし、クラブ作りに長らく携わってきた人間が新しいクラブを作るとき、もちろん良さもありますが、デメリットもあったんです。
そのひとつが、どうしてもこれまでの自分の経験に固執してしまい視野が狭くなってしまうこと。自分自身が外から入ってきた人間なので、本間ゴルフには素晴らしい歴史や良さがあるのに、それを何で生かせないのか不思議に感じていたんです。
もちろんクラブ開発にはルールが決められているので、その決められた数値のなかで作らなければなりません。だからこそ一度、既成概念を取り払う必要がありました。本間ゴルフの技術力をもってすれば、ルールという制約があるなかでも充実した機能を搭載し、今までにない形状やデザインのクラブがチタンやカーボンで作れるはずだ。そう思って外部の人間をクラブ開発に加えたんです。
でも、彼らから上がってきた企画をパーシモン時代からクラブ作りひと筋の職人たちに見せても、最初は『こんなものが作れるか』という反応で軋轢が生まれました。しかし、彼らも〝匠〞と呼ばれる職人です。
話し合っていくうちに『だったら、やってやろうじゃないか。俺たちにできないものはない』となってくれて、どうやったら実現できるのか、企画からのむちゃな注文に100%は応えられないけれど、95〜96%で収めるにはどうしたらいいか試行錯誤してくれて。企画と匠が本当に頑張ってくれて『TW777』が完成しました。『777(トリプルセブン)』の語呂もいいし、新たな本間ゴルフの世界を開いたと思っています」(小川社長)
クラブを替えない女子プロが即スイッチ
8月の国内女子ツアー、NEC軽井沢72でツアーに初お目見えした「TW777」だったが、クラブをなかなか替えない金澤志奈と後藤未有がその週からスイッチ。金澤はその試合で3位タイ、ニトリレディスでは2位タイとすぐに結果を残した。
「女子プロがすぐに替えてくれたことは自信になりましたね。『TW757』『TW767』は『初速が出ない』と使ってもらえなかった。この事実に匠も企画の人間も、ずっとモヤモヤしていたんです。だから今回はとにかく初速を上げることを目標にしました。すると匠はパーシモン時代にシャフトに使っていた素材なども試してくれて、新素材チタンカーボンにたどり着きました。また慣性モーメントが大きくなってブレにくいのですが、多少ブレても真っすぐ飛ぶことも追求しました」(小川社長)
ドライバーはチタンの剛性とカーボンの軽量性を持つ新素材「チタンカーボン」をソールセンター部に採用。カーボンリング成型によりボディのたわみ剛性を強化しインパクト時の変形を抑え、エネルギー効率が向上し初速アップを実現。リアカーボンボディとノンローテティングシステムの軽量化により生まれた余剰重量をソールに可変ウェイトとして搭載し、低重心化と細かいチューニングが可能に。またソールに大きくデザインされたモグラのロゴも特徴的だ。
本間ゴルフの象徴モグラのロゴ

「ブランドのロゴがこれほどまでに多くの人に認知されているブランドは世界でも数少ない」と小川社長。だからこそ「チャンピオン」「パトリック」などウェアやシューズブランドとのコラボも進めている
「内部に長くいる人間は『モグラってダサいよね』と言う人もいます。でも自分からすれば、何でこんなにいいものを、もっと積極的に使わないのだろうと。本間ゴルフ=モグラと誰もが知ってくれているのはすごいことなのに。試しにモグラを大きく入れたファーストサンプルを取引先に見せたら『いいですね』と言われたんです。だからドライバーのソールデザインだけでなく、『TW777 PCB MAX』アイアンでは、かつての名器『CL -708』や『PP-737』のバックフェースに配されていたモグラのエンブレムも再現しました」(小川社長)
FWとUTにはパーシモン時代の名器「BIG LG GET」で採用されていた〝下駄ソール〞を彷彿とさる「GETソール」を採用し、抜けの良さと振り抜きやすさを高めている。「ドライバーはウェイトを交換すれば重心などを細かく変えることができます。本間ゴルフ独自の『ノンローテティングシステム』と合わせて、30店舗の直営店と本間ゴルフのフィッターが在籍するパートナーストアでフィッティングすれば、必ず自分だけの一本にチューニングできます。
簡単にはクラブを手に取ってもらえないでしょう。でも、もう一度、本間ゴルフのクラブを使ってみようと思ってくださるゴルファーが、実際に打ってみたら『おっ』となるクラブに仕上がっていることには自信があります。我々には本間ゴルフの60年以上のクラブ作りの歴史が持つ伝統があり、その良さを生かして次のステージに行けるよう、革新していかなければならないんです。その第一歩が今回の『TW777』なんです」(小川社長)
PHOTO/Takanori Miki、Shinji Osawa
				
				

